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「3.3兆円は激安」孫正義が語った買収の真相

2016年07月22日 06時08分46秒 | ビジネス
買収先はひそかな世界最大手
 通信大手のソフトバンクグループは18日、英国に本社を置く半導体設計会社のアーム社を買収したと発表した。
 今回の報道でアーム社を初めて知ったという人も多いが、アーム社の技術は世界的なヒット商品の内部に使われている。
 米アップルの「iPhone」や「iPad」、韓国サムスン電子の「ギャラクシー」にソニーの「エクスペリア」、任天堂の「ニンテンドー3DS」などはその一例だ。今やアーム社は、知名度こそ高くないが半導体の最大手のインテルとその勢力を二分する存在だ。

 インテルがパソコンの半導体に強いのに対し、アーム社の強さはスマートフォンだ。現在は世界のスマートフォンの9割の半導体が、アーム社のものだ。電機産業の成長軸がパソコンからスマートフォンに移行している現在、スマートフォンに強いアーム社がその勢力を大きく伸ばしている。

 ソフトバンクの孫正義社長は19日にテレビ東京系のワールドビジネスサテライトに出演し、意気込みを語った。


「半導体はインターネットにとって欠かせない存在であり、インターネットの根幹であると言える。
 この先、インターネットはますます伸びていく。30年後には、人の数と同じくらいロボットがいる世界になっているだろう。動物も、街の中も、ますますいろいろなところでインターネットにつながるようになっていく。たとえば牧場主が飼育している羊の首輪にもマイクロチップをつけておけば、牧場から逃げてもどこにいるかすぐにわかる。
 そのような未来が到来したとき、主役になるのはアームだ」

 孫氏がアーム社に目をつけたのは、10年ほど前だという。
「当時、スマートフォンの仕組みを研究していて、iPhoneもアンドロイドも、ベースがアームだったので、スマートフォンはアームが力を持つことになるだろうと思っていた」


3.3兆円が「安い」理由
 買収を決めたのは2週間前だという。アリババ、ガンホーなどの株を売却して2兆円を調達し、みずほ銀行から1兆円の融資を受ける。ただし、この融資もスーパーセルの株を売却して1兆円が得られるまでの「つなぎ」であるという。

 3.3兆円という買収金額は、日本企業による海外企業の買収としては過去最大規模となる。しかし、孫氏は「安い」を強調した。
「これだけシェアを持っている会社なので、多くの会社が買いたいと思っていたが、シナジーの近い会社が買うことはその国の独占禁止法に抵触することからできなかった。シナジーの異なるソフトバンクだから購入が可能だった。これだけの価値がある会社でありながら、そのような理由からこのようにものすごく安い金額で買うことができた。大バーゲンだ」

 孫氏の口から「シナジー」という言葉が出たように、多くの人はソフトバンクとアーム社のシナジーが同じとは思っていない。それまで6000円を超えていた株価も、買収が発表された直後から急降下し、5300円を割るところまで落ちている。
 買収のメリットが感じられない、というのが市場の評価だ。ソフトバンクの有利子負債の多さを懸念する声もあるが、孫氏は
「かつて携帯電話の会社を買ったときも、株価は大きく下落した。そのときも『一貫性が感じられない』と言われた。だがソフトバンクは常に『インターネット』に関する事業成長をしてきた。インターネットの将来を追い求めることに関しては一貫している。

 ソフトバンクの経営が苦しいのではないかという声もあるが、今回売却した以外にも、上場企業の株は多々所有している。何かあればそれらを売却するだけでも十分に対応可能であり、何も心配することはない」
 とその声を一蹴した。

「今後ソフトバンクが目指していくのは、インターネットのプラットフォーム構築。アームはその分野において、今後大化けすると期待している」

 番組出演者の質問に対し、こんな“本音”もこぼれた。
「アームを買収できるとわかったとき、涙が流れた。夢のようにうれしいことだ。今でも興奮している。夢とロマン、人生をかけてこの事業に取り組んでいきたい。これがやりたいから、社長はあと10年くらいは辞めないと思う」
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