サンケイスポーツが、プロ野球界を代表する投手で、北海道日本ハムファイターズのエース、ダルビッシュ有投手のメジャーリーグ挑戦を報じたことで、ファンが動揺したり反発したりしているようだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100928-00000000-sanspo-base
「ダル本人の口から聞くまでは納得できない」
「信じられない」
といった感想が出てくるのはじゅうぶん理解できるし、共感も抱くのだけど
「マスゴミの虚報」
みたいな罵詈雑言には、やれやれとため息が出る。
しかし、この底流には、記者の仕事に対する、そもそもの考えの違いが横たわっているんじゃないかという気が、だんだんしてきた。
「記者というのは、官公庁や会社や個人が発表した内容を、記事にする存在」
そう思いこんでいる人が多いんじゃないだろうか。
甘い。
もちろん、それも大事な仕事である。
しかし、記者の職業的な意識としては、発表される前に、どこよりも早く、書きたいのだ。
記者とは、他社より先に書いてナンボ、スクープしてナンボ、なのである。
読者は、よそで見聞きしたような古い記事なんて読みたくないし、少しでも新しい情報を読みたがっている…。
記者はそう信じている。
だからこそ、1日でも半日でも早く、情報をキャッチして記事にするべく、日夜駆け回っている。
まあ、そこは、相手あってのことだから、せっかくつかんだ情報でも
「いやー、3日後の記者会見まで待ってくださいよ」
と懇願されて、泣く泣く他社と「同着」ということもよくある。
(代表から直接聞いた話だから悪いけど今回は書かせてもらいますよ-ということもありうる)
ところが、この
「一刻でも早く」
というのを、どうやら読者はあまり重視していないようなのだ。
ちょっと話題をずらす。
今週の月曜日、新聞各紙は
「消費者金融大手の武富士が会社更生法を申請へ」
という記事を出した。
武富士は、会社更生法を申請した事実はない-と発表した。
「新聞はデマを書いた」
とツイッターでつづっていた人もいたが、翌日になると、タイミングがちょっと早かっただけで、話の内容は間違ってはいなかったことがはっきりした。
こんどのダルビッシュ投手の渡米話が、最終的にどう転ぶかは、まだわからない。
ただ、一般論でいえば、
・見ず知らずの人がいきなり相手の広報担当者に電話して得られた表向きの情報
と
・会社の社長や責任者と、以前から親しくしている記者が、こっそり得た情報
では、後者の方が早いに決まっている。
ちょっと冷静に考えれば、いきなり電話してきたどこのだれかもわからないような人に「実は…」なんて打ち明けないことぐらい、わかると思う。
また
「オレから聞いたってことは、書かないでくれよ」
という留保つきで耳打ちされる情報が少なくないことも、想像できるだろう(とくに政治面はその手の記事でいっぱいだ)。
だから、たとえば、月曜の段階で
「武富士は公式にこう発表している。新聞はうそつきだ」
と言ったところで、火曜日には、公式発表が新聞に追いついてしまうのであるし、
「球団の広報に電話したら選手の移籍はまだ決まってないと言われた。新聞はうそつきだ」
と言っても、そのうち球団広報が新聞記事を追認してしまう可能性もある。
繰り返すが、今回のダルビッシュ投手の話についていえば、今シーズンの日程が終わるまでは結論が公式に出ることはないだろう。それまでは、今回の記事の真偽に関しては、結論は出ない話なのだ。
また、普通の新聞よりもスポーツ新聞や週刊誌のほうが「飛ばし」は多いのかもしれない。
ただ、一般論でいえば、正式発表前にマスコミが事実を明らかにしてしまうことは、しょっちゅうあることなのだ。
だって、確かな話なのに、自分が書かなきゃ、よそに書かれちゃうかもしれないからね。
しかし、記者が「読者のために良かれ」と思って懸命に努力していることが、結果的に、読者の気持ちを逆なでしていることは、今後検討したほうがいいように思う。
そして、ネットを見ているうちに、公式発表のほうを、マスコミ報道よりも正しくてオフィシャルなものだと思ってしまう心性が育ってくることも否定できない。
へっぽこ三流記者のお前が分析するな、と言われそうだけど(苦笑)。
(この項、続くかもしれない。スクープが早すぎて事態が変わってしまうこととか、まだ書けてないこともあるし)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100928-00000000-sanspo-base
「ダル本人の口から聞くまでは納得できない」
「信じられない」
といった感想が出てくるのはじゅうぶん理解できるし、共感も抱くのだけど
「マスゴミの虚報」
みたいな罵詈雑言には、やれやれとため息が出る。
しかし、この底流には、記者の仕事に対する、そもそもの考えの違いが横たわっているんじゃないかという気が、だんだんしてきた。
「記者というのは、官公庁や会社や個人が発表した内容を、記事にする存在」
そう思いこんでいる人が多いんじゃないだろうか。
甘い。
もちろん、それも大事な仕事である。
しかし、記者の職業的な意識としては、発表される前に、どこよりも早く、書きたいのだ。
記者とは、他社より先に書いてナンボ、スクープしてナンボ、なのである。
読者は、よそで見聞きしたような古い記事なんて読みたくないし、少しでも新しい情報を読みたがっている…。
記者はそう信じている。
だからこそ、1日でも半日でも早く、情報をキャッチして記事にするべく、日夜駆け回っている。
まあ、そこは、相手あってのことだから、せっかくつかんだ情報でも
「いやー、3日後の記者会見まで待ってくださいよ」
と懇願されて、泣く泣く他社と「同着」ということもよくある。
(代表から直接聞いた話だから悪いけど今回は書かせてもらいますよ-ということもありうる)
ところが、この
「一刻でも早く」
というのを、どうやら読者はあまり重視していないようなのだ。
ちょっと話題をずらす。
今週の月曜日、新聞各紙は
「消費者金融大手の武富士が会社更生法を申請へ」
という記事を出した。
武富士は、会社更生法を申請した事実はない-と発表した。
「新聞はデマを書いた」
とツイッターでつづっていた人もいたが、翌日になると、タイミングがちょっと早かっただけで、話の内容は間違ってはいなかったことがはっきりした。
こんどのダルビッシュ投手の渡米話が、最終的にどう転ぶかは、まだわからない。
ただ、一般論でいえば、
・見ず知らずの人がいきなり相手の広報担当者に電話して得られた表向きの情報
と
・会社の社長や責任者と、以前から親しくしている記者が、こっそり得た情報
では、後者の方が早いに決まっている。
ちょっと冷静に考えれば、いきなり電話してきたどこのだれかもわからないような人に「実は…」なんて打ち明けないことぐらい、わかると思う。
また
「オレから聞いたってことは、書かないでくれよ」
という留保つきで耳打ちされる情報が少なくないことも、想像できるだろう(とくに政治面はその手の記事でいっぱいだ)。
だから、たとえば、月曜の段階で
「武富士は公式にこう発表している。新聞はうそつきだ」
と言ったところで、火曜日には、公式発表が新聞に追いついてしまうのであるし、
「球団の広報に電話したら選手の移籍はまだ決まってないと言われた。新聞はうそつきだ」
と言っても、そのうち球団広報が新聞記事を追認してしまう可能性もある。
繰り返すが、今回のダルビッシュ投手の話についていえば、今シーズンの日程が終わるまでは結論が公式に出ることはないだろう。それまでは、今回の記事の真偽に関しては、結論は出ない話なのだ。
また、普通の新聞よりもスポーツ新聞や週刊誌のほうが「飛ばし」は多いのかもしれない。
ただ、一般論でいえば、正式発表前にマスコミが事実を明らかにしてしまうことは、しょっちゅうあることなのだ。
だって、確かな話なのに、自分が書かなきゃ、よそに書かれちゃうかもしれないからね。
しかし、記者が「読者のために良かれ」と思って懸命に努力していることが、結果的に、読者の気持ちを逆なでしていることは、今後検討したほうがいいように思う。
そして、ネットを見ているうちに、公式発表のほうを、マスコミ報道よりも正しくてオフィシャルなものだと思ってしまう心性が育ってくることも否定できない。
へっぽこ三流記者のお前が分析するな、と言われそうだけど(苦笑)。
(この項、続くかもしれない。スクープが早すぎて事態が変わってしまうこととか、まだ書けてないこともあるし)
記者会見ねえ。世間の人は、あれで記者が取材して記事を書いてると思ってるんだろうからねえ。
編集しない生の素材を提供するのはいいことだとは思うけど、それだけで十分というのは、はっきりいって錯覚以外のなにものでもない。
見出し、そして、編集された記事がなければ、けっきょくのところ、情報にアクセスできなくなってしまう。
ただ、最近は、サッカーだけはやたら詳しいとか、そういう人が出てきて、スポーツ記者の取材ぶりが自分より劣っているように見えちゃうこともあるんだろうな。
いろんな側面があるので難しいのですが、ひとつ感じたのは「一般の方々は、いち早くスクープしようとする記者よりも、取材される側にシンパシーを抱いている。言いたいようにいわせてあげるべきで、またその言い分を勝手に編集せず生のまま聞きたいと思っている」ということでしょうか。
そして紙幅や時間枠の制限がないネットメディア登場により、それらに比べ紙面やテレビでは記者の手で言い分が編集されていることが明らかになった。その現状を非常に警戒し、嫌悪し「これだからマスゴミはよ」という唾棄につながっている気がします。