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■那須秀至展 ―息遣いする絵― (2016年11月16~28日、札幌)

2016年11月24日 22時39分37秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 「nasu hide」の名で、ドイツ・フランクフルトを拠点に活動している那須秀至さんの、道内初個展。

 平面作品は、和紙や蜜蝋で制作されている。筆ではなく、アイロンを使っているのがユニークだ。
 多くの場合、単独ではなく、二つないし三つの矩形を横にならべて
「ふすまや窓のような、緊張感や調和を生んでいる」
と那須さん。
 「ふつうの具象画だと、部屋に飾っていると飽きてしまうかもしれないと思う。飽きないような作品づくりを心がけている」
というような意味のことを話しておられた。

 画面を見ると、灰色などのむらがある重厚なたたずまいを漂わせている。
 微妙な光のうつろいを映し出す障子紙のように感じられるが、タブローならではの、視線がはね返されるような、厚みの感覚もしっかりたたえている。つまり、障子紙のようにぺらぺらとはかないものではなく、もっと物質感のある物体なのだ。
 いわば、障子紙のような東洋的・刹那的な表面と、ドイツ的とでも形容すべき確固たる物質感とを両立させているといえるのではないだろうか。


 なお、これらの作品は、すべて額はない。
 ドイツではもっと大きなサイズを作ることが多いらしく、サムホールぐらいの大きさの展示作は、日本用として帰国前に制作したとのこと。


 那須さんの作品は壁掛けのタブローだけではない。
 床や台の上に置かれた、たいらな作品もある。
 台の上の、一辺30センチほどの長方形の作品は、中央部に水をたたえている。床置きの作品は黒いアクリル板。いずれも、天井の照明など周囲を反射している。

 以前ドイツの古い修道院で個展を開くことになったとき、空間の圧倒的な存在感に「これじゃ負けてしまう」と思い、まわりの映り込みも作品に取り入れることにしたそうだ。
 その後、屋外に設置して、空や木々を映しこんだこともある。

 現代美術の視点でみれば、水平に置いた作品のほうが壁掛けのタブローよりも面白いのではないかと思うのだが、那須さん本人としては、どちらが作りたいタイプだとか、そういう区分けはしていないという。
 絵画として自立していながら、周辺の環境や空間をも巧みに取り込むのが、那須さんの芸術だといえそうだ。


2016年11月16日(水)~28日(月)午前10時~午後7時、火曜休み
新さっぽろギャラリー(札幌市厚別区厚別中央2の5 デュオ2 5階)

□Atelier Hide Nasu http://hide-nasu.net/

□KANEKO ART TOKYO の関連ページ http://kanekoart.jp/exhibition/2015/150512/index.html








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