遂に米国はシリア反政府勢力に対して武器の供与を決定した。アサド側がサリンと思われる化学兵器を使用し、越えてはいけない一線を越えた、というのが直接的な弁明だが、ただちにロシアから反発を受けている。国内的にも、あまりに遅すぎで小規模すぎる、と言う意見と、反対に、軍事介入の理由がない、という両面からの反応だ。オバマとしては、来週のG8でのホスト国英国からの度重なる要請や、他方でロシアからの反発を考えれば今しかこの決断をする機会がない、と考えたのだろう。オバマとしては内政に重点を置く大統領のイメージを追求しているだけに、依然として優柔不断さが残っている。
米国内の政治家や外交専門家の間でも、国際政治を見殺しにすることはただちに国際社会での米国の威信の低下につながると考える人と、独裁者がいたら米国が介入しなければならないとしたらとてももたない、という両方の意見がある。
オバマとしては、何としても外交交渉でシリア問題を解決したいという気持ちは依然持ち続けているのだろうが、ヒズボラやイラク、イランのシーアが参戦しもはやシリア単独の問題でなく中東全域にひろがりつつあること、頼みのトルコのエルドアンも苦境に立っているとなれば、遅すぎと言われようと、また、米国が新たな泥沼に足を踏み入れたと言われようと、現時点では今回の決定よりほかにはなかったのだろう。