渡会純价(渡會純价と表記する場合もあり)さんは札幌在住のベテラン版画家です。
ただし、今回の個展では、版画の出品は1点もありません。
「るみえる」と名づけた技法による1点ものの出品ばかりです。
これは、透明なフィルムにジェソ(下地剤)を塗り、それをニードルなどでひっかいて線を表現するとともに、着彩を施して制作したもの。支持体が透明なので、裏からも色がぬれます。線には、ちょっとかすれたような微妙な味わいがあります。
冒頭の画像は、チャイコフスキーの小品集「四季」に題材を得た12点組み。
これらの作品の映像は、ことし4月に、ロシアのサンクトペテルブルクにある有名なエルミタージュ美術館内の劇場で開かれた日ロ友好フェスで「四季」が演奏された際、楽団のバックに投影されたのだそうです。
1月の「炉ばたで」は、暖炉やネコ、扉などが描かれた、ほんわかとあたたかな図柄。
2月「謝肉祭」は、どこかマティスの「ダンス」を想起させる人物というか人形が暖色を背景に踊っていますが、決して真似ではなく、渡會さんらしいオリジナリティが感じられます。
以下、
3月「ひばりの歌」
4月「松雪草」
5月「五月の夜(白夜)」
6月「舟歌」
7月「刈り入れの歌」
8月「とり入れ」
9月「狩りの歌」
10月「秋の歌」
11月「トロイカ」
12月「クリスマス」
とつづきます。
キリル文字やトロイカなど、ロシアっぽいムード満点です。
考えてみれば、度会さんの作品は以前から音楽のような軽快なリズム感が特徴。
音楽を題材にしたのは、ぴったりだといえそうです。
まあ、筆者は「四季」といえばヴィヴァルディしか知らないので偉そうなことは言えませんけど。
こちらは「Rapsodie」の連作。
「Rapsodie(R)」「Rapsodie(A)」から「Rapsodie(E)」まで順に8点が並んでおり、いずれも横に長いのが特徴です。
フランス語の文字が大胆に導入され、カラー写真の断片があちこちにはり付けられています。
よく見ると、渡会さんご自身の写真もあります。
といって、前衛に走るというよりは、きちっとした作品に仕上げているという感じがしました。
渡会さんの作品は、複数のモティーフを並列に配置するのが特徴で、それらのモティーフが同一の空間で相互に絡み合ったり、透視図法的な空間の中に配置されることはめったにありません。一見、軽やかに見えながら、じつは20世紀の絵画の変革をへた後の作画であることがわかります。
こちらは、楽器をメーンに据えた「音映え」シリーズ。
(Z)(R)(V)(S)(C)(B)(H)(T)(A)(D)(M)があり、ピアノやトランペット、バイオリンなどが描かれています。
カッティングシートによる色面がところどころに置かれて、シャープな線と面が、ひっかいた線とのちがいを際だたせています。
2008年11月19日(水)-27日(木)10:00-18:00(最終日-16:00)
茶廊法邑(東区本町1の1)
■渡会純价展 my landscape (2007年)
■札幌・駅前通りの宝石店のシャッターに絵を描く(07年)
■06年のグループ展「第12回夏まつり『風』展」(画像なし、以下同様)
■03年のグループ展「祭りFEST」
■03年の個展
■01年10月の個展
■01年6月の個展
・地下鉄東豊線「環状通東」2番出口から徒歩7分
(中央分離帯のある片側3車線の道路=環状通=を渡り、吉野屋・紳士服のAOKI方面へ行き、最初の信号を右折、つぎの角=寺の門の前=を左折して直進。途中、ボタン式信号有り)
・中央バス「本町2条1丁目」から5分