英テレグラフ紙によれば英国では風力発電事業に雇用されている労働者一人当たり年間10万ポンド(1500万円)の補助金が支払われていることが明らかになり、議論をよんでいるという。この補助金は家庭および企業への特別付加料金になって家計および企業業績を圧迫している。すなわち、今年2月までの1年間の調査によれば、風力発電事業に雇用されている労働者数が12,000人に対して、風力電機業界に支払われている補助金の総額は12億ポンドとなっている。この税金ともいうべき付加料金は平均的な家庭で年間47ポンド(7000円)になる。このため、企業の中には、高い電気料金を避けるために国外に工場を移転している先すらある。
風力発電に批判的な人によれば、そもそも風力発電は労働力をさほど必要としないから雇用を創出しないし、英国の場合、発電機もほとんどが輸入されているので関連する製造業等での雇用もない。さらに、風力発電の性格として、風のない時や強すぎる時は発電できず、また、電気を蓄積しておくこともできない。そのため、風力発電には石油やガス、石炭などの従来型の発電装置によるバックアップが不可欠である。こういった批判に対して風力発電業界は、2020年までに75,000人の雇用を創出すると主張しているが、その実現性に疑問の声が上がっている。さらに、風力発電による設置地元の環境や景観の問題も夙に指摘されているところだ。
日本でも再生可能エネルギーの一つとしてもてはやされている風力発電だが、このような巨額のいわば補助金漬になっているようでは、この業界は所詮、クリーンエネルギーなどという時流に乗った非経済的な事業とみなされることになるだろう。今後も風力発電が生き延びてゆくためには、現在にはない新たな技術革新と徹底したコスト管理が必要だ。
そんな風任せの風力発電だが、そよ風に揺れているアヤメの写真を一つ。