北海道美術ネット別館

アート、写真、書など展覧会の情報や紹介、批評、日記etc。毎日更新しています

■阿部典英のすべて~工作少年、イメージの深海をゆく~ (2・出発)=2012年5月6日まで、札幌

2012年04月14日 22時34分51秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
承前

 さて、会場にはいるとまず目につくのが、半紙に書いた大量の書がびっしりと壁を埋めつくしている情景だ。
 しかも、一般的な漢字やかなではなく、いわゆる「前衛書」が大半を占める。

 昨年5月、北海道新聞に連載されていた「私のなかの歴史」でも回想されていたが、阿部典英さんは札幌東高時代、美術部とは肌が合わず、書道部に所属していた。
(最初、美術部に入っていた頃描いた絵が1枚だけ展示されている。長屋を描いた具象画だ)

 当時、書道の先生が偉かったのは、ほかの生徒が授業時間にふつうの書の練習をしていたのに、彼だけには自由に書くことを認めていたことだ。
 しかも、ある時は「ぼくよりも才能がある」という意味の文を書いていた。
 この高評価に当時の阿部少年がいかに励まされたか。想像に難くない。

 壁にずらりと並んだ書は、モノクロの抽象画のようでもある。
 たしかに井上有一の影響は歴然としているが、それを差し引いても、ほとばしる才能がわかる。
 このまま書の道を進んでも、大成したことは間違いないと思う(と、ヤナイのお墨付きを得たところで、なんの保証にもなるまいが)。
 もっとも、書壇の雰囲気は、阿部典英さんには合わないかもしれない。




 高校を出て働きながら、全道展や行動展、シェル美術賞で2年連続佳作賞など、数々の受賞を重ねていた1960年前後の絵画。
 当時、画壇を席捲していたアンフォルメル絵画、前衛絵画との共通性が感じられるが、いま見ても、独自のスピード感に満ちている。




 手前はソフトスカルプチャー。
 その奥に見える、床面から何本もはえている銀色の突起は、今回の展覧会ポスターにも使われている「手」である。

 右側には、似顔絵漫画のような、人の顔をかたどった金属作品が並んでいる。
 魚の骨をそのまま作品にしたものもあり、ポップで楽しい展示室になっている。

 つぎのような文が、壁に貼られていて、あまりのかっこよさに思わず脱帽した。
 文中の「ここ」は、後志管内島牧村。

(前略)ここが私にとって最初の海との出合いであった。夏の静かな穏やかな海も、冬が近づくと狂ったように暴れる。それは狩場山からの山颪、茂津多岬の山背風によるのだろうか。どの家でも冬囲いをして、この強風を防ぐ。しかしいま思い返せばこの少年時代の一つ一つが私の創作活動の源になっている。大きな石や岩礁に砕けよとばかりぶつかる大きな波は、ジャクソン・ポロックよりもはるかに大きく力強いドリッピングであったしそれにガンとして対峙した石や岩礁はフォートリエやタピエスの画肌のように傷つけられることなく、またヘンリー・ムーアの研ぎすまされたかたちより強い塊である事を教えてくれた。今でも行き詰り思案にくれる時は海に行くことにしている。荒れ狂う海は人々を近づけず忍耐を問い思考を強いる。そして凪の海は活動を促し行為を強いる。




2012年4月7日(土)~5月6日(日)午前9:30~午後5:00(入場~4:30)、月曜休み(ただし4月30日は開館し、翌5月1日休み)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17 地図D

一般1000円(790円)、高大生600円(480円)、小中生300円(200円)
※かっこ内はリピーター割引、前売りなど

関連行事、関連記事へのリンクは、(1)に書いてあります。



・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館」から約160メートル、徒歩2分
(手稲、小樽方面行きは、北大経由以外は、すべてのバスがとまります。本数も地下鉄より多く、とくに札幌駅方面からは、この方法がおすすめ)
・地下鉄東西線「西18丁目」から約380メートル、徒歩5分
・市電「西15丁目」から約700メートル、徒歩9分

ほかに、ジェイアール北海道バスが「ぶらりさっぽろ観光バス」を運行しています


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。