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■Toshihiko Shibuya / Snow Pallet 17 - Snow on Anthropocene - (2023年12月28日~24年1月5日、札幌)

2024年01月04日 08時53分03秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 札幌の澁谷俊彦さんが毎年冬に場所を変えながら展開している「Snow Pallet」シリーズの17回目。
 雪が降り積もる北海道の自然環境をたくみに利用しています。
 雪それ自体に着色しているのではありません。円盤などに塗布した蛍光色を雪が反射しているのです。

 以前は、板の下側に黄色や赤などを着彩して、その下に積もった雪の表面に色がほんのり映る―という作品もありました。
 今回設置されているのは、板の上に色を塗り、その上に積もった雪の底部に色が映り込んでいます。
 
 雪がどのように積もるかは、空模様任せで、作者には(もちろん、見る人にも)どうにもなりません。
 せっかく見に行っても、円盤の上に雪がこんもりとうずたかく積もっているかもしれませんし、暖気で雪がすべて溶け落ちて、高さの異なる円盤が並んでいるだけの光景を目にするかもしれません。

 実際、作者が見に行ったら、その年の冬はドカ雪で、すべてのパレットが埋まっていたこともありました。
 

 従来のアート作品の多くが作者の意図を隅々まで貫徹させようとしていたことへの、一種のアンチテーゼとして成立しているのが澁谷さんの作品だということは、以前も指摘しました。
 いわば、西洋流への批判がこめられているといえます。

 ただ、今回、はじめて気がついたことがありました。

 澁谷さんは、「作らない」んですよ。
 
 「作家が作らない」
というのは、奇異な言い回しに聞こえるかもしれません。

 しかし彼の場合、generation シリーズは決して小さなピン自体が作品なのではなく、それをとりまく自然環境全体がいわば作品として提示されていますし、昨年のCAI03 での個展「沈黙の森」の作品、あるいは「WHITE COLLECTION」シリーズは、自然から種子などを拾ってきてそれを見せるだけです。それを素材に新しいモノをこしらえるのではありません。
※この段落に1月7日、一部加筆修正しました。
 

 こんなことを言うと叱られそうですが、画家や彫刻家がせっせと創造しているものは、将来はひょっとしたら廃棄物となって環境破壊の一因になるかもしれません。
 もちろん、自分が生んだものが環境破壊になるなどと考えたら創作活動は何もできませんし、「環境に悪影響を与えるから何も作るな」というところまで主張が先鋭化してそれを他人に強いるようになってしまったら、それはもはやファシズムでしょう。
 澁谷さんは他の人の創作態度に註文を付けているわけではなく、むろん、自他のアート作品をごみ扱いしているわけではありません。ただし、自らの創作活動ではあまり環境に負荷を掛けないスタイルを取っているとはいえるのではないでしょうか(そのことを、前面に打ち出しているというわけではなさそうですが)。
 
 
 こうしてみると、展示に「人新世(アントロポセン)」という語を冠しているのは、単なる「はやり」に乗ったからでも、気候変動により降雪量が急変しているという理由だけでもなさそうです。
 
 澁谷さんの作品は、方法論自体はあまり変化はなくとも、見た目は常に変化しています。
 積雪量はもちろん、時間帯や天候によっても光の具合で微妙に変わってくるのです。
 その変化は、作者のコントロールによるものではなく、あくまで環境の側に主導権があるわけです。
 そしてその環境に及ぼす人為的な影響は、年を追って増大しており、そこは作者も自覚的であろうと思われます。

 澁谷さんの作品に欧米からの反響が大きいのは、気候変動への関心と危機感の強い土地だという背景があるのかもしれません。


2023年12月28日(木)~1月5日(金)
北翔大学札幌円山キャンパス屋外エントランス(札幌市中央区大通西22)
 
作者のサイト www.toshihikoshibuya2.com

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PLUS 1 +柴橋伴夫企画 空間の触知へ-連鎖の試み 藤本和彦 澁谷俊彦(2009年8月)
澁谷俊彦展-森の雫09- 茶室DEアート (2009年7月)
澁谷俊彦個展-青い雫09-

澁谷俊彦展 森の雫(2008年3月)■つづき
2000~07年は、上のリンクからたどってください


・地下鉄東西線「西18丁目駅」1番出口から約390メートル、徒歩5分。2番出口から約490メートル、徒歩7分
・同「円山公園駅」5番出口から約460メートル、徒歩6分

・ジェイ・アール北海道バス「北1条西20丁目」降車、約420メートル、徒歩6分
※手稲方面行きが止まります。快速や都市間高速バスは止まりません
・ジェイ・アール北海道バス、中央バス「円山第一鳥居」降車、約680メートル、徒歩9分
※手稲、小樽方面行き(都市間高速バスを含む)全便が止まります

・ジェイ・アール北海道バス「桑8 桑園円山線」の「大通西22丁目」降車、すぐ目の前
※桑園駅-大通西22丁目-円山公園駅―啓明ターミナルを走っている路線です

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