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写真とアート

2009年12月21日 20時40分37秒 | 展覧会の紹介-写真
承前

 2009年12月19日まで札幌のCAI02で開かれていた酒井広司写真展「Sight Seeing」。
 会場の入り口に掲げられたテキストを書いたのは佐藤友哉・道立近代美術館学芸副館長だった。
 ロラン・バルトを皮切りに、アジェ、ベンヤミンなど海外の言説・批評を次々と繰り出した評論文だ。
 日本の写真批評の76%はバルトかスーザン・ソンタグを下敷きにしているから、佐藤友哉さんずいぶん勉強したな~と感服する。
 と書くと、なんだか皮肉を言ってるみたいだけど、そういうことではない。

 以前、こういう小話があった。

甲:アートの写真と、ふつうの写真って、どう違うの?
乙:「美術手帖」に載ってるのがアートの写真。「アサヒカメラ」「日本カメラ」に出てるのが写真業界の写真。

 実もフタもないけど、かなりあたっているところもあると思われる。

 抽象表現主義からミニマルアートにいたって、従来の絵画が、アートの最前線といえなくなってきたあたりから、写真が現代アートに占める位置は、確実に増大している。
 ただ、アート業界で評価される写真と、従来の写真業界で評価される写真とは、微妙に食い違っているように思う。

 それはさておき、北海道立の美術館を見る限り、釧路芸術館を例外として、そういう写真の流れにまったく「われ関せず」という態度を決め込んできていたのは事実である。
 釧路芸術館は、森山大道、長倉洋海、そしてことしのマイケル・ケンナなど写真展を何度か開催しているし、コレクションにもしている。
 しかし、他の4館では、あまり開かれていないように思う。
 帯広美術館が2001年、「北海道美術の20世紀Ⅱ 美術はなにを記録してきたか」の中で写真を紹介したり、2002年にデメーテルの関聯企画だったかでアラーキーの写真展が開かれたり-ということはあったけど。

 道立近代美術館はこれまで、2002年の「回想・北海道の25人」などに端的に見られるように、北海道の美術史に写真を位置づけるという仕事に、ほとんど着手していないように思われる。「回想…」展から7年にもなるのに、同館にとっては、深瀬昌久も田本研造も眼中にないようだ。酒井さんの写真展は、遅まきながら同館が軌道修正を図るきっかけになるのではないだろうか。
 いや、なってくれないと困るな。


(※ 「76%」というのはジョークなのでくれぐれも本気にしないように。ww)



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3 コメント

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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2009-12-22 22:05:04
>Halva@kivatorial23さん、はじめまして。
Twitterでフォローしてくださってる方ですか?
アートと写真の雑誌による区別の話はあくまで「小話」なのであまり真剣に受け取らないでくださいまし。

手っ取り早くいうと、酒井さんの個展、良かったですよね。


>asanoさま

 そういえば、APAだったか、2回ぐらい貸し館してましたね、キンビで。
 東川賞、その文脈ではたしかに重要ですが、受けた人からも時には無視されていることがあるのが悲しいなあ。
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Unknown (asano)
2009-12-22 19:15:38
北海道の場合ちゃんと写真を扱うギャラリーがないから、インテリアとしての写真が「アート」だとされていたり、道立近代美術館で貸館とはいえ、過去に。「アサヒカメラ」「日本カメラ」に掲載されているような団体の写真展をしたという事もあります。「アサヒカメラ」「日本カメラ」がじゃ「写真業界の写真」かというと、必ずしもそうではない部分も今はあります。。。。。。
そういう意味で「アート」の写真を考える上で東川賞というのは非常に重要な意味をもちますね・・・と言ってみます。
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勉強になります (Halva@kivatorial23)
2009-12-22 18:36:27
ブログ拝読させていただきました。
CAI02は先日行ってきたのでとても印象に残っています。・・・(引用)「美術手帖」に載ってるのがアートの写真。「アサヒカメラ」「日本カメラ」に出てるのが写真業界の写真。
----なるほどと思いました。

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