
それはどういうことかと聞かれて説明をしたら、後ろ向きに座っていた女性社員が補足してくれた。
難聴者には、後ろ向き聞いて返事するくらいならともかく、話に加わるなんて考えられない。
上司に口頭で報告したが、人工内耳を装用し補聴器を変えてから、話しかけられることも話しかけることも多くなったと思う。もちろんまだ聞こえていないが、み振りや表情でコミュニケーションをとるようにしている。
業務のコミュニケーションはメールや配布された社内資料くまなく目を通し、予備知識を十分に蓄えて、口頭の情報に少しでも耳を澄ませて対応するのが良いと考えてきた。
毎週一度の課内会議に要約筆記が付くことでその場のやりとりが分かるだけでなく、会議後のコミュニケーションにも役にたつ。
会話の背景となる知識などは一定の長い期間に身に付くので、入社した時から要約筆記は必要だ。
出来るだけ周囲に語りかけることにより、良いコミュニケーションの前提となる親近さが生まれる。あるいは、誠実さを理解されることにより、その後の文字やその他の手段によるコミュニケーションにより、生の情報が得られると思ってはいた。
しかし、難聴者はその語りかけることがどうしても出来ない。
この一ヶ月の経験は、同僚との会話や電話に最新の情報や生きた知識がたくさんあることがわかった。
少しでも聞こえることがこんなにコミュニケーションに差があるとは考えてみなかった。
人工内耳は職場のコミュニケーションの改善に力を発揮するだろう。
しかし、人工内耳だけに職場の問題解決を期待するわけにはいかない。
難聴者のエンパワメントの場とコミュニケーション保障の制度が必ず必要だ。
職場の上司や同僚の理解、業務内容などに合わせて、自身をアピールするための難聴の説明方法や権利意識、コミュニケーション方法を身につける場、難聴者自身を勇気付ける場が必要になる。
職場の理解、本人の努力、職務の内容如何によらず、コミュニケーション支援、雇用者との調整を含む就労支援を受けられる制度が必要だ。
ラビット 記