兄の急死に「家族」再考
20年以上前の祖父の死を知らなかったわたしが、たった一人の兄の死に遭遇するとは…。
絶句するしかなかった。
朝、にこやかに挨拶した兄が、わずか2時間後に死んでしまった。健康そのものの働き盛りだった兄の死を前に、わたしはつくづく人の世のはかなさを知らされた思いだ。
「人間ってやっぱり毎日毎日を大切に生きないと…。特に家族との関係、大事にしなきゃ」
―妻がしみじみと漏らした言葉である。肉親の死を前にしたからこそ、そのことが切実に感じられたのであろう。
わたし自身も初めて毎日の生活を振り返り、いかに家族との生活が流れに任せたものになっているかを発見して、強く反省した。
「いつなくなるか分からない人の命。いちばん身近にいる家族をもっと愛し、もっと尽くさなきゃ。せっかく家族に生まれて来たんだからな。兄貴がそれを教えてくれている気がするんだ」
わたしの言葉に妻は力強く頷いてくれた。
幼いわが子らを見詰めながら、一緒に遊び、一緒に本を読み、一緒に勉強し、思う存分かかわってやりたいと思ったわたし。
家族と言うものをじっくり考えてみようという気にならざるを得ない兄の死だ。
(神戸・1990・9・11掲載)
20年以上前の祖父の死を知らなかったわたしが、たった一人の兄の死に遭遇するとは…。
絶句するしかなかった。
朝、にこやかに挨拶した兄が、わずか2時間後に死んでしまった。健康そのものの働き盛りだった兄の死を前に、わたしはつくづく人の世のはかなさを知らされた思いだ。
「人間ってやっぱり毎日毎日を大切に生きないと…。特に家族との関係、大事にしなきゃ」
―妻がしみじみと漏らした言葉である。肉親の死を前にしたからこそ、そのことが切実に感じられたのであろう。
わたし自身も初めて毎日の生活を振り返り、いかに家族との生活が流れに任せたものになっているかを発見して、強く反省した。
「いつなくなるか分からない人の命。いちばん身近にいる家族をもっと愛し、もっと尽くさなきゃ。せっかく家族に生まれて来たんだからな。兄貴がそれを教えてくれている気がするんだ」
わたしの言葉に妻は力強く頷いてくれた。
幼いわが子らを見詰めながら、一緒に遊び、一緒に本を読み、一緒に勉強し、思う存分かかわってやりたいと思ったわたし。
家族と言うものをじっくり考えてみようという気にならざるを得ない兄の死だ。
(神戸・1990・9・11掲載)