鈴木吾郎さんは小樽のベテラン彫刻家。
数年前から道展や小樽市展をやめ、創作に集中しています。ここ数年もっぱら取り組んでいるのは、テラコッタの少女像です。
札幌時計台ギャラリーでの個展は2009年以来とのこと。
人物像というのは、単なる写実に見える人もいるかもしれませんが、なかなか奥の深い世界だと思います。
ただ、人間から型を取ったみたいな描写をしても、それは「リアル」ではなくて「グロテスク」になりがちです。
古代ギリシャ彫刻が古来称賛されてきたのは、リアルと理想のあいだで絶妙のバランスをとっているからでしょう。
鈴木さんの作品も、丸みを帯びたラインがすばらしく、単なるリアルさとも、かわいらしいデフォルメとも異なる、人物彫刻らしさにあふれたものになっていると思います。
それでいて、宙を飛んでいるような姿勢はユニーク。量塊性が重視される彫刻の世界で、その対極にある軽やかさを追究しているのでしょうか。
冒頭の端は「試作 トルソー」。
いまなお衰えぬ作者の実験精神がうかがえます。
中央は「哀しみの女 2012」。
取り巻くように置かれている漁網や流木などは、鈴木さんが用意。それらを、搬入を手伝ってくれた人たちが自由に配置して、インスタレーション的な展示にしました。
木片などは見る人が自由に動かしていいとのこと。
作者が東日本大震災への思いをこめて作ったというだけに、津波に襲われた海岸を想起させる一角です。
今回の個展には、彫刻15点のほか、デッサンも13点展示されています。
すぐれた彫刻家のデッサンは、へたな画家のそれよりもすぐれているとは、よくいわれることですが、鈴木さんのデッサンも線に迷いがなく、的確に対象を捉えています。
今回の個展には、テラコッタの少女像のほかに、めずらしく男性像も出品されています。
この画像の作品は「哀しみの男・阿々Q」。
奇妙なタイトルですが「阿々Q」は、ああ9、という嘆きです。男の持つ頭蓋骨には、憲法9条が死に瀕しているという危機感がこめられています。
6月20日(月)~25日(土)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
関連記事へのリンク
鈴木吾郎「屯田時計塔」 (北見)
【告知】鈴木吾郎 彫刻50年展 (2012)
【告知】鈴木吾郎 / 哀しみの容(かたち)展 (2011)
■鈴木吾郎古希・テラコッタ自選展(2009年)
■小樽 美術家の現在シリーズ1 鈴木吾郎展
■鈴木吾郎テラコッタ新作展(2002年)
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ただ、人間から型を取ったみたいな描写をしても、それは「リアル」ではなくて「グロテスク」になりがちです。
古代ギリシャ彫刻が古来称賛されてきたのは、リアルと理想のあいだで絶妙のバランスをとっているからでしょう。
鈴木さんの作品も、丸みを帯びたラインがすばらしく、単なるリアルさとも、かわいらしいデフォルメとも異なる、人物彫刻らしさにあふれたものになっていると思います。
それでいて、宙を飛んでいるような姿勢はユニーク。量塊性が重視される彫刻の世界で、その対極にある軽やかさを追究しているのでしょうか。
冒頭の端は「試作 トルソー」。
いまなお衰えぬ作者の実験精神がうかがえます。
中央は「哀しみの女 2012」。
取り巻くように置かれている漁網や流木などは、鈴木さんが用意。それらを、搬入を手伝ってくれた人たちが自由に配置して、インスタレーション的な展示にしました。
木片などは見る人が自由に動かしていいとのこと。
作者が東日本大震災への思いをこめて作ったというだけに、津波に襲われた海岸を想起させる一角です。
今回の個展には、彫刻15点のほか、デッサンも13点展示されています。
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この画像の作品は「哀しみの男・阿々Q」。
奇妙なタイトルですが「阿々Q」は、ああ9、という嘆きです。男の持つ頭蓋骨には、憲法9条が死に瀕しているという危機感がこめられています。
6月20日(月)~25日(土)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
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