帯広の現代美術家、池田さんの、1990年代から現在までの作品を展示するかなり大がかりな個展。
たびたび渡米しニューヨークで研修・制作に取りかかる一方で、首都圏などでの発表も多い。
東洲館の2室やロビーに加え、ふだんは子どもや市民サークルの作品を並べている壁面もすべて開放するのは、初めてのことらしい。
奥の部屋が、時系列的にはいちばん古い「アリス」シリーズと、印字テープを使ったインスタレーションを展示。
真ん中の部屋にマスクのシリーズを並べ、手前の市民ギャラリーの壁面に、マスクシリーズの最新写真作品を陳列するという構成になっている。
映像(ビデオ)も含め、この10年余りの彼女の作品の多くを見ることができる。
2006年の「大地の芸術祭 越後妻有(つまり)アートトリエンナーレ」の出品作も、印字テープを追加し、さらに専用台をつけて、道内では初の展示となっている(越後では、玄関の羽目板の上に設置されていた)。
これだけの規模の個展は今後予定がないという。
作品画像が多いので、2回にわけて紹介する。
まず、マスクを用いた作品のシリーズから。
上の画像が、屋外に取り付けた後で回収した医療用マスク700個をひとつずつ円筒形の容器に入れてならべた作品の全体像。
冒頭画像が、その右端の部分である。
左端から右に行くにつれて、屋外に出していた期間が長くなる。左は7カ月、右は6年という。
マスクプロジェクト「Silent Breath」は、ここで示したようなマスクそのものの提示のほか、マスクの写真およびそれをもとにした版画(コラグラフ)、さらに、マスクを各地で取り付けていくパフォーマンスや、それを記録した映像(写真、動画)など、さまざまな展開がある。
しかし、基本は単純。
屋外にマスクを取り付ける。
長い時間屋外にあったものは、かなり汚れ、金具がさびる。
その汚れは、地球の汚れの暗喩である。
カラー写真24枚はインクジェットプリント。
このほか、木の幹に取り付けたマスクの写真などが6枚と、コロタイプ版画作品が8枚。
マスクを7カ月ないし46カ月間、十勝管内新得町サホロのダム湖畔の森に取り付けた際の写真(スクリーンプリント)。
春夏秋冬の4点がロビーに展示されている。
池田さんはこの長期プロジェクトに取り組むに当たり、開発局側の許可を取り付けている。
クリストの例をひくまでもなく、現代美術はギャラリーや美術館を出て街頭などで発表されることが多いわけで、当局との折衝も重要なプロセスになってくる。
これが最新作の写真。
英国、スイス、中国、東京など、あちこちの街頭でマスクをひっかけては(これはゲリラ的にやっていると思うが)、デジタルカメラで撮影していく池田さん。
ぜんぶで80点が5枚の紙にプリントされている。
この壁の反対側には、リバーサルフィルムで撮影して大きく引きのばしたプリント7点の新作写真も展示されている。
やはり題材は、世界各国のマスクである。
鳥インフルエンザ発生を伝えるニュースで、マスクをつけた人が登場する映像を見るようになったのは、池田さんがこのプロジェクトを始めた後のことである。
現実が、アートを追いかけている。
(この項続く)
08年6月17日(火)-29日(日)10:00-18:00、月曜休み
アートホール東州館(深川市1条9、深川駅前)・うなかがめーゆの美術館(深川市9条17-44)
□池田さんのサイト http://www.ima.me-h.ne.jp/~ikeda.midori/
□「てんぴょう」にヤナイが書いたテキスト http://www33.ocn.ne.jp/~artv_tenpyo/tenpyo/sakka/agyou/ikeda.html
■田園都市のコンテンポラリーアート 雪と風の器(08年3月)
■越後妻有(つまり)アートトリエンナーレ(06年)
■十勝千年の森=水脈の森・万象の微風 自然=人間=大地(03年10月8日の項)
■十勝の新時代 池田緑展(02年、道立帯広美術館)
■池田緑展アーティストトーク(同上)
■とかち環境アート(02年)
たびたび渡米しニューヨークで研修・制作に取りかかる一方で、首都圏などでの発表も多い。
東洲館の2室やロビーに加え、ふだんは子どもや市民サークルの作品を並べている壁面もすべて開放するのは、初めてのことらしい。
奥の部屋が、時系列的にはいちばん古い「アリス」シリーズと、印字テープを使ったインスタレーションを展示。
真ん中の部屋にマスクのシリーズを並べ、手前の市民ギャラリーの壁面に、マスクシリーズの最新写真作品を陳列するという構成になっている。
映像(ビデオ)も含め、この10年余りの彼女の作品の多くを見ることができる。
2006年の「大地の芸術祭 越後妻有(つまり)アートトリエンナーレ」の出品作も、印字テープを追加し、さらに専用台をつけて、道内では初の展示となっている(越後では、玄関の羽目板の上に設置されていた)。
これだけの規模の個展は今後予定がないという。
作品画像が多いので、2回にわけて紹介する。
まず、マスクを用いた作品のシリーズから。
上の画像が、屋外に取り付けた後で回収した医療用マスク700個をひとつずつ円筒形の容器に入れてならべた作品の全体像。
冒頭画像が、その右端の部分である。
左端から右に行くにつれて、屋外に出していた期間が長くなる。左は7カ月、右は6年という。
マスクプロジェクト「Silent Breath」は、ここで示したようなマスクそのものの提示のほか、マスクの写真およびそれをもとにした版画(コラグラフ)、さらに、マスクを各地で取り付けていくパフォーマンスや、それを記録した映像(写真、動画)など、さまざまな展開がある。
しかし、基本は単純。
屋外にマスクを取り付ける。
長い時間屋外にあったものは、かなり汚れ、金具がさびる。
その汚れは、地球の汚れの暗喩である。
カラー写真24枚はインクジェットプリント。
このほか、木の幹に取り付けたマスクの写真などが6枚と、コロタイプ版画作品が8枚。
マスクを7カ月ないし46カ月間、十勝管内新得町サホロのダム湖畔の森に取り付けた際の写真(スクリーンプリント)。
春夏秋冬の4点がロビーに展示されている。
池田さんはこの長期プロジェクトに取り組むに当たり、開発局側の許可を取り付けている。
クリストの例をひくまでもなく、現代美術はギャラリーや美術館を出て街頭などで発表されることが多いわけで、当局との折衝も重要なプロセスになってくる。
これが最新作の写真。
英国、スイス、中国、東京など、あちこちの街頭でマスクをひっかけては(これはゲリラ的にやっていると思うが)、デジタルカメラで撮影していく池田さん。
ぜんぶで80点が5枚の紙にプリントされている。
この壁の反対側には、リバーサルフィルムで撮影して大きく引きのばしたプリント7点の新作写真も展示されている。
やはり題材は、世界各国のマスクである。
鳥インフルエンザ発生を伝えるニュースで、マスクをつけた人が登場する映像を見るようになったのは、池田さんがこのプロジェクトを始めた後のことである。
現実が、アートを追いかけている。
(この項続く)
08年6月17日(火)-29日(日)10:00-18:00、月曜休み
アートホール東州館(深川市1条9、深川駅前)・うなかがめーゆの美術館(深川市9条17-44)
□池田さんのサイト http://www.ima.me-h.ne.jp/~ikeda.midori/
□「てんぴょう」にヤナイが書いたテキスト http://www33.ocn.ne.jp/~artv_tenpyo/tenpyo/sakka/agyou/ikeda.html
■田園都市のコンテンポラリーアート 雪と風の器(08年3月)
■越後妻有(つまり)アートトリエンナーレ(06年)
■十勝千年の森=水脈の森・万象の微風 自然=人間=大地(03年10月8日の項)
■十勝の新時代 池田緑展(02年、道立帯広美術館)
■池田緑展アーティストトーク(同上)
■とかち環境アート(02年)