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■風化から再生2024[朽ち往くものから]―下沢敏也展 (10月12日~12月8日、釧路)●12月、釧路へ(12)

2024年12月19日 07時29分52秒 | 展覧会の紹介-工芸、クラフト
(承前)

 最近の釧路芸術館は、展示室を巧みに区切って、正面から右手(東側)の空間を通常の有料展示とし、左手(西側)を無料とすることが多くなりました。
 他の道立館と異なり、企画展の展示室とは別の所蔵品展示室が作られていないための措置だと思いますが、おもしろい試みだと思います(ワークショップなどに使える「フリーアートルーム」という部屋はある)。
 釧路芸術館は以前から「アートシネマ館」という、地方では見る機会にあまり恵まれない単館系・ミニシアター系の映画などの上映会を毎月行っていますし、夏は金曜の夜まで開館を延長するなど、ミュージアムを身近に感じてもらう企画に、道立館のなかでも積極的に取り組んでいます。

 ときどき現代アート系の道内作家の個展も開きます。
 はたから見ていると、おひざ元の道立近代美術館が消極的なため、その分を500m美術館と釧路芸術館で補っているようにさえ思われてくるほどです。
 今回の下沢さんは札幌を拠点にしている陶芸家。地元はもとより関西などでもインスタレーション作品の個展を開いています。

 筆者は正直言って、同時開催の「天と地と」と同様、見に行くかどうか迷っていたところがあります。
 それは下沢さんの作品に見る価値がないからではもちろんなく、札幌でも毎年のように個展を開いている作家であるため、もし札幌とおなじものを並べているのであれば、わざわざ釧路まで行かなくてもいいのではないかと思ったためです。釧路地方の皆さん、ごめんなさい。

 でも、これも「天と地と」と同様、見に行って良かったと思います。
 「残存 III」(という作品だと思います)が、スペックが明記されていないものの、高さが4メートル以上あったようです。
 札幌市民ギャラリーやSCARTSコート1階などの公的施設は別にして、民間のギャラリーでこれほど背の高い作品を設置できるところは札幌にはないでしょう。

 また、茶器が21点もあった(茶杓や、「窯変土塊」2点を含む)のは意外でしたが、札幌の個展ではむしろ展示しないことも多いので、これも見ることができて良かったです。
 下沢さんの茶器も大きな造形作品と同様に、あたりの空間を異化してしまうような、ゴツゴツとしたパワーを内包した景色を有しています。これほどの気迫を感じさせる茶器を手がける陶芸家は、そうたくさんはいません。

 土と炎の原初性を感じさせる平面作品も壁面に並んでおり、それほど大規模ではありませんが、下沢敏也さんの芸術をつかむのにうってつけな展示であったと思います。
 ただし、下沢さんの近年の発表の常として、キャプションの類がとても少ないです。言葉でいちいち説明しなくても見る人が感じられる作品であることには違いありませんが、これらの作品がどのようにして作られているのかを知りたい人は当然いるでしょう。会場に、佐藤友哉さんの著書『北の美術の箱舟』が置かれていて、知りたい人はそちらを―ということのようでした。なんでもかんでもパネルにするのではなく、本を置いて手に取れるようにするのも一つの手だとは思いました。 


2024年10月12日(土)~12月8日(日)午前9時半~午後5時(10月25日は午後7時)いずれも入館は30分前まで
月曜休み(10月14日と11月4日を除く)。10月15日休み
北海道立釧路芸術館(釧路市幸町4)

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下澤敏也・多田昌代2人展(02年、画像なし)

(この項続く) 


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