難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

人工内耳後のコミュニケーションの変化を観察する(1/2)

2008年01月02日 23時51分51秒 | エンパワメント
080101_1201~001.jpg2007年12月4日に人工内耳の装用を始めてからもう1ヶ月になるところだ。
それは自分にとってはまだ人とのコミュニケーションの改善の入り口にたったに過ぎない。

補聴器だけでは聞こえない様々な音が聞こえ始めている。今日もテレビを見ていて、イチローのバットをスイングする風切り音、ボールが当るキンという音が聞こえる。左耳の聴神経の感度は毎日毎日高まっている。年末に設定した弱の弱に設定したマップもうるさいくらいだ。

補聴器と併用するといろいろな音が聞こえる。言葉も少し違って聞こえる。人工内耳のチリチリ、キンキンするのがまだうるさく感じている。

仲間と居酒屋のうるさい場面で相手の声が浮かび上がって聞こえた時も驚いた。同じことが職場でもあった。年末の仕事納めの慰労会のうるさい中で話している言葉が聞こえたので、皆に話しかけていく自分に驚いていた。人工内耳は人の話し声が充満している中で言葉が聞こえる効果があるようだ。

補聴器だけではコミュニケーション・レベルが非常に低い毎日の職場の中で、人工内耳はまだその力を発揮していない。
職場の会議は要約筆記の派遣があるのでまあまあ対応は出来ているかも知れない。しかし年末年始の業務体制の準備では部下や他の部署の同僚とも細かい打ち合わせは相手と電話でやり取りが必要で、上司に頼ってしまった。聞こえるものなら出かけていくがまだ人工内耳の装用を始めたばかりでとは言いたくないが聞こえない。うるさい場面でスポットライトに浮かび上がるように言葉が聞こえたようになるのを待つしかない。

今日も正月出勤した職場で仕事の手の空いた時に話しを引っ張ってみようと業務提携先の社員が結婚しているのを聞いて驚いたという話をした、それは普段の話の中で聞いて知っていたという。昔その会社の前任者がやはり結婚していたのをその本人の送別会の時に知って驚いたと振って、派遣社員のことを聞いた。
その反応が良く聞き取れずにそこで話しが切れてしまった。暇なんだから聞き返せば良かったが、補聴器時代の臆してしまう癖から抜けきれない。無駄話している中にも入るようにしてみよう。昼休みが良いか。

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難聴者が、コミュニケーションの改善をしようと思ったら、何が必要か。自身のコミュニケーションの状態を客観視し、障害の内容を理解した上で、必要な対策をとることだ。
各種社会資源の利用、各種の機器の利用、補聴器や人工内耳の調整や更新、対人関係と自己の観察と自尊感情、モチベーションの高揚、情報収集と情報発信、思考と議論の訓練などやるべきことは多い。

難聴者の自立支援には、こうしたことをきちんと指導する人が必要だ。内容によって、それがピアメンターであったり、各分野の専門家だったりする。難聴者、中途失聴者のリハビリテーションプログラムは単に聴覚の代替えコミュニケーション手段の獲得だけではない、総合的な発達支援プログラムが求められている。今の我が国の障害者福祉には、これが抜け落ちている。


相手の言葉が分かるということは、自分が言葉で何を返していくのか、それが問われるようになることだ。
職場の真剣勝負の場に身を置いてこそコミュニケーション能力は研ぎ澄まされる。


ラビット 記
写真はニュータウンの高層ビルの直下にある地元の神社。おみくじの結ばれた枝には梅のつぼみが見えている。



聴覚障害者の医療を受ける権利の保障を

2008年01月02日 15時51分26秒 | 生活
080101_1140~001.jpg聴覚障害者の医療に関わる問題は多い。
一つは、医療を受ける際のコミュニケーションだ。
呼び出し、診療、検査の指示、薬の処方の説明など多岐にわたるコミュニケーションが問題になる。
問題というのは、聴覚障害者それぞれにあったコミュニケーションができるかどうかということだ。手話を使う人にとって、「糖尿病」を「甘い」、「小便」、「病気」と表しても意味がない。「トウニョウビョウ」と指文字であらわしてもその病気がどういう病気か分からないし、血糖値などを説明しても理解できないからだ。これ
まで地域の手話通訳者が個々に伝え方を工夫していたり、表現も地域でまちまちだったが、全日本ろうあ連盟が医療に関わる手話の研究に乗り出している。
年末に地元の聴覚障害者協会のクリスマス会で隣席のろう者は「トウニョウビョウ」の病気の重さを縦に開いた五本指の角度で表していた。
難聴者にとっても、医者がマスクをしたまま話したり、下を向いてカルテを書きながら(最近はモニターを見てキーボードを打ちながら)話されるとアウトだ。難解な医療用語が理解できないのは同じだ。全難聴は古くから耳マークの普及と「病院受診ガイドブック」の作成、普及を続けている。
医師側も、診察にかかる設問(問診)を指差しで示しながら行なう試みをしている。

080101_1136~001.jpgもう一つは、医療を受ける費用負担だ。
聴覚障害の等級と収入、勤務の有無、所得金額によって、負担する費用が異なるがどれだけ理解しているだろうか。自治体によっても障害者の医療費用の補助制度が異なる。これは福祉事務所で申請をし、自治体の指定医などで聴力検査を受けて「身体障害者」であることが必要の上、医療補助を申請する必要がある。
勤務先によっては、医療特約のある保険に加入している場合、これも請求を申請しなければ保険金が交付されないがこのことすら理解されていない場合がある。
生活保護を受けている聴覚障害者で高齢者となると様々な負担が増えるが自治体の連絡などをよく理解しなければ、過度の負担が強いられる場合がある。

もう一つは、日常的な健康や病気に関する情報獲得の問題だ。
テレビでも健康番組からバラエティのクイズ番組まで健康、病気に関する情報が少なくないが、聴覚障害者が理解できる形で提供されているわけではない。また地域や職場で健康が話題にならないことはないくらい日常的なものだが、非公式的な場で話されるこれらに接することのない聴覚障害者はどうしても情報が入らず、知識が不足している。
薬害肝炎問題も聴覚障害者にどこまで理解できているか分からない。


基調講演の高橋英孝先生は、日立製作所と一緒に手話、アニメ、字幕
付きの胃部エックス線検診システムを開発された方だが、東京都
中途失聴・難聴者協会が開発段階からモニターで協力していた。


ラビット 記
写真は初詣に行った地元の神社
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講演会のお知らせ 2008.1.2
テーマ「聴覚障害者が健聴者と同様に健康診断
を受けるための工夫」※手話通訳と要約筆記が付きます。

日時平成20年2月9日(土)
13:30~16:30(13時開場)
会場三鷹産業プラザ7階会議室
JR中央線三鷹駅南口徒歩約7分
厚生労働科学研究費・感覚器障害研究事業研究成果発表会(一般向け)

●基調講演
「医療機関における聴覚障害者向け翻訳システム」
野村病院予防医学センター所長高橋英孝

●招待講演
①3Dアニメーションによる手話動画について
日立製作所中央研究所佐川浩彦氏
②医療手話の確定手順について
筑波技術大学准教授大杉豊氏
③聴覚障害者外来の現状と問題点について
昭和大学病院薬剤部薬剤師早瀬久美氏

●機器展示(診療ナビゲータほか)

・入場無料(定員90名、申込み多数の場合は抽選となります)
・氏名、住所、ファクス番号、電子メールアドレス、年齢、聴覚障害の有無を記入の上、
下記連絡先までファクスまたは電子メールにてお申込みください。

主催:医療法人財団慈生会野村病院担当・上村(うえむら)
FAX 0422-47-1550 E-mail t_uemr@nomurahp.or.jp TEL 0422-47-4871
共催:財団法人長寿科学振興財団




元旦の生放送の字幕

2008年01月02日 06時00分30秒 | 生活
080101_1845~001.jpg080101_1846~001.jpg元旦のテレビは生放送が多い。

この年末・年始で生放送で字幕を付けていた番組は「紅白歌合戦」以外はまだ見ていない。
正月番組の生放送の番組はタレントなどのトークが多いので、声がダブったり、話しが早いので入力できないか、表示がずれてしまうからないのだ。昨年10月の視聴覚障害者向け放送番組の普及目標でも、生放送が対象になったがトーク番組は除外されている。

また、各局が同時に生放送をした場合、ステノキャプショナーの入力者数が限られてしまうことも、コスト面も一因だろう。

NHKではステノキャプショナーによる字幕制作は入力者と修正者が必要で時間あたりのコストがかかるという理由で、音声認識技術による字幕制作の方に傾いている。

スポーツ番組は、TBSの全日本実業団対抗駅伝のデータ放送はあったが字幕放送はなかった。

年末の紅白歌合戦は生放送で司会の鶴瓶と中居正宏のトークには字幕が付いていた。タイミングが遅れてしまうが間違った字幕はでていなかったように思う。
大善戦ではないか。
生放送であっても送出を10秒程度遅らせれば、字幕放送も臨場感が増すのだが。


ラビット 記