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画家・柳田昭さん死去の報

2012年12月05日 21時02分04秒 | 情報・おしらせ
 茨城県在住の水彩画家で、「安井賞」の最終回の受賞者であった柳田昭さんが亡くなったことを、千歳市の水彩画家で道展会員の竹津昇さんのmixi日記で知った。
 竹津昇さんの日記は、サイト「水彩の旅」にもおなじ文章が載っている。

 竹津さんは南フランス・プロヴァンスで一緒にスケッチするなど、交友が深かった。

 ただし、この件は、新聞などには載っていない。
 安井賞は、洋画壇の登竜門といわれ、「画壇の芥川賞」の異名もあった。ほかに、VOCA賞とか、青木繁記念大賞、東郷青児美術館大賞などがあるけれども、正直なところ美術関係者以外はほとんど知られていないと思う。その中で、安井賞は、絵画にさほど興味のない人でも「聞いたことがある」というくらいの知名度は有していた。1996年、柳田さんの受賞をもって、終了したのが惜しまれる。
 その賞の受賞者の死亡記事が載らないというのは、奇妙である。
(ちなみに、安井賞にノミネートされるだけでも大変で、そういう画家は道内にもけっこういるが、本賞を射止めた人は誰もいない)

 柳田さんは、関東地方の農村の風景を、落ち着いた筆致で描き続けた。
 刈り取りの終わった水田、ありふれた早春の排水溝や小川、ビニールハウスの片隅。そういったものをじっくりと見つめる視線の低さが、際立っていた。
 ワイエスにも似たリアルさだが、あくまで日本の湿潤な風土に寄り添って筆を運んでいたと思う。

 これだけの力量の持ち主であるから、百貨店などで個展を開こうと思えばできたはずなのに、地方では貸し画廊を借りていた。
 札幌でも、2年ごとに札幌時計台ギャラリーで個展を開催していた。
 その理由を聞くと、貸し画廊のほうがふつうの人と出会えるんです、というような趣旨のことを話しておられた。
 道内では、実力ある画家が集まる「第3回 具象の新世紀展」(2004年)にも招かれた出品した。

 筆者は2002年の札幌時計台ギャラリーで見た「郷宴」が忘れられない。
 100号を3枚つなげた大きさに相当する、水彩画としては異例の超大作だった。
 冬の田んぼに、稲わらが積んであるのだが、それがまるでさまよえる人の群れにも見える。
 穏やかな冬の晴れた日が、壮絶な光景にも見えてくるさまは、圧巻としか言いようがなかった。

 1948年生まれだから、まだ60代だ。
 ご冥福をお祈りいたします。 



□柳田昭さんのサイト http://happytown.orahoo.com/yanagida/
□Akira Yanagida http://www.geocities.jp/madrid2002jp/yanagida.html

柳田昭展(2008年)
柳田昭展(2006年)
柳田昭展(2002年)
 ※いずれも画像なし


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (SH)
2012-12-06 19:14:27
ヤナイさん、こんにちは。
いやビックリです。
時計台ギャラリーでご本人を拝見したこともありますが、そんなお歳ではなかったですものね。
都合で、最後の個展を見に行けなかったのが心残りになってしまいました。
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SHさん、こんにちは (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2012-12-06 22:05:32
今年も札幌時計台ギャラリーで個展を開いたばかりなので、ちょっと信じられないという思いです。
それと、安井賞画家で日動画廊でも個展を開いた画家の死亡記事が出ないのはおかしい。茨城の共同通信とか、何をしてるんだろうと思います。
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