福山桂子さんの陶芸にはじめて注目したのは、昨年の北海道陶芸協会展だったと思います。
「凍裂」という、戦車や建物などが、巨大な幹の中に見え隠れするインスタレーションでした。今回の「祈り」展にも配置を少し変えて出品されていました。
ウクライナに対するロシアの侵略戦争に対しこれほどストレートに怒りを表明した作品はそれほど多くないでしょう。
その後、北区の「みんなのいえ」での個展を見に行き、その世界に驚きました。
ひとくちでいうと、福山さんの作品は、食器や花器といったいわゆる「陶芸」とはかけ離れています。核兵器に対する思いなどが、表面的な完成度や精緻さにこだわらず、表現されているといってよいでしょう。
「かつて人間たりし土」。
今年の北海道陶芸協会展にも出品されていました。
苦しむ群像が表現され、かの丸木夫妻の「原爆の図」を立体化したような迫力に満ちています。
そこに感じられるのは、核兵器の惨禍への憤りと、平和を希求する思いの強さです。
今回の個展「祈り」の副題は「叔父は被爆死した学徒八千人の一人だった」です。
福山さんは20年以上広島に住んでいたそうです。祖父は原爆投下直後の広島で、帰らぬ叔父を捜し回ったそうです。叔父は8日に亡くなってしまいました。
65年ほどを経て、叔母が白血病の前状態になったとのことです。
こんなに長い年月がたってから被曝の影響が出たことに怒りを覚えたことが、福山さんがこのシリーズに取り組み始めたきっかけのひとつになりました。
いただいた図録には「てのひらに平和のかけら」となっています。
福山さんは自らの作品を「心象風景」と呼んでいますが、たしかに「平和」とは、具体的なイメージにしづらいものなのかもしれません。
右には「かつて人間たりし土」の別バージョンがあります。
福山さんが三角錐を好んで造形していることがうかがえます。
会場のあちらこちらに、原爆被害を詠んだ俳句を印字した紙が置かれています。
ほかにも、頭部にウジ虫がわいた胸像「愛」など、丸木夫妻「原爆の図」や原民喜の詩を想起させるような悲惨な作品が多いなか、この「鳩よ飛べ!」のような、思わずホッとするかわいらしい作品もありました。
広島、長崎の惨禍から78年。
いまだ世界の大国は「核抑止論」をふりかざして核兵器廃絶に歩み寄ろうとしないばかりか、ロシアの指導者は核兵器使用をほのめかすありさまです。
今年、立て続けに3度の個展を開く福山さん。こうした人類の愚かしい現状に対する強い怒りが、作品にこめられているようです。
なお、筆者が見たのは第8回作陶展でしたが、第9回も基本的に同じ作品が並ぶと聞きました。
第10回は温泉ホテルの地下なので、ちょっと趣を変えての展示になると予想されいます。
□ https://www.keikofukuyama.com/
2023年8月1日(火)~6日(日)午前10時~午後6時(最終日~4時)
ゆる山くらぶ(札幌市豊平区平岸1の16)
2023年8月9日(水)~14日(月)午前10時~午後6時(最終日~4時)
茶廊法邑(札幌市東区本町1の19)
茶廊法邑へのアクセス(環状通東駅から)
・地下鉄東豊線「環状通東駅」から約700メートル、徒歩9分
・札幌駅北口から中央バス「東64 伏古北口線」「東65 伏古北口線」(いずれも東営業所行き)に乗り、「本町1条2丁目」で降車、約210メートル、徒歩3分
・札幌駅北口から中央バス「東63 苗穂北口線」(東営業所行き)に乗り、「北8条東17丁目」で降車、約650メートル、徒歩8分
・バスセンターから中央バス「東3 苗穂線」(東営業所行き)に乗り、「北8条東17丁目」で降車
・札幌駅前から中央バス「56 東雁来線」(豊畑行き)に乗り、「本町1条4丁目」で降車、約650メートル、徒歩9分
第10回作陶展「陶芸は、器だけじゃない」
2023年9月1日(金)~11月30日(木)
定山渓温泉ぬくもりの宿ふる川 ギャラリー蔵(札幌市南区定山渓温泉西4)
「凍裂」という、戦車や建物などが、巨大な幹の中に見え隠れするインスタレーションでした。今回の「祈り」展にも配置を少し変えて出品されていました。
ウクライナに対するロシアの侵略戦争に対しこれほどストレートに怒りを表明した作品はそれほど多くないでしょう。
その後、北区の「みんなのいえ」での個展を見に行き、その世界に驚きました。
ひとくちでいうと、福山さんの作品は、食器や花器といったいわゆる「陶芸」とはかけ離れています。核兵器に対する思いなどが、表面的な完成度や精緻さにこだわらず、表現されているといってよいでしょう。
「かつて人間たりし土」。
今年の北海道陶芸協会展にも出品されていました。
苦しむ群像が表現され、かの丸木夫妻の「原爆の図」を立体化したような迫力に満ちています。
そこに感じられるのは、核兵器の惨禍への憤りと、平和を希求する思いの強さです。
今回の個展「祈り」の副題は「叔父は被爆死した学徒八千人の一人だった」です。
福山さんは20年以上広島に住んでいたそうです。祖父は原爆投下直後の広島で、帰らぬ叔父を捜し回ったそうです。叔父は8日に亡くなってしまいました。
65年ほどを経て、叔母が白血病の前状態になったとのことです。
こんなに長い年月がたってから被曝の影響が出たことに怒りを覚えたことが、福山さんがこのシリーズに取り組み始めたきっかけのひとつになりました。
いただいた図録には「てのひらに平和のかけら」となっています。
福山さんは自らの作品を「心象風景」と呼んでいますが、たしかに「平和」とは、具体的なイメージにしづらいものなのかもしれません。
右には「かつて人間たりし土」の別バージョンがあります。
福山さんが三角錐を好んで造形していることがうかがえます。
会場のあちらこちらに、原爆被害を詠んだ俳句を印字した紙が置かれています。
ほかにも、頭部にウジ虫がわいた胸像「愛」など、丸木夫妻「原爆の図」や原民喜の詩を想起させるような悲惨な作品が多いなか、この「鳩よ飛べ!」のような、思わずホッとするかわいらしい作品もありました。
広島、長崎の惨禍から78年。
いまだ世界の大国は「核抑止論」をふりかざして核兵器廃絶に歩み寄ろうとしないばかりか、ロシアの指導者は核兵器使用をほのめかすありさまです。
今年、立て続けに3度の個展を開く福山さん。こうした人類の愚かしい現状に対する強い怒りが、作品にこめられているようです。
なお、筆者が見たのは第8回作陶展でしたが、第9回も基本的に同じ作品が並ぶと聞きました。
第10回は温泉ホテルの地下なので、ちょっと趣を変えての展示になると予想されいます。
□ https://www.keikofukuyama.com/
2023年8月1日(火)~6日(日)午前10時~午後6時(最終日~4時)
ゆる山くらぶ(札幌市豊平区平岸1の16)
2023年8月9日(水)~14日(月)午前10時~午後6時(最終日~4時)
茶廊法邑(札幌市東区本町1の19)
茶廊法邑へのアクセス(環状通東駅から)
・地下鉄東豊線「環状通東駅」から約700メートル、徒歩9分
・札幌駅北口から中央バス「東64 伏古北口線」「東65 伏古北口線」(いずれも東営業所行き)に乗り、「本町1条2丁目」で降車、約210メートル、徒歩3分
・札幌駅北口から中央バス「東63 苗穂北口線」(東営業所行き)に乗り、「北8条東17丁目」で降車、約650メートル、徒歩8分
・バスセンターから中央バス「東3 苗穂線」(東営業所行き)に乗り、「北8条東17丁目」で降車
・札幌駅前から中央バス「56 東雁来線」(豊畑行き)に乗り、「本町1条4丁目」で降車、約650メートル、徒歩9分
第10回作陶展「陶芸は、器だけじゃない」
2023年9月1日(金)~11月30日(木)
定山渓温泉ぬくもりの宿ふる川 ギャラリー蔵(札幌市南区定山渓温泉西4)