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■池田緑 1993-2008現代美術展 (6月29日まで)

2008年06月20日 21時35分15秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 帯広の現代美術家、池田さんの、1990年代から現在までの作品を展示するかなり大がかりな個展。
 たびたび渡米しニューヨークで研修・制作に取りかかる一方で、首都圏などでの発表も多い。

 東洲館の2室やロビーに加え、ふだんは子どもや市民サークルの作品を並べている壁面もすべて開放するのは、初めてのことらしい。

 奥の部屋が、時系列的にはいちばん古い「アリス」シリーズと、印字テープを使ったインスタレーションを展示。
 真ん中の部屋にマスクのシリーズを並べ、手前の市民ギャラリーの壁面に、マスクシリーズの最新写真作品を陳列するという構成になっている。

 映像(ビデオ)も含め、この10年余りの彼女の作品の多くを見ることができる。
 2006年の「大地の芸術祭 越後妻有(つまり)アートトリエンナーレ」の出品作も、印字テープを追加し、さらに専用台をつけて、道内では初の展示となっている(越後では、玄関の羽目板の上に設置されていた)。
 これだけの規模の個展は今後予定がないという。
 作品画像が多いので、2回にわけて紹介する。

 まず、マスクを用いた作品のシリーズから。




 上の画像が、屋外に取り付けた後で回収した医療用マスク700個をひとつずつ円筒形の容器に入れてならべた作品の全体像。
 冒頭画像が、その右端の部分である。
 左端から右に行くにつれて、屋外に出していた期間が長くなる。左は7カ月、右は6年という。

 マスクプロジェクト「Silent Breath」は、ここで示したようなマスクそのものの提示のほか、マスクの写真およびそれをもとにした版画(コラグラフ)、さらに、マスクを各地で取り付けていくパフォーマンスや、それを記録した映像(写真、動画)など、さまざまな展開がある。

 しかし、基本は単純。
 屋外にマスクを取り付ける。
 長い時間屋外にあったものは、かなり汚れ、金具がさびる。

 その汚れは、地球の汚れの暗喩である。




 カラー写真24枚はインクジェットプリント。
 このほか、木の幹に取り付けたマスクの写真などが6枚と、コロタイプ版画作品が8枚。


           

 マスクを7カ月ないし46カ月間、十勝管内新得町サホロのダム湖畔の森に取り付けた際の写真(スクリーンプリント)。
 春夏秋冬の4点がロビーに展示されている。

 池田さんはこの長期プロジェクトに取り組むに当たり、開発局側の許可を取り付けている。
 クリストの例をひくまでもなく、現代美術はギャラリーや美術館を出て街頭などで発表されることが多いわけで、当局との折衝も重要なプロセスになってくる。




 これが最新作の写真。
 英国、スイス、中国、東京など、あちこちの街頭でマスクをひっかけては(これはゲリラ的にやっていると思うが)、デジタルカメラで撮影していく池田さん。
 ぜんぶで80点が5枚の紙にプリントされている。


           

 この壁の反対側には、リバーサルフィルムで撮影して大きく引きのばしたプリント7点の新作写真も展示されている。
 やはり題材は、世界各国のマスクである。

 鳥インフルエンザ発生を伝えるニュースで、マスクをつけた人が登場する映像を見るようになったのは、池田さんがこのプロジェクトを始めた後のことである。
 現実が、アートを追いかけている。

この項続く


08年6月17日(火)-29日(日)10:00-18:00、月曜休み
アートホール東州館(深川市1条9、深川駅前)・うなかがめーゆの美術館(深川市9条17-44)

□池田さんのサイト http://www.ima.me-h.ne.jp/~ikeda.midori/

□「てんぴょう」にヤナイが書いたテキスト http://www33.ocn.ne.jp/~artv_tenpyo/tenpyo/sakka/agyou/ikeda.html

田園都市のコンテンポラリーアート 雪と風の器(08年3月)
越後妻有(つまり)アートトリエンナーレ(06年)
十勝千年の森=水脈の森・万象の微風 自然=人間=大地(03年10月8日の項)
十勝の新時代 池田緑展(02年、道立帯広美術館)
池田緑展アーティストトーク(同上)
とかち環境アート(02年)


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