Kuniko Yonezawa's works are painted and drawn by not only oil and paintbrush but pens and color ink.
Almost of her paintings are abstract,but Mt.YOTEI(EZO-FUJI) is sometimes appears on her canvases.
ギャラリーで絵の前に立つとき、作品のサイズにもよるが、おおむね1メートルか2メートル下がって見ることが多いようだ。
あまり近づくと、画面の全体像が把握できないからである。
しかし、米澤さんの絵にかぎっては、全体像を見る位置に立つだけではほとんど意味がない。
顔を画面にくっつくばかりの距離で、細部を見つめよう。
そうすると、「物語の森」という題名のとおり、まるで森の奥深くに分け入って迷子になってしまったかのようにあなたは絵の中から出られなくなるだろう。
米澤さんの絵は、油彩の抽象画である。
ほかの人の油絵と異なるのは、いったん描いたキャンバスの上に紙などを貼って、カラーインクで細かい線や模様をかきこんでいることだ。だから、非常に細かい。
さらに、ガーゼや、よじった糸を貼りつけているところもある。
「ミシンを持っているので、思いついたらすぐに作業にとりかかります」
と米澤さん。
それらは、いかにも「コラージュしてます」という風情ではなく、目をこらさないと分からない。刺繍のように、物質感があるわけでもない。ただ、画面に微妙なリズムが生まれている。
つぎの作品画像は「物語の森」。
100号の大作だが、濃密な画面が展開されている。
はっきりしたかたちがあるわけでもなく、熱い抽象のようにしぶきが飛び散るわけでもない。
ところどころ、暗闇の中にはっとするような美しい色が置かれている。
「色はぶつかり合うよりも、溶け合う方がすきですね」
具体的なものが描かれていないゆえに、点や色の中に入り込んでしまうと目が離せなくなってしまうのかもしれない。
以下、この絵の細部の画像を、ランダムにならべてみたい。
絵の右端。
よじられた糸が縦に何本もならんでいる。
形状の不分明な画面のなかで、唯一、他の部分と区別しやすい三角錐のようなかたちが認知できる。画家が若いころに住んでいた倶知安の町から見える羊蹄山(蝦夷富士)であろう。
花びらの拡大写真を思わせる線の集積。
つぎは、やや小さいサイズの変形作品「森の物語II」。
支持体は板で、側面に色とりどりの頭部を持ったまち針が突き刺さっているのがおもしろい。
表面にはコーヒー用のペーパーフィルターまで貼られている。
なにかのかたちを画面にさがそうとしても徒労に終わるだろう。そこには、漠然とした色のうつろいと、細密な線や点の繰り返しがあるばかり。やはり、絵を読もうとして深みにはまっていく自分がいることに気づく。
各作品とも、おなじ線や模様の反復になっておらず、じっくり味わおうとしたらいつまでも見終わらない。
小品は、少女の顔を描いたり、羊蹄山をモティーフにした具象画もある。
とにかく、細部が面白い絵の個展だった。
米澤さんは室蘭生まれ、札幌在住の全道展会員。
経歴などは前回の個展のエントリを参照のこと。
出品作は次の通り。
物語の森 100F 2007年
流々草花 100F 2008年
夜語り-花の交信- 100F 2007~08年
行く水・来る水 100F、2009年
物語の森 II 101×59 2009年
物語の森 I 101×57 2007年
水中庭園 20F、2007年
羊蹄残照 72.3×49.5 2008年
封-地の声- 10F 2006~09年
封-届かぬ言葉- 10F 2007年
海音 10F 2008年
野の風 10F 2008年
九つの雲 10F 2008年
炎花 8F 2009年
夜-路地- 8F 2009年
雪日讃歌 6F 2009年
落日 6F 2009年
雨ノ日 4F 2008年
秋雨 3F 2009年
地の光 3F 2009年
野にて 3F 2009年
縄文の花 SM 2009年
眠る種子 25.5×21.0 2007年
秋陽 20.0×16.6 2009年
交信 0F 2009年
2009年7月13日(月)-18日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
■2007年の個展