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■「現代アートを解剖する Vol.1 武田浩志」展 (2020年3月7日~4月26日、札幌)ー3月29日は7カ所(6)

2020年04月27日 18時24分00秒 | 展覧会の紹介-現代美術
(承前)

 題が添えられていない、100号はありそうな大作の絵画を、15分以上見ていたと思う。

 武田さんの絵にはおよそ何でもある。
 直線も曲線も、ドット模様も縞模様も、面も色斑もある。
 にもかかわらず、フィギュラティブな(具象的な)要素といえば、しゃれこうべが描かれているだけである。つまり、意味のあるものは、ほとんど何もない。
 だが一度見始めると、なかなか止まらない。このレイヤー(層)が手前にあって、こちらが奥で…などと考えだすと、際限がないのだ。

 これについて、何かを述べる資格が筆者にあるとは思えない。
 武田さんの「抽象画」は、たとえばバーネット・ニューマンやマーク・ロスコのような宗教的な背景を持たないだろうし、ザオ・ウーキーやリ・ウファンのような東洋的な精神性の世界とも関係しないだろう。
 そういう「世界と対峙する」ような在り方からも、いつの間にか逃走・逸脱してしまうような作品だといえるかもしれない。

 この展覧会で、武田さんの作品と同じぐらい感銘を受けたのが、会場に全文が貼られていた4人による批評文、なかでも山本雄基さんによる
Azkepanphan先輩、なにしてるんですか?(武田浩志・拙論)
であった。
 もし将来誰かが展覧会図録などに武田浩志論を書くことがあったら、このテキスト抜きで執筆することは絶対に不可能であろうし、また、2020年における絵画というものの意味を真摯に分析したすばらしい絵画論でもある。
 さすが、20年ほどにわたって近くで見てきただけのことはある。
 このテキストは、つぎのことばでしめくくられている。

理屈で作品を規定しようとせず、既存の美術史にも縛られず、過去の自作品のスタイルも気にせずに、ひたすら作る衝動が優先され、手を止められない武田のことを、「泳いでないと死んでしまうサメと同じ」と喩えていた人がいる。そんな武田の過去から未来までの全画業に、つい僕が期待してしまうことは、表現が一つの地点にとどまることなく、現実の認識が武田作品に追いつこうとする頃には、すでにそこから別の地点まで離れたイメージを生み出しながら、絵画とナンセンスを融合させ、アップデートし続けることにある。


 理屈のない絵画についてこれほど多くを述べることができるという山本雄基氏の腕力にはただ脱帽するしかない。付け加えれば、武田作品は、美術史のほうにこと寄せて語ることもなかなか難儀なのである。
 強いて言うなら、ポップアートが本来有する「ノン・フィギュラティブ性」に近いものがあるのではないかというのが筆者の見立てだが(ポップアートは、イメージを描いているのであって、現実の対象を描いているのではないから、一種の非具象絵画である)…。

 ぜひ見てほしい! と書くつもりでいたら、突如、入居するビルが臨時休業してしまい、展示も打ち切りになってしまった。
 雰囲気は、下のリンク先でもいくらか味わえるので、参照してほしいと思う。 


2020年3⽉7⽇(土)〜 4⽉17⽇(金)午前11時〜午後8時
※4月26日までの予定が、新型コロナウイルスの緊急事態宣言を受けて、赤れんがテラスが臨時休業入りしたため、17日で打ち切りとなった
眺望ギャラリー テラス計画(札幌市中央区北2⻄4 ⾚れんがテラス5階)

□展覧会公式サイト https://www.terracekeikaku.com/project
http://www.hiroshitakeda.com/

【告知】武田浩志 Utopia MoMo Iro 7(2012)
【告知】絵画の場合2012 -最終章-
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