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中公新書2000冊突破

2009年06月29日 23時59分25秒 | つれづれ読書録
 中公新書(中央公論新社)が1962年の創刊以来2000冊を突破し、紀伊国屋書店札幌本店でフェアが行われていた。

 新書としては、戦前から刊行されている「岩波」とならぶ老舗だ。
 近年こそ大手出版社の大半が参入して乱戦状態になっている新書市場だが、しばらくは岩波、中公、講談社現代が「御三家」といわれていた。
 最古参の岩波が、ブランドイメージを確立しているが、永六輔を起用してベストセラーとするなど、意外とやわらかい一面がある。一方、中公新書は、最もアカデミックな路線を守っており、安易に流行に乗らない姿勢を保っているのはすばらしい。
 これは、ジャーナリスティックな寿命の短い本は「ラクレ」シリーズに任せられるので、中公新書本体は、長く版を重ねられる内容にできるという理由もあるだろう。

 識者に「思い出の中公新書」アンケートをとった結果が小冊子「中公新書の森」にまとめられている。
 ひとり3冊まで挙げており、もちろん結果はバラバラなのだが、合計では会田雄次著「アーロン収容所」がダントツであった。
 このブログの範囲では「美学への招待」「戦後写真史ノート」「絵巻物に見る日本庶民生活史」「フィレンツェ」などが票を集めていた。
 このうち、あとの2冊は筆者は読んでいないので、機会があればぜひひもといてみたい。
 「現代絵画入門」という本もなかなかおもしろかったと記憶しているが、こちらはだれも挙げていなかった。

 ところで、やはりだれも挙げていなかったのに、個人的にたいへん思い入れの深い中公新書がある。アートにはあまり関係ないのだが。
 それは、霧生(きらう)和夫著「バルザック」である。
 借金を返すためにコーヒーをがぶがぶ飲みながら人間社会や心理の暗部までを容赦なく描いた小説を次々と書いたフランスの文豪の生涯と作品を、コンパクトかつ生き生きと記した1冊で、何度も読み返したものだ。

 バルザックといえば、絵という魔物につかれた老画家を描いた「知られざる傑作」という長篇があって、セザンヌは自らを主人公に擬していたといわれる(セザンヌはけっこうな読書家であった)。
 しかし、その話はいずれまた機会を改めて。


 その他「ワイマール共和国」「正統と異端」「パリ・コミューン」「対象喪失」「日本文学史」など、なつかしい本はいろいろある(「日本文学史」は、小説重視/詩歌、戯曲軽視、自然主義偏重であり、改訂する必要があると思うが)。
 というわけでいま、筆者は昨年中公新書の1冊として出た「フォト・リテラシー」(今橋映子著)を読んでいる。
 このあと「早世の天才画家」(酒井忠康著)が控えている…。


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