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■奇才・ダリ―版のグラフィズム展―(2013年6月7日~7月17日・釧路、7月26日~9月8日・旭川)

2013年07月17日 01時22分33秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 サルヴァドール・ダリは、言わずとしれた20世紀美術の巨匠であり奇才である。2007年に道立近代美術館で開かれた展覧会をご記憶の方もおられるであろうし、それほど美術に詳しくなくても、時計がぐにゃりとなって枝にぶら下がっている作品など、奇抜な絵の図版はどこかで見た記憶があるだろう。

 ところで、今回は215点が展示されており、彫刻(というかオブジェ)が6点あるが、大半は版画である。半数近くは1963年制作の「神曲」さし絵で、残る半数は、それ以降の晩年の作品である。
 したがって、先ほど述べたような代表作はもちろん来ていないし、超絶的な描写力がだれでも見て取れるような油彩は1点もない。「神曲」は、筆者の目にはどこが木口木版なのかわからない、淡彩画のような、にじみのある水彩画のような作品が大半。他の銅版画は、かなりの速筆で、あまり良いたとえではないかもしれないが、アニメの絵コンテのような印象さえ受ける。ほとんどの作品は、画面はスカスカである。
 ほとんど唯一スカスカ感が少ないのは、「シュルレアリスムの思い出」シリーズの12点。これはコラージュの傑作であると思う。ただ、水を差すようで恐縮だが、このシリーズは道立近代美術館も所蔵している。

 あとは「15の版画集」「イスラエルの12部族」「雅歌」「トリスタンとイズー」など、いずれも白っぽい部分が多く、スカスカ感満載。
 ちょっと思ったんだけど、仕事を引き受けすぎなんじゃないか。「日本の民話」なんて、いったいなんのためにやってる仕事なんだよ(笑)。
 ブルトンに「ドルの亡者」とバカにされていたけど、案外ホントだったりしてね。

 これから見る人にアドバイスしたいのは、「神曲」が100点もあるので、この古典文学を読破してから来いとまでは言わないけれど、ある程度の予備知識を仕入れてきてね、ということ。まあ、世界史をまじめに高校で勉強してた人は、ある程度は知ってるだろうけど。
 筆者ですか? 「神曲」は読了してませんよ。「どこが名作かわからない世界3大文学のひとつ」に勝手に認定してますんで。生前イヤなやつを、文章の中で地獄に落として苦しめるダンテって、すっごい根暗なやつだと思う。

 話を元に戻すと、「毛皮を着たヴィーナス」は、マゾヒズムという言葉を産んだ小説家マゾッホの作のさし絵。
 これ性器だろ、と思われるモティーフも散見されるが、極端にデフォルメされた人体が多いので、あまり露骨で下品な感じはしない。

 というわけで、もっと若い頃の気合が入った油絵も、にわかに見たくなってきたのだった。



2013年6月7日(金)~7月17日(水)午前9:30~午後5:00、金・土曜は午後6時まで。月曜休み(7月15日は開館)
道立釧路芸術館(幸町4)


7月26日(金)~9月8日(日)午前9:30~午後5:00(入場~4:30)、月曜休み
道立旭川美術館(常盤公園)
一般 1000(800)円/高大生 600(400)円/小中生 300(200)円 かっこ内は前売り・10人以上の団体

公式サイト



・JR旭川駅から、買物公園を直進、細くて高い塔のある十字路(こども冨貴堂のある交叉点)から左折して緑道(グリーンベルト)の中を行くと常盤公園。徒歩20分
・中央バス「高速あさひかわ号」(札幌駅前、中央バスターミナル発)で「4条1丁目」降車、徒歩6分


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