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小野州一展 -線描のコロリスト-(3月5日まで)

2006年01月16日 15時12分09秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 或る年の冬、富良野の小野州一さんのアトリエにおじゃましたことがある。
 山小屋風のとてもすてきなアトリエだった。晩年の「窓辺の静物」に出てくるような、大きな格子窓があり、窓の外には冬らしい、葉を落とした木々がどこまでも続いていた。林の向こうは劇作家の倉本聰氏の家だということだった。
 いちばんおどろいたのは、道路からアトリエまでは数十メートルあるのだが、車が楽に通れるようにきれいに除雪がなされており、これをすべてご自身と奥様がなさったということだった。人ひとり歩ける幅の雪かきでさえ面倒で大変なのに、完璧な作業である。さっさっとすばやく線をかく画風ともまったく正反対の除雪ぶりだった。

 ところで、小野さんといえば、さっさっと画面にすばやくおどる線である。
 もちろん輪郭線ではない。かといって、陰影を忠実に表現している線ともいえない。
 若いころ、アンフォルメルから出発した小野さんにとって、描写のために線をひくということは、一種の先祖がえりというか、後退に感じられたのではないだろうか。あの線は、なにかを描いているのではなく、画面にリズムを生み出すための線、いわば、線のための線なのだ。
 もちろん、でたらめにひかれているのではないことは、会場にあったスケッチは、きちんと対象の風景などを写生していることでもわかる。いったん形態を把握した後で、ひかれている線なのだ。
 後記の静物画の多くでは、ふつうの静物画では画面の中央に置かれるポットやシャンプーといったモティーフが、画面の下側に寄せられ、上半分には広い空間があいている。その空間を満たすのも、リズミカルな線である。これは、壁の色を塗るのが面倒くさいなどということではもちろんなくて、空間そのものを表現しているというべきだろう。
 晩年の、富良野や美瑛を描いた風景画でも、畑の畝のように見える線は、畝を説明するのではなく、画面空間をつくっているために縦横斜めに走っているのだと思う。

 もうひとつ、この線がうみだす効果について感じたことは、線の働きで、作品がドローイングっぽくなっているということ。
 ペインティングをドローイングの上位に置くのは旧来の価値観であって、現代の美術の中で、ドローイング的な試みが、袋小路に陥りつつあるペインティングを活性化させる役割を持っていることは、たしかにあると思う。

 2005年11月12日-06年3月5日(1月9日は開館し、翌10日休む)
 道立旭川美術館(旭川市常磐公園内)
 一般950円(常設展との共通券1000円)


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4 コメント

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やっと取り上げてくれた! (coltsfoot)
2006-01-20 11:15:27
いつ登場するかと昨秋より待ちわびていました。この展覧会の話を知ってから丁度1年たちました。沢山の方々に観て欲しいといちファンとして願っています。

そっくりそのまま札幌でもとは決して欲張りじゃないと思うのですが・・・。今はきっと奥様と素敵なご近所さんが雪かきしているにちがいありませんよ。
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2006-01-20 15:11:57
 cotsfootさん、はじめまして。

 開催期間が長いので、札幌などの人にも見てほしいですよね。旭川の人だけでは、もったいない。

 いまは、ものすごーい寒さが満喫できますし(笑い)。

 札幌でも小野さんの展覧会、やっているようですよ。(ファクトリーのレンガ館ギャラリー梅鳳堂)。

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あれは忘れもしない・・・ (coltsfoot=ふきたんぽぽ)
2006-01-20 18:26:38
丁度1年前の休日。旭川から車で帰札するのに11時間半かかったのです。奈井江あたりで渋滞&全く進まなくなって4・5時間。ガス欠が不安だったけれど、旭川出発する時に満タンにしたのがラッキーでした。そういう経験をしてしまったので、小野さんのいちファンとしては開催時期を変えて欲しかったのと札幌でも開いて欲しいわけです。もの凄ーい寒さの中かわいいペンギンの散歩見て、美術館でぬくぬくと素晴らしい作品鑑賞もステキと思うのですが・・・。 
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冬場は (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2006-01-23 13:10:05
 足が大変ですよねー。

 最近はJRもアテにならんし。高速バスはたくさん出ていて便利ですが、冬は高速道路がストップしやすいし。



 現実問題として札幌の美術館での個展はなかなかハードルが高いと思われるので、札幌のみなさんは旭川に行きましょう。

 常設展も見ましょう(笑)。

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