題名のとおり、国内で撮影した美しい風景写真を一堂にならべた展覧会。林明輝、白籏史朗、竹内敏信といった大御所もふくめた100人が各1点を出品しており、春から夏、秋、冬と、季節のうつろいにあわせて展示しています。
道内からも2人ほどが出品しているそうです。
また、モノクロ、デジタルは1点もなく、すべてカラーフィルムで撮影されています。画質の美しさは、さすがフィルムです。
地名の入った題はほとんどありません。
富士山が写っているので撮影地がわかる作品もありますが。
限られた場所の美しさではない、日本の普遍的な美を表現したい-という主催者の思いのあらわれかもしれませんね。
現代的なものやテーマ性のある写真でなくてはペケ-という人もいるかもしれませんが、ここまで美しいと、すなおにいいなーと思います。
鈴木一雄「湿原の目覚め」
夜明け前の湿原。空はラベンダー色に光り、それを、中央を流れる川が反射しています。闇の中に浮かび上がるのが、点在するミズバショウ。夢の中のような美しさです。
北下勝士「潮騒を背に」
なんとなく礼文島っぽいですが…。海を遠くに望む急斜面にユリ科の黄色い花がびっしりと咲いています。
和田亨「なごり桜」
桜を題材にした作品は多かったですが、とりわけシャッターチャンスの良さに目を見張ったのがこれ。桜の根元とその周辺を俯瞰気味にとらえた1枚で、花がついている枝はフレームに入っていません。根元をまるく取り囲むように残雪があり、その上にびっしりと桜の花びらが散り敷いているというめずらしい情景です。さらに、雪の消えた地面にはフキノトウが顔を出しています。
藤江徹雄「花の絨毯」
これも桜。八重桜の花がぼとぼと、びっしりと地面を覆い尽くしています。華麗にして壮絶な光景。
若林武「幽玄の刻」
これも桜。夜桜の上空に月がうかぶ。惜しいかな、満月の2、3日前といったところか。空の群青色がじつにきれい。
関谷宗一郎「桜舞い散る峡」
これは葉桜の写真。はらはらと舞う花びらが美しい。バックには放物線を描いて落ちる滝の水。
山形雅良「冬のいたずら」
ミズバショウが凍り付いたのか、水面から顔を出した草に付着した氷がたまたまミズバショウのような形になったのか。氷がきらりと輝く。
伊藤富雄「クリン草」
濃いピンクと薄いピンクの花がまじりあいながら、林の中にびっしり咲いている。花の写真は絞りのF値を大きくする場合が多いが、この作品では反対に絞って被射界深度を広げ、「びっしり感」を強調している。
高橋毅「神の庭」
コケが覆うもこもことした岩の凹凸。森の中のぽっかり空いた土地にできた、ふしぎな造形。
松村洋一「人里遊舞」
ホタルの光跡を長時間露光してとらえた写真はときおり見かけるが、わずか1キロほど先に集落の明かりが見えるという例はめずらしい。
林明輝「赤い欅」
大雪山系で撮影された写真を思わせる鮮やかな紅葉。驚かされるのは、背後の斜面に残雪があること。となると、これは間違いなく大雪山系と思われるが、あまりの自然の厳しさに言葉も出ない。
福田健太郎「華氷」
雪の結晶を大きくしたような氷片がおびただしく湖の岸辺を埋めつくす、この世のものとは思えない光景。厳冬の生んだ幻想だ。
平野さよ子「青い羽根」
落ち葉のすこし上に広がる、羽のようなかたちをした不思議な氷の面。水たまりの波が急速に凍り付いたのだろうか。自然の造形は奥深い。
佐藤博「渚の軌跡」
これも不思議。砂浜に、三日月湖のような形状の水たまりが繰り返されている。
川井外喜夫「霧氷染まる」
深い山の厳冬の光景だが、遠くに市街地が望まれるのがおもしろい。
それにしても、この列島の自然の織りなす四季の豊かさを思うと同時に、村落や街並みの写真がほとんどないことに気がつく。
日本の近代は、街並みの美しさを喪失してきた時代でもあった。それを考えれば、「我が国の四季は美しい」と胸を張ってばかりもいられない。
08年6月6日(金)-11日(水)10:00-18:30
富士フイルムフォトサロン(中央区北3西3、札幌北三条ビル 地図A)
道内からも2人ほどが出品しているそうです。
また、モノクロ、デジタルは1点もなく、すべてカラーフィルムで撮影されています。画質の美しさは、さすがフィルムです。
地名の入った題はほとんどありません。
富士山が写っているので撮影地がわかる作品もありますが。
限られた場所の美しさではない、日本の普遍的な美を表現したい-という主催者の思いのあらわれかもしれませんね。
現代的なものやテーマ性のある写真でなくてはペケ-という人もいるかもしれませんが、ここまで美しいと、すなおにいいなーと思います。
鈴木一雄「湿原の目覚め」
夜明け前の湿原。空はラベンダー色に光り、それを、中央を流れる川が反射しています。闇の中に浮かび上がるのが、点在するミズバショウ。夢の中のような美しさです。
北下勝士「潮騒を背に」
なんとなく礼文島っぽいですが…。海を遠くに望む急斜面にユリ科の黄色い花がびっしりと咲いています。
和田亨「なごり桜」
桜を題材にした作品は多かったですが、とりわけシャッターチャンスの良さに目を見張ったのがこれ。桜の根元とその周辺を俯瞰気味にとらえた1枚で、花がついている枝はフレームに入っていません。根元をまるく取り囲むように残雪があり、その上にびっしりと桜の花びらが散り敷いているというめずらしい情景です。さらに、雪の消えた地面にはフキノトウが顔を出しています。
藤江徹雄「花の絨毯」
これも桜。八重桜の花がぼとぼと、びっしりと地面を覆い尽くしています。華麗にして壮絶な光景。
若林武「幽玄の刻」
これも桜。夜桜の上空に月がうかぶ。惜しいかな、満月の2、3日前といったところか。空の群青色がじつにきれい。
関谷宗一郎「桜舞い散る峡」
これは葉桜の写真。はらはらと舞う花びらが美しい。バックには放物線を描いて落ちる滝の水。
山形雅良「冬のいたずら」
ミズバショウが凍り付いたのか、水面から顔を出した草に付着した氷がたまたまミズバショウのような形になったのか。氷がきらりと輝く。
伊藤富雄「クリン草」
濃いピンクと薄いピンクの花がまじりあいながら、林の中にびっしり咲いている。花の写真は絞りのF値を大きくする場合が多いが、この作品では反対に絞って被射界深度を広げ、「びっしり感」を強調している。
高橋毅「神の庭」
コケが覆うもこもことした岩の凹凸。森の中のぽっかり空いた土地にできた、ふしぎな造形。
松村洋一「人里遊舞」
ホタルの光跡を長時間露光してとらえた写真はときおり見かけるが、わずか1キロほど先に集落の明かりが見えるという例はめずらしい。
林明輝「赤い欅」
大雪山系で撮影された写真を思わせる鮮やかな紅葉。驚かされるのは、背後の斜面に残雪があること。となると、これは間違いなく大雪山系と思われるが、あまりの自然の厳しさに言葉も出ない。
福田健太郎「華氷」
雪の結晶を大きくしたような氷片がおびただしく湖の岸辺を埋めつくす、この世のものとは思えない光景。厳冬の生んだ幻想だ。
平野さよ子「青い羽根」
落ち葉のすこし上に広がる、羽のようなかたちをした不思議な氷の面。水たまりの波が急速に凍り付いたのだろうか。自然の造形は奥深い。
佐藤博「渚の軌跡」
これも不思議。砂浜に、三日月湖のような形状の水たまりが繰り返されている。
川井外喜夫「霧氷染まる」
深い山の厳冬の光景だが、遠くに市街地が望まれるのがおもしろい。
それにしても、この列島の自然の織りなす四季の豊かさを思うと同時に、村落や街並みの写真がほとんどないことに気がつく。
日本の近代は、街並みの美しさを喪失してきた時代でもあった。それを考えれば、「我が国の四季は美しい」と胸を張ってばかりもいられない。
08年6月6日(金)-11日(水)10:00-18:30
富士フイルムフォトサロン(中央区北3西3、札幌北三条ビル 地図A)