北海道美術ネット別館

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■ACT5展 最終章 (7月2日まで)

2008年07月02日 07時49分39秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 北海道を代表する腕こき中堅画家5人によるグループ展の、最終展。
 顔ぶれは、木村富秋(札幌)、福井路可(室蘭から東京に単身赴任中)、森弘志(02年参加・十勝管内新得町)、矢元政行(登別)、輪島進一(渡島管内森町)の5氏。

 ヘンな例で恐縮だが、ロックバンドにも、仲良しグループが結成したものと、演奏の力量で各バンドの「顔」が集結したものの2種類がある。前者がダメというつもりはない(たとえば、エレファントカシマシは前者だし。ルナシーなんかは後者だな)けど、「ACT5(アクト・ファイブ)」は典型的な後者だと思う。酒が入れば談論風発、お互いの絵を本気で批評し合う。森さんいわく
「北海道の美術史上、もっとも仲の悪いグループ展(笑)」
だそうだ。
 とにかく、絵に人生を懸けているといっても過言ではない人たちであり、その意味では昔の画家かたぎを残しているともいえそうだ。

 展覧会については、美術評論家の吉田豪介さんが、さすが第1回から見続けていっしょに酒も飲んでいる仲だけに、きわめて的確な評を、札幌時計台ギャラリーの発行するフリーペーパー「21ACT」(似たようなタイトルだが、深い意味はないと思う)に書いており、筆者ごときが付け加えるものはない。とにかく、この5人の力量には圧倒されてしまった。
 ただ、モンガイカンが見れば、おなじようなタイプの絵でそろえた福井、木村、矢元の3氏よりも、画業の変遷がわかる輪島さんの展示が、人をひきこみやすい面があったかもしれない(まあ、昨年の網走市立美術館での個展のダイジェスト版なんだけど)。

 異彩を放っていたのは森さんで、古いリカちゃん人形をモティーフにしたおなじサイズの連作を18点ならべた。全点が新作だ(と思うけど、一部全道展に出品してたかもしれない)。中央部分に短いテキストが入っている。
 森さんは
「いろいろ考えたけど、けっきょく絵は情報だと思う。だからといってすぐ映像に走るのも安直だし、こういうかたちにした。よく『説明的な絵はダメ』といわれるのであえて逆をやってみた」
と話す。
 「ミニマルアート以後」の現代絵画で「変化球を投げまくる」というスタイルは、案外森さんと、武田浩志さんあたりと共通しているように思う。

 矢元さんは、以前の行動展にも出していた作品を完成させていた。
 いつも彼の絵の前に立つと
「今日こそは、何人描かれているか数えてやる」
と誓うのだけど、きまって挫折する。
 ご本人にお聞きしたら
「1000人はいる」
とのこと。
「グリッドをかいて、何人配置したらいいか計算していたけど、途中でやめちゃった」
 上半身が女で、股間には男性器-という人物も発見できた。
 ほんとうに見飽きない作品群だ。

 木村さんの絵に登場する鳥が、黒から白に変わっていることに気づいたし、福井さんが、どうやら「いかに描かないで描くか」とでもいえそうな問題意識で画面を構築していることがあらためて伝わってきた。

 ところで、先に述べた吉田豪介さんの文章だが、じつは出品点数がちがっている。
 といって、うそを書いたのではない。搬入してみたら、壁面が足りず、すべてを展示することができなかったのだ!
 わずか5人であの広大なスペースを埋めるのでもおどろきなのに…。
 そこで、どの絵を間引くかで、また侃々諤々(かんかんがくがく)の議論になったらしい。結果として、ギャラリーならともかく、美術館としてはちょっとぎゅうぎゅうの展示になった感じは否めない。
 したがって、会場入り口で配られる作品目録の全点がそこにあるわけではないことを、承知されたい。


08年6月25日(水)-7月2日(水)
道立近代美術館(中央区北1西17 地図D)

一般500(400)円 高大生300(200)円。中学生以下無料。( )内は、10名以上の団体料金およびリピーター料金(当館で開かれた特別展の観覧半券を提示の場合)

・地下鉄東西線「西18丁目」から徒歩4分
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館前」から徒歩1分


06年
02年(画像なし)

木村富秋小品展(07年4月)
木村富秋展(03年)

福井路可展(02年)
福井路可展(01年、画像なし)

森弘志展(01年)

第62回行動展(07年秋、画像なし)
矢元政行展(03年、画像なし)

輪島進一展-変貌する瞬 ■つづき
輪島進一展(01年12月、画像なし)
輪島進一展(01年8月、画像なし)

しかおいウィンドウアート(03年。8月19日の項)=森さん、福井さんが出品


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