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和田盗作問題のその後

2006年06月06日 10時54分43秒 | 新聞などのニュースから
 和田義彦氏の盗作問題については、5日夕刊各紙やテレビなどで報道されたとおり、芸術選奨の授賞が取り消されることになりました。

(以下引用) 今春の芸術選奨文部科学大臣賞に選ばれた洋画家和田義彦氏(66)の作品がイタリア人画家アルベルト・スギ氏(77)の絵画に酷似していた問題で、文部科学省は5日、文化庁の芸術選奨美術部門・臨時選考審査会の「和田氏の作品は盗作と認めざるを得ない」という判断を受け、授賞取り消しを決めた。芸術選奨が創設されて以来初めて。
 (中略)和田氏は5日までに「不名誉を受ける前に」という理由で賞の返上を文化庁に申し出たが、同庁は受理しなかった。(引用終わり。北海道新聞5日夕刊)

 選考審査員の1人として報道陣に答えていた酒井忠康さん(世田谷美術館長)は、後志管内余市町の出身です。
 ほんとうは、和田氏を推したといわれる瀧悌三氏が受け答えの場に出てくるのが筋ではないかという気もします。元マスコミなんだから、そのへんのことはわかっているはずだけどなあ。

 上記の道新の記事には、関連記事として、和田氏の経歴などにあらためて触れています。

(以下引用)和田氏は東京芸大大学院を修了後、1971年にイタリア留学。翌年、ローマ国立中央修復学校に入学し、77年の帰国まで模写に打ち込んだ。
 「当時、スペインのプラド美術館で和田さんが模写しているのを偶然見かけた。すごい技量だった」と大学の同期生。滞在中の日本人の間でうわさになるほどの力量だったという。(引用終わり)

 なんだか、その力量をあらぬ方向に使っちゃったんだなあという気がしますが。

 ところで、5日朝刊の読売新聞1面には、和田氏が盗作を事実上認めたというスクープが出ています。

(引用)読売新聞は4日までに、電話や面会で、和田氏から今回の疑惑について話を聞いた。その中で、自らの創作方法について、「構図を借り、私なりのものを加えているのが自分の手法。海外で勉強した画家でないと、このような微妙なニュアンスは分からない」と主張したものの、構図を借りることについてスギ氏の了解が十分ではなかったことを認め、「社会通念上、盗作と言われても仕方ない」などと述べた。(引用終わり)

 社会面には、和田氏との一問一答なども掲載しています。
 読売は6日朝刊文化面にも、芸術選奨の選び方などについて詳しい検証記事を載せています。
 この問題に関心のある人なら、130円出して買って読んでも損はありません。
 今回の騒動では初動で出遅れた感のある読売ですが、さすが底力を見せました。

 なお、話の本筋とは関係ないことですが、以上で引用したり言及した記事の多くは、ネット上にはアップされていません。
 やはり一歩突っ込んで物事を知ろうとすれば、実際の新聞にかなわないと思います。

 さて、6日朝刊に話を戻すと、毎日には、和田氏が描いた綿貫民輔前議長の肖像画が衆院内に掲げられているという記事が出ていて、笑ってしまいました。

 また、2日のエントリでほのめかしていた和田氏のセクハラ問題ですが、朝日につぎのような記事が出ました。

(以下引用)洋画家の和田義彦氏(66)が名古屋芸術大学(愛知県北名古屋市)に教授として在職していた02年当時、入試の面接をした女子受験生に対し、自分に連絡を取るように伝え、「入試の公平性を揺るがす重大な問題」として、大学の調査委員会に取り上げられ、依願退職していたことが分かった。
 和田氏は80年に同大の絵画科の助教授で採用され、86年に教授に就任した。
 大学の説明によると、02年2月の入試の際、女子受験生の1人が面接終了後、和田氏から連絡するように電話番号を書いたメモを渡されたとの情報が、受験生が通う塾から寄せられた。このため大学は同年3月、調査委員会を設置した。
 調査委に対し、和田氏は事実関係を認めたという。大学側は退職を勧め、和田氏も「一身上の理由」で02年6月8日付で退職願を提出、7月31日付で退職したという。 (引用終わり)

 (この記事は、朝刊配達後にネットにアップされたみたいです)
 学生に手を出すのもとんでもないですが、面接した段階で声をかけるなんて、やること早すぎです。

 以上、5日と6日の報道からピックアップしてみました。


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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
模写について (川上)
2006-06-07 02:01:30
絵画の修復模写については、海外の大学では重要な科目であるとの記事を読んだことがあります。

模写は非常に勉強になり、技法、絵の具の合わせ方、その年代の麻布、ワニス、顔料の大きさなど非常に科学的なカリキュラムのようです。

私が20歳頃、教育大特美の専攻科でレンブラントの模写を取り入れたと言うような記憶があります。こちらの方は単に美術館に本物が無いから写真を元にしたようですが、海外の美術館では時々学生がイーゼルを立てて模写に励んでいますね。



多分和田氏も模写は作品理解のための科目の一環として選択もしくは勧められたものと思います。



今回の問題とは別だと思いますが。留学時の真剣味は伝わります。



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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2006-06-07 23:47:18
 川上さんどうもです。

 スギさんが、和田氏を、画家ではなく、模写する人だとばかり思っていたというのもわかります。



 それにしても、さいきんのアクセスの多さからみて、このエントリにはコメントがたくさんつくんじゃないかと予想してたんですが、はずれました。

 さりげなく、燃料を少し投下してあったんですけどね。

 まあ、いいんですけど。
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助さん (川上)
2006-06-08 00:55:42
印籠じゃあ。(燃料入り?)
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ある種の共通する精神病理なのか (T,nakamura)
2006-06-08 22:57:02
今回の和田さんの盗作は絵画制作における「姉歯物件」でないのかとおもってみる。



耐震構造計算の基準値をごまかして、さも、基準をクリアしているように見せる手法を和田さんは人生のある時点で身につけてしまった。その手法を捨てることが出来なくなって、ずるずると、それを通してしまった。気がついたときには「良心の声」は消えうせてしまっている。あとは誰かが気がついてそれは「偽装」だと告発されるまで息をころして待っているさみしいすがたがうかぶ。



奇妙というか、不可思議な、不可解な精神病理の一現象であるとおもう。



このようなタイプの精神病理のメカニズムは何時ごろから日本人の精神構造に棲みつくようになったのであろう。きがついてみたら、自分を含めて、それに近い精神構造に慣れ親しんでいるではないか。



時期的に重なる、姉歯さんたちと。総研の内河さんたちと。木村建設の木村さんたちと。



「悪魔」が耳もとで囁いたとしか、思えないのだが。君の持っている「たましい」を買い取りますぜと。「たましい」を失えば、それは人間の「かたち」はしていても、別の存在に変わってしまうことではないか。



この「悪魔」、一体、どんな姿をしてあらわれるのか。興味がある。
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燃料とは (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2006-06-09 21:15:10
>川上さん

「実際の新聞にかなわないと思います」のくだりです。

新聞記者がこう書くと手前味噌っぽいですが、でも、ほんとにそうだと思ってはいます。



>T.nakamuraさん

おひさしぶりです。

まあ、絵が姉歯物件でも、べつに命に別状はないわけですが。
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Unknown (Unknown)
2009-08-12 00:09:51
セクハラに盗作か、人間の屑だな
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