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2015年6月14日は5カ所(3) 「忠治旅日記」「くもとちゅうりっぷ」ほか

2015年06月16日 22時15分49秒 | 音楽、舞台、映画、建築など
(承前)

 道立近代美術館からジェイアール北海道バスに乗る。なんとかすわったが、やはり混雑している。
 時計台前で降車。NHKギャラリーで衆樹会風景画展を見る。沖本さんが当番でいらした。

 そこから創成川沿いに南下し、狸小路を西進して、5丁目の札幌プラザ2・5へ。
 札幌映画サークルが、東京国立美術館フィルムセンター所蔵のフィルムを上映するので、4プログラムのうち二つを見る。

 一つ目は、幻の映画といわれた「忠次旅日記」。
 伊藤大輔監督、大河内伝次郎主演で、国定忠治の「その後」を描いた。ユーモアあり、殺陣あり、恋あり、親子の悲しい別れありの、いわばオールラウンダーな作品で、50年代半ばにキネマ旬報が行ったオールタイムベストテンで1位に輝いたのもうなずける。
 活動写真弁士と薩摩琵琶の楽士つきで、楽士の演奏は映像に良い陰影を与えていたと思う。
 弁士のほうは、口ごもるところもあり、不慣れな映画だったためなのはやむをえないとしても、「~のうち」を「なか」と読み、頭目の意味で「かしら」を「あたま」と読み、「在」を「庄」と読むようでは、基本的な日本語の素養が足りないのではないかと言わざるを得ない。「真逆」を「まぎゃく」と言ったのには、文字通り「まさか!」と、いすから転げ落ちそうになった。「まぎゃく」などという日本語はもともと無い。
 ただし、当時のフィルムは1秒に18こま映写するように撮影されており、現在の映写機(1秒に24こま)にかけると、かなり速く、とりわけ字幕を読むのは大変である。だから弁士の存在は欠かせないのである。

 二つ目は短編アニメ集。
 現存する日本のアニメで最も古い「なまくら刀」は1917年の作品(おそらく断片)である。
 名は以前から知っていた「くもとちゅうりっぷ」(1943)は、やはりすごい。被写界深度を浅くして、奥をわざとぼかしたり、くもの不在を転がるパイプで暗示したり、音楽とのシンクロ度もあわせて、非常に完成度の高い一品。
 教訓めいた要素や、好戦的な部分も無く、とても戦中に作られたとは思えない。

 ほかに「東京行進曲」「黒ニャゴ」「村祭」「國歌 君が代」「大きくなるよ」「茶目子の一日」「浦島太郎」「瘤取り」「二つの世界」。
 「黒ニャゴ」は29年、「村祭」は30年で、人物の動きはほとんど左右に限定されている。手塚治虫以前の「のらくろ」などが、まるで芝居の書割のごとく、登場人物が左右にしか動かないのと、軌を一にしているといえる。
 上下、前後に、自在に登場人物が動くようになるのは「瘤取り」(29年)に萌芽がみられ、「くもとちゅうりっぷ」では動きが自在になる。

(この項終わり) 


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