こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

夏の思い出

2015年07月15日 21時19分47秒 | 文芸
朝早く、森に入りクヌギの大木を目指す。甘酸っぱい匂いに、蜂やカナブンがブンブン飛んでいる。慎重に近づいて行動だ。
 クヌギの音から1㍍ほど上にうろがある。樹液はたっぷりだ。もう胸が期待でドキドキ。むろを覗くと、いたいた。クワガタが木の皮に入り込んでいる。木の枝をうろに突っ込んでほじくり出す。一匹捕まえた。
「ハサミ(ノコギリクワガタ)や!」喜びの声を上げる私をしり目に兄は勢いよく木を蹴る。バサバサッと降るように落ちて来た。
「はめ(マムシ)がおるかも知れへんで」
 兄の注意に、笹の茂みに手を突っ込もうとした私は動きを止めた。慎重に足で笹をかき分ける。いた!ゴソゴソしている。「なんや、ボウズけ」兄の落胆の声。カブトムシのメスだった。オスに較べて値打ちは低い。やはり角を持った王様でないと……!
 夏休み。兄と一緒に毎朝カブトムシを捕まえに走り回ったのを懐かしく思い出す。
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父と息子の通園スナップ

2015年07月15日 19時59分24秒 | 文芸
父と息子の通園スナップ

 末の男の子が、今年から幼稚園に。そして、わが家恒例の徒歩通園が始まった。
 幼稚園まで片道40分ほどをテクテク歩く。
もちろん父親の小生か、母親の妻が手をつないでのお供となる。
「徒歩通園とは、いいことやらせてですね」
 なんて声を掛けられたりして面映ゆいが、ごく自然体なのだ。
 上の男の子の時は気負い過ぎたせいもあって、7か月しか続かなかった。今度は体任せ天候任せ、無理をせず、自分の運動がわりに歩いているから、少しは記録も伸びるだろう。
 ちょうどいい季節で、タンポポやレンゲが咲き誇るあぜ道などを歩く。コンクリートの道にはない風情を独り占めしながら歩くなんて最高の気分で、鼻歌まで出る。
 帰りはちゃんと道草を食う。タンポポ切りや草笛の吹きっこを、童心に帰って幼い息子と楽しむ。それこそ真剣勝負だ!
「しんどいやろが?」
「それはお父さんやろ」
「こいつ言うやないか」
 健脚ぶりを発揮の息子を見守る父親の胸の内は心地好い。遅々とこのきずなづくりは、まずまず順調である。
(神戸・1994・5・16掲載)
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野良猫よりも捨てた人間が悪い

2015年07月15日 18時52分33秒 | 文芸
野良猫よりも捨てた人間が悪い

 家の周りをウロウロしている黒猫の親子は、わが家の子どもたちには大人気である。
 確かに子猫のかわいい姿を見ると、わたしも胸がキュンとなる。
「いやいや、こんな状にほだされては、あかん!」
 と、生活がかかると、強くなる主婦に変身!黒猫一家を追い出すのに躍起となる。
 とにかく猫どもの悪さといったら、目も当てられない不始末の連続なのである。
 買い物から帰って、何気なく置いた買い物袋が犠牲になるなんてのは、しょっちゅう。油断も何もあったものじゃない。
 ふんや尿の臭いのをそこらにするマナーの悪さ。障子を破る。塗り立てのコンクリートの上を縦横断して、なんとツメの後をくっきりと……!ああ、もういやだ…。
 でも、よくよく考えてみれば、誰かに捨てられた黒猫は、自分の家族を守り育てるのに懸命なだけなのである。
 彼らに罪なんてない。あるのはあいじょうもなく捨てた人間の方だ。ああ、またまた迷いが!
 生来の優しさが、わたしの怒りを愛に変えてしまう。子どもにせがまれるまま、キャットフーズを買いに行ってしまったわたしって、一体なんなのよ?
(神戸・1993・10・29掲載)

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わが家の未来像確認

2015年07月15日 12時58分43秒 | 文芸
わが家の未来像確認

 実家のおじいちゃんは買い物をするたびに、おばあちゃんから、
「また、あんなもん買うて」
 と責められる。
 だから、最近はいつもわが家の住所で通信販売を利用、こっそり受け取りにやって来る。
 お祖母ちゃんの体躯は、おじいちゃんの体の1・5倍(?)はあるかも知れない。しかも5才姉さん女房で養子に入ったおじいちゃんだった。
 でも、おじいちゃんはお祖母ちゃんを心底愛している。二人が一緒にいる時の雰囲気が、いつもそう感じさせられる。
「あんなに木を使って、おじいちゃんかわいそう!」
 と小5の娘が同乗すると、わが妻はズバリ。確信を持ってきっぱりした口調で答えている。
「おばあちゃんとおじいちゃんは甘えあってるんよ。男の人はいくつになっても、子どもなんやから、おばあちゃんは上手に相手してはるんよ。よう覚えときや」
 そういったあと、チラッとこっちを見やる妻に、お祖母ちゃんの姿がダブった。
(神戸・1994・10・21掲載)

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長男の初参観日

2015年07月15日 12時06分41秒 | 文芸
長男の初参観日

 新1年生になった長男の初参観日。
 去年は長女が新1年生でハラハラドキドキを充分体験しているだけに、期待と不安は同じように持っても、今回は不思議に落ち着いたものでした。
「ハイ、これ答えられる人いるかな?」
 先生が尋ねると、みんな一斉に、「ハイ、ハイ!」と勢いよく手を挙げます。
(うちの息子は?)と目をやって、あ然!ちょっと下向きで、なんと左手(彼は右利きです)を半分ぐらいの高さまで挙げているだけ。
 1年前の長女の初参観そのままの姿なのです。姉と弟といえども、自信のないところまで似なくてもいいのに……と、ちょっとガッカリです。
 ところが、夫に報告すれば、なんと大喜び!
「さすが親子だ。オレもそうだったんだから安心しろよ。あいつらは、父親のオレに似て、きっと大器晩成なんだ」
(どこが?)と思わず口にしそうになったわたし。
 夢ばっかり追いかけて、貧乏生活から抜け出せない夫のどこが大器晩成?
(神戸・1991・5・3掲載)

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裸天国だー!

2015年07月15日 10時25分15秒 | 文芸
うだるような暑い日が続いている。こんな日はとにかく外に出ない。外にいたらすっとんで帰る。家に入ったら治外法権だ。ただ家人が留守かどうかだけは念入りに確かめる。いないと、もうこっちのものだ。パッパッパッ!と来ているものを思い切りよく脱ぎ捨てる。もちろんパンツも…!素っ裸になると、気分は最高だ。もちろん暑さだって吹っ飛ぶ気がする。そう、気がするだけである。我が家はクーラーがない。今どきの家ではないのだ。扇風機もガタガタ回るヤツ。家電量販店で2500円で買ったやつだ。もう3年目。さすがにくたびれたのか、首が落ちてあがらなくなっている。替え時だが、まだまだ涼しいから、迷っている。とにかく、田舎のど真ん中にある我が家。裏と表の窓や戸を開けっ放しにすると、自然の風が通って、かなり爽快なのだ。それに隣の家とは田んぼ一枚分ぐらい離れている。まずのぞかれる心配はいらない。だから、いつも暑くなると、我が家で素っ裸が定番なのだ。ちなみに、宅配や訪問者があると、バタバタとズボンだけつけて応対する。上半身裸はまあいいだろうとジコチュウ的に思っている。訪問者が帰ったら、またパッ!だ。裸で生活、こんなゼータクな環境にあることを幸福に思う。

 ああ、また暑さが一段と……家族の影なし!よーし!裸天国の始まりだ
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なんで?

2015年07月15日 07時31分40秒 | 文芸
AB型の妻はなぜみな強いのか

 B型の亭主とAB型の妻。血液型の話だが、解説本によると、夫は妻に頭が上がらず、言いたい放題言われても何も言い消せず、ひたすらじーっと屈従を約束されるとある。
 実証するかのように、うちの女房は確かに強い。全然強いのだ。結婚以来、
「ダメな人!」
「バカなんだから」
「無責任男!」
「いいかげん」
「おっちょこちょい!」
 と、毎日、責められっぱなし。
「お前…なあ…!」
 と言い返そうものなら、何倍もの強さで帰って来る。どうせ口では敵わないからと、最近は諦めの境地。
 さらに悲劇なのは、なんと揃って二人の子どもたちがAB型で、中でも4歳の娘は母親そっくり!
「だらしないわね」
「トイレに本を持ち込まないでね」
 と、いちいち細かく糾弾して来るから、たまったものじゃない。
 それをまた女房が後押しするから、まず反論は不可能。
 ああー!B型の子どもがひとりいてくれたらなあ!
(神戸・1988・4・29掲載)

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新しい約束をしましょう

2015年07月15日 02時32分22秒 | 文芸
新しい約束をしましょうね

 2年生になった娘、生き生きと学校に通っていたが、春の遠足当日に熱を出してダウン!
 前の火にテルテル坊主を作り、その日も朝早くから目を覚ましてウキウキだったのに…。でも仕方ありません。
 しかし、これで1年生の時からの目標「学校を休まない」も途切れてしまいました。勉強なんかできなくてもいいから元気に学校生活をと願うわたしや夫と娘のちいさな約束だったのです。
 だから娘も少しぐらい熱が出ても頑張って登校していたのに、今回は39度の熱、野外活動の遠足と悪条件が重なり、とても無理はできませんでした。
「今度は、どんな目標を持たせてやろうかな」
 氷枕を用意しながら、ポソッとつぶやいた夫。
「うーん?」
 とわたしもひと思案したものの、そうすぐに名案が浮かぶはずもありません。何しろ勉強以外の目標です。一体何がいいかな?
 でも、そんなに慌てなくてもいいでしょう。
 それに1年生をあんなに頑張って、学校好きになった娘。今度は自分で見つけてね。そしてお母さんとちいさな約束を、またしようか。
(神戸・1991・4・20掲載)

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父から子へ孫へ

2015年07月15日 01時22分45秒 | 文芸
父から子、孫へと連綿と伝わるモノ

 幼稚園から帰って来た長男が差し出す連絡帳を見た妻が、やけに意味ありげな笑いを送ってよこした。妻がそんな顔をするときはロクなことはない。先手を打って訊くと、妻はしたり顔で、
「親子だなと思って」
「バカ。当たり前だろ、俺たちは正真正銘の親子だ」
「うん!ちゃんと遺伝してるから、立派な親子だ」
「!?」
「ほら、笑っちゃうよ。こんなに座高があるんだもん」
「なん、それ?」
「身体検査の結果よ」
「なに!」
 グーの音も出ない。自覚している、嘆息と胴長は。それが親子そろってなんて…。本来親子ともにってのは悪くはないが、この場合はあまり嬉しくない。ムキになって弁明これ努めた。
「胴長短足ってのは、バランスがとり易くていいんだ」
「ダルマさんみたいに?」
「それなら、あんたの方がピッタリだ。ダルマさん、転んだって……」
 思わず言ってしまった後で、「アッ!」と口を押える。
 小太り体型の妻に、決して言ってはならない禁句なのだ。でも、妻は珍しく沈黙!剣呑剣呑、これはここで打ち止めだ。エスカレートさせても、お互い惨めになるだけだから。
(神戸・1990・5・18掲載)

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今は昔、一番風呂が……

2015年07月15日 00時04分05秒 | 文芸
いまは昔、一番風呂。何もかも子ども優先へ

 結婚当初から、ズーッと女房に立てられてきた来たわたし。もりろん、一番風呂、食事の配膳も一番最初と至れり尽くせりで、全く男冥利につきるといっていい待遇に、なんといい嫁さんを獲得したものだと感動もんあった。
 子どもが出来てからも、
「はい!まずお父さんからね」
 と必ずひと言が添えられて、なんともいい気分を味わい、ゆったりと構えていた。
 ところが、この春、子どもが新1年生になると、妙に雲行きがおかしくなってきた。
「この子、宿題しなきゃいけないから、先にお風呂つかわしてやってね」
「お父さんのグズグズペースに合わせていたら、子どもに悪い習慣がつくでしょう。先に食べさすわね!」
 もう風呂も食事も、時にはトイレなんかも中断させられたり、後回しにされる始末。
 そりゃ、愛するわが子のためと思えば別に何でもないが、あまりの環境急転には戸惑うばかり。
「お父さんみたいにならないように、勉強よ!」
 教育ママに急変した女房の声が家中に響き渡る。
(神戸・1990・6・22掲載)

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