北海道美術ネット別館

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■楢原武正展 大地/開墾 黒い種をうえる (2015年5月19日~31日、札幌)

2015年05月31日 07時58分46秒 | 展覧会の紹介-現代美術
  
 「大地/開墾 黒い種をうえる」と題した、札幌の楢原武正さんの個展が、中島公園近くのト・オン・カフェで開かれている。

 楢原さんが個展を開くことの多いギャラリー大通美術館に比べると、小さい空間なのだが、それを感じさせない、いつもながらの圧倒的なインスタレーションが展示空間を埋め尽くしている。
 何度見ても、すごいとしか言いようがない。

 そして、従来の「大地/開墾」シリーズのインスタレーションと、最も異なる点は、壁面も、空き缶やくぎなどが集積した黒い板が覆っているところだろう。
 これにより、楢原ワールドに会場空間が囲まれている感じがいっそう増した。
 この黒い板は、昨年の札幌国際芸術祭で500m美術館で発表されたものと同形であろう。
 ただし、芸術祭のときは、むき出しで展示して通行人をけがさせては困るので、飛び出た釘の頭や、針金の切断部分など、危なそうなところは徹底して対策を施していたのだが、今回の作では、誤って触れれば指先を切りそうなところが残っているので、まったく同一のものを使いまわしているというわけではなさそうだ。

 日々の行為のたゆみない集積が、ここにある。 

 手前のカフェスペースには、初めて挑んだという、書の小品が並んでいる。

 順に
凍土  大地開墾  聲  日の出  (判読不能)  墾  原

 カウンターの奥には「鳥」とも「馬」とも読める作が飾ってある。

 札幌でぎゃらりーまわりをしている人ならご存じかもしれないが、楢原さんは、芳名帳に名前を書くとき3行ぐらいに自分の署名を勢いよく大書するので、書というのは、資質的に向いているのかもしれない。


 それはさておき、先日の北海道新聞夕刊の文化面「展覧会」を読むまで筆者は、楢原さんが幼い娘さんを亡くしていたことを知らなかった。

 最近の道新の「展覧会」欄は、個展や作品の紹介・批評というよりは、作者の略伝を記述する欄になっている。
 伝記的事実を記録することの重要性は確かにあるが、美術をめぐる言説がますます「美」から、さらには現前する作品そのものからも乖離していく近年の全般的傾向を如実に反映している。


2015年5月19日(火)~31日(日)午前10時30分~午後10時(日曜~午後8時)
ト・オン・カフェ(札幌市中央区南9西3 マジソンハイツ)


楢原武正展 大地/開墾<2014-1> 大通美術館にて黒い種子をうえる

(このエントリの個展で発表されていた自筆年譜を引用します)

1942年 十勝管内広尾町に生まれる

1990年 テンポラリースペース(札幌)の個展から題名を「大地開墾」とし、札幌、東京、帯広、芦別、上砂川、ニセコ、小樽銭函等で本格的にインスタレーションの仕事を展開、現在に至る。

2000年 個展「1976~2000年」(ギャラリー大通美術館、札幌)
 01年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
    北海道立体表現展(道立近代美術館)=03年、06年、08年も
 02年 個展(this is gallery、札幌)
 03年 個展(ART-MAN Gallery、札幌)
 04年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
    札幌の美術2004 20人の試み(札幌市民ギャラリー)
 05年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
 06年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
    北の彫刻展(札幌彫刻美術館)
 07年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
    第27回存在派展(大同ギャラリー、札幌)
 09年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
 10年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
    札幌市教育文化会館企画展「光芒」
 11年 個展(ト・オン・カフェ、札幌)
    抽象彫刻30人展(本郷新記念札幌彫刻美術館)
    ハルカヤマ藝術要塞(小樽)
    札幌のアーティスト50人展(ギャラリーレタラ、札幌)
 12年 個展(ギャラリー大通美術館、札幌)
    500m美術館オープニング記念展(札幌)
 13年 ハルカヤマ藝術要塞(小樽)
    ハルカヤマ・サテライト(本郷新記念札幌彫刻美術館)
    札幌アーティスト55人展(ギャラリーレタラ、札幌)


“The Reassurance Found in Everyday Life”/「安堵感」(2002)
祭り・FEST展パートII (2003)
第26回存在派展(2006)
第13回さいとうギャラリー企画 夏まつり「風」パートII (2007)


略歴参考 http://www.g-art-man.com/HTML/Takemasa%20Narahara.html




・地下鉄南北線「中島公園駅」から約220メートル、徒歩3分
・地下鉄東豊線「豊水すすきの駅」から約600メートル、徒歩8分

・中央バス、ジェイアール北海道バス「中島公園入口」から約380メートル、徒歩5分

・市電「山鼻9条」から約610メートル、徒歩8分


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