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■江川博展 (2013年9月16~21日、札幌)

2013年10月10日 23時38分22秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 江川博さんは1937年、夕張生まれ。札幌在住の画家です。
 詳しい略歴は、昨年の個展告知記事をご覧いただきたいのですが、この10年余りは、グループ展には出品していたものの、個展は、隔年の東京での開催を軸としており、札幌では昨年の開催が久しぶりでした。
 今回は、作品という題の大小25点が展示されていました。




 江川さんの画風を語るとき、

「図」と「地」の関係を問い直す抽象絵画

という説明が、よくなされてきたと思います。
 「図」と「地」とは、人間が視覚でものを認知するさいの基本的な枠組みといえますが、江川さんの絵の多くは、黒と赤などわずか2色で構成されており、黒いバックに赤い模様が描かれているのか、それとも、赤い地に黒の模様が描かれているのかが、ずっと見ているうちにだんだんわからなくなってくるのです。

 それは、副次的な効果というよりは、わたしたちの認識の根底をゆさぶる可能性を秘めているともいえそうです。



 筆者が江川さんの絵画をまとめて見たのは、じつに9年ぶりです。
 その間に、「地」と「図」というよりもむしろ、書道の墨象ぼくしょうや前衛書のような地点に近づいてきたなあ、というのが筆者の受けた感じです。
 それと関係あるかどうかわかりませんが、会場の入り口には、書家の三上雅倫さんの「無限」という小品が展示されていました。「書家にはいっぱい友だちがいるからね」と、江川さんは笑います。

 「書」と「絵」の違いはそもそもなにか、ということを考えだすと話がむつかしくなるので、それは別の機会に譲るとして、江川さんの絵に「書」を感じるのは、以前の作品が、面と面とのせめぎ合いという性質を強く漂わせていたのに、今回は「線」が前面に出てきたように見えるという対比もさることながら、書の特徴である「即興性」が、江川さんの作品にも強くあらわれているからではないでしょうか。
 これらの作品のエスキースは、緻密な計算によるものではなく、まさに即興的にかかれたものだということです。
「計算されたものしか出てこないより、中からわき出るものを大事にしたい」
という意味のことを、江川さんは話しておられました。
「動感を持ちつつ、(例えば、上の画像の左側の作品では)右上の部分が不要かもしれないとか、できるだけ道具立ては少なくしていきたい」
 意欲的に「次」を考えている江川さん。地元の人にも見てもらいたくて、と、来年の同時期も札幌時計台ギャラリーで個展を開くそうです。


2013年9月16日(月)~21日(土)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)

【告知】江川博展 (2011)
江川博さんが朝日新聞に毎週登場(2006年)
札幌の美術 2004・20人の試み 展
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