欧州金融危機は今やスペインやイタリアの国債市場を直撃し、また、Euroを通貨としている「Euro Zone」の失業率上昇、経済不振を招いている。一方、英国の最大の貿易相手はEUであり、欧州以外の地域から見れば英国は欧州の玄関口として見做されていてEUの現状は英国にとっても他人事ではない。米国は中国をはじめとしてアジアに重心を移しており、経済圏として米国と組むことはありえず、したがって、今後も欧州の一員としてEUから離れることもできない。
しかしながら、EUの体質は自己責任を基本理念とする英国とは大きく異なっていてEUが発する規制・法制などは英国人からみれば幼児的あるいはいたずらな過保護の思想に立つものであり、到底英国人の気風に合わない。さらに、フランス官僚制を模範とする欧州本部の巨大な官僚組織に対しては本能的ともいえる不信感を持っている。そのため、英国のEUに対する姿勢はいつも半身となっている。
フランスをはじめとしてEUで社会民主系の政権が成立する中、キャメロン首相率いる英国はこれからどのようにして対EU政策を策定してゆくのか。ユーロトンネルで鉄道が結ばれたとはいえ、わずか34Kmのドーバー海峡は歴史的に英国と欧州をへだてる役割を果たしてきた。英国の動きに注目したい。