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本郷新「朝倉義衛翁」 オホーツク管内滝上町の野外彫刻(5)

2021年08月16日 08時44分56秒 | 街角と道端のアート
(承前)

 毎年5月中・下旬になると、美しいピンク色の花が斜面を覆い尽くす観光名所「芝ざくら滝上公園」の一角に、札幌出身の有名な彫刻家、本郷新の手になる胸像が立っていることは、あまり知られていないのではないでしょうか。

 裏面に、略歴が刻まれています。
 戦後の文章なので読みづらくて解釈に悩むところはありません。


      彰   徳 
 翁は明治四十一年弱冠十九才にして高知県より
 本町に来住開拓に従事す。後村会議員に推され
 爾来町議会、道議会議員を経て昭和四十三年町
 長に就任三期十二年に亘り重責を果たし勇退を
 機に滝上町名誉町民の称号を贈らる。この間地
 方自治功労者として藍綬褒章、勲四等瑞宝章を
 受く。町発展に貢献せる処大なり。仍って胸像
 を建立し功業を讃え後世に伝う。
   昭和四十七年五月
              滝  上  町
              製作 本郷 新  


 もっとも、この文章は、格調は高いですが、あまり具体的とはいえません。

 この公園はもともとエゾヤマザクラの名所でした。旧国鉄渚滑しょこつ線に花見客用の臨時列車が走ったこともあったそうです。
 ところが1954年、北海道中の木々を強風でなぎ倒した「洞爺丸颱風たいふう」の直撃を受け、桜の木が壊滅的な被害を受けます。

 当時の観光協会長が、本物の桜よりもシバザクラのほうが花の期間が長い―と、町内の寺から株分けしてもらった「ミカン箱一つ分の苗」を57年に公園内に植えたのが、名所の始まりです。
 59年に町長に当選した朝倉さんはシバザクラ観光を政策に据えて、日本一の面積を目指そうと町民に呼びかけました。



 シバザクラは年々面積を広げ、90年には10ヘクタールにまでなりました。
 今は、同じオホーツク管内の大空町東藻琴と人気を二分するシバザクラの名所になっています。

 朝倉元町長の像が、役場の前などではなく芝ざくら滝上公園にあるのは、ちゃんと意味があるのです。



 眼窩(目のくぼみ)やきりっと引き締まった口元の表現をさすがと感じてしまうのは、あらかじめ本郷新の作品と知って、見るからでしょうか。

 裏面に本郷のサインも確認できました。



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https://goo.gl/maps/gm6hkud7X9NDrcEr7



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