ほぼ毎年、この時季に個展をひらいている札幌の銅版画家、金沢さん(道展会員)。
昨年にひきつづき、本職の版画と、中学生に教えているうちに夢中になったという粘土の操り人形の2本立てです。
金沢さん夫妻はこのほどトルコを旅行してきたとのこと。版画にも人形にも、旅の思い出が刻印されているものがあります。
たとえば、版画なら「9000年旅行」。冒頭画像の右側です。
紀元前9000年という古い遺跡を発掘しているところへ旅したそうです。
「ほんとは1万1000年旅行なんだろうけど、語呂が悪いので」
「イスタンブールのダンサー」は、金沢さんの作品としては、いつになくリアルでなまめかしいタッチです。
人形では、「ベリーダンサー」もそうですが、トロイを題材にした一連の作品もあります。
もっとも、金沢さんが訪れた際は、トロイの木馬は補修中で幕が掛けられていたそうです。
(なお、この木馬は、観光用に後生になって作られたものです。5000年も前のものがあるわけないでしょ)
人形でおもしろいのは「ペルセウス」。
彼が手に持っているのは、あまりの恐ろしさにひと目見た者は石と化してしまう蛇女ゴーゴンの首なのですが、ゴーゴンの首が赤く光るのです。会場の金沢さんにたのめば、操作してくれるかもしれません。
「人形は、だいたい作りたいものを作ったし、これで終わりかな」
と金沢さん。
それにしても、いつも書いていますが、金沢さんの版画はどこかなつかしく、見ているとほのぼのとした気分になります。
ヤギが、女の子の待つログハウスに帰る夜、空には雲が浮かぶ情景を描いた「我家」、
子どもたちを背中に乗せた2匹の象と1匹の獣が歩き、その上空を、木を乗せた雲や家々を乗せたくもが通り過ぎる「星空の散歩」、
北海道らしい畑の広がる一帯を牛車のようなもので旅する人々と、防風林の上を空飛ぶじゅうたんで行き過ぎる人がいるようすを描写した「冬の夜明け」など…。
とくに、旅の途上を描いた作品に、筆者の心はひかれるのです。
出品作は次の通り。
▼版画
天狗
アナトリアを駆ける
我家
カッパドキアで踊る女たち
飢えた荒野(同題2点)
カッパずもう
冬の夜明け
鹿踊り
高気圧
花園
Snow man
絵を描く人
道草
室内楽
ウーム
9000年旅行
アイランド
お手伝い
海、山、人
いつか見た風
風にのって
星空の散歩
人形哀歌
イスタンブールのダンサー
▼人形
ミノタウロス
摩利支天
トロイの王子ヘクトール
トロイのアイネイアース
トロイの王女カッサンドラ
トロイのヘレン
ペルセウス
アマゾンの女王 ペンテシレイア
シェラザードの舞姫
クラナッハのヴィーナス
ベリーダンサー
07年9月6日(木)-11日(火)10:00-18:00(最終日-17:00)
大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A)
■06年の個展
■03年9月の個展
■03年1月の個展(画像なし)
■02年の個展