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■川口巧海個展 ダイダロスの揺り籠で (2017年3月29日~4月10日、札幌)

2017年04月10日 17時08分55秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
(画像を追加しました)

 川口巧海さんは、いまの札幌の若手美術家で最も精力的に制作・発表をしている一人。
 銅版画がメインですが、近年ではオブジェやコラージュも作っています。
 今回はさらに、アクリル絵の具による絵画や、木口 こ ぐち木版、カーボランダムといった技法の版画作品も発表し、ひきだしの多さをあらためて実感します。

 ちなみにダイダロスは、ギリシャ神話の登場人物。
 人工の翼で空を飛んで、太陽に近づきすぎたため墜落したイカロスの父親で、彼のつけていたろうの翼を作ったとされています。また、クレタでミノタウルスを閉じ込めるための迷宮を造営したともいわれているそうです。

 このうち「天球を眺む」などのコラージュは、元の図版をカラーコピーしたものを裏返しにしてキャンバスに転写しているそう。「古びた風合いになるかなと思って」と川口さん。
 周囲の黒いのは、転写してから塗っています。

 教科書の黄金分割の図のような見事な構成を見せるのが「ダイダロスの揺り籃で」などのオブジェ。
 オウム貝の貝殻は、のみの市などでさがしてくるそうです。
 他の作品で貼られているモノトーンの絵は自作の版画のようです。

 アクリル絵画は、メディウムを使って凹凸をつけています。
 ジャズピアニスト、ビル・エヴァンスのアルバムジャケットをほうふつとさせる「Undercurrent」は、水上で眠るように横たわる女性像が、いかにも川口さんの世界っぽいです。


 筆者はかつて、現代の社会との接点を持たないアートは見る気がしないという意味のことを書いたことがあります。
 そういう観点からすると、川口さんの作品は一見、アートとは呼べないと思われる向きがあるかもしれません。しかし、それは表層的な見方にすぎません。
 彼は銅版画家として、長谷川潔や駒井哲郎といった系譜に連なっているということができますし、その美的志向については、稲垣足穂や澁澤龍彦らの耽美的な世界を引き継いでいます。つまり、あやふやに揺れ動く現代世界からは一線を画し孤高の美の世界を守る―という点では、いささか逆説的ではありますが、現代の社会に対してたしかな意思表示をしているといえるのではないでしょうか。
(じつは、断固として孤高の耽美派であろうとすることは、それはそれで大変なことなんですよ。まあ、筆者の勝手な思い込みかもしれませんが)



2017年3月29日(水)~4月10日(月)午後1時~10時30分、火休み
ギャラリー犬養(札幌市豊平区豊平3の1)


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・地下鉄東西線「菊水駅」から約700メートル、徒歩9分
・中央バス「豊平橋」から約180メートル、徒歩3分

・地下鉄東豊線「学園前駅」から約1キロ、徒歩13分


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