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■札幌のアーティスト50人展2024 vol.1 夏展「はこ」(8月12~25日、札幌)

2024年08月25日 10時22分43秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 おもしろかったです。単なる小品展じゃない。

 たぶん「はこ(箱、函、匣)」というテーマが、いつも絵画や彫刻を制作している人に
「あれ、じゃ、自分がいつも作っているのは何なんだろう」
と考えさせるきっかけになっているのではないかと思いました。

 たくさん画像があるので便宜上、2本にわけて紹介します。
 写真を載せていない作品にも、良いものがいくつもありましたので、ご了承ください。
 
 
 右は鈴木隆さん(十勝管内中札内村)「くすり箱」。
 小さな人のフィギュアを透明な袋に入れて、小さなガラス瓶に詰め
「倦怠感、厭世感、孤独感、無力感、脱力感、絶望感、厭世感、妄想癖、対人恐怖症、精力減退、のぼせ、不眠症」
に効果のある「人エキス100%」のサプリメントに仕立てたもの。
 まさに「人を食った作品」です。
 まさか本当に食べる人はいないでしょうが。

 中央は、力強い陶と土のオブジェで知られる下沢敏也さん(札幌)「Re-born」。
 作品の外縁と内側が反転したようなつくりです。

 同様の構造というか、発想で着手されたと推察されるのが、伊藤隆弘さん(空知管内長沼町)「想生(そうせい)」。

 右側は韮沢淳一さん(札幌)「デブリ」。
 いつ完了するともしれない(というか、まだ始めることすらできていない)、東京電力福島第1原発の事故処理を踏まえた、タイムリーな作品。
 「何かを得れば何かを失う」。作者の言葉が胸に響きます。
 
 
 左は藤井忠行さん(旭川)「散文のための小匣」。
 シンプルな木の彫刻。
 ふたが開く仕組みになっていて、中に硫酸銅の結晶を詰めたガラス瓶が収められています。とても美しい青です。

 右はKit_Aさん(札幌)「In The Box、または、AI は電気ブランの夢を見るか?」。
 この作者お得意のロードコーンのほか、ハードディスクを使った作品。
 「現在は物質としての記憶装置を意識する事すらほとんどない」
という作者の指摘が鋭いです。
 
 
 吉野隆幸さん(帯広)「神話・安心 安全 安定」。
 古いリンゴ箱を使ったインスタレーションを制作し続けているベテラン。
 てっぺんに、おもちゃの?紙幣を裏返しにして置いてあり、ストレートに裏金問題を皮肉っています。
 この紙幣の下に重ねられた紙片には、来場者が何か書くことができる、参加型の作品です。
 その下部にはトイレットペーパーが組み込まれ「安心 安全 安定」の文字が繰り返し書かれています。
 
 
 吉野さんのとなりには梅田マサノリさん(帯広)「水の記憶」。
 2015年に採取して封じ込めた水です。

 この近くには池田緑さん(帯広)「マスククッキー」、伽井丹彌 か い あけ み さん(帯広)「Vivid Red」もあり、十勝勢は相変わらず元気です。
 
 
 左から
谷口明志さん(札幌)「視覚い空間~見えない四角い箱~」
高橋博昭さん(岩見沢)「生存―2024」
白鳥洋一さん(札幌)「The Box」

 谷口さんは以前から平面と立体を往還するような独特の「絵画」を展開してきました。
 今回は片目で見たり、両目で見たりすると、変化して見えるかもしれません。
 

 上はミクニキョウコさん(札幌)「Ciel」。
 フランス語で「天」「空」の意。

 下は前田育子さん(胆振管内白老町)「葉コ」。
 「コ」は方言の接尾辞。北海道では、東北地方ほどは「●●コ」とはいいませんが…。
 最初は箱のように真四角でしたが、だんだんめくれてきたとのことでした。

 後半に続きます。


2024年8月12日(月)~25日(日)午前11時~午後6時(初日は~5時、最終日~4時)
Retara SPACE(札幌市中央区北1西28 MOMA Place 3階)
※sabita cafe の上。白い建物です



・地下鉄東西線「円山公園駅」2番出口、円山公園駅バスターミナルから、約420メートル、徒歩6分
・地下鉄東西線「西28丁目駅」3番出口から約510メートル、徒歩7分

・中央バス、ジェイ・アール北海道バス「円山第一鳥居」から約690メートル、徒歩9分

(この項続く) 


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