比較「昔にくらべれば、鈴木君にくらべれば、まだまし」
●比較で心、元気に
物事を楽観的に考えるコツの一つが、まずい事が起こったときに、「――より今はまし」と考えることです。やってみます。
・まずい料理ができてしまった。でも、ないよりまし
・病気になった。でも、前の病気よりまし
・貧乏だが、あの人よりはまし
この「―-よりまし」(比較)が楽観につながるのは、おわかりですね。
今よりもネガティブな状況や劣った人を比較の基準に設定して、それに比べれば、今のほうがまだまし、と考えるわけです。
その基準には実にさまざまなものが採用されます。
もっともよく使われる基準は、過去ですね。昔とくらべれば、という比較です。時間比較と呼んでおきます。ここでは、皮肉なことに、過去に不幸せであるほうが、現在が幸福に思えるということなります。
比較によく使われる基準のもう一つが、周りとの比較ですね。いわば、横並び比較です。回りが不幸せの人ばかりなら、自分の不幸せもあまり気になりません。格差拡大傾向が顕著な今の日本では、このあたりなかなか難しいところがあります。
● 楽観的になるための比較のコツ
① 基準を多様化しておく
先ほどは、よく使う基準として、「過去」と「周り」の2つを取り上げました。それぞれ、その中身は多彩です。
「過去基準」も、個人的なものも歴史的、社会的なものもあります。時間的に遠い、近いもあります。
「周り基準」も、仲間も物も組織も国もあります。
今現在は、多かれ少なかれ過去と周りからの影響を受けているからです。
そうした基準を多様化しておくことで、「これがだめなら、これがある」式の比較ができます。そして、現在の、一見すると不幸に思える状況でも楽観的になれます。
ただし、あまりこうした比較ばかりしていると、事態の本質を見逃してしまうリスクがありますので、限定的に使う必要はあります。
②比較の基準として、人生観、あるいは使命感を使う
「過去基準」ならぬ「未来基準」を使うのです。
大きくは人生観、こうありたい自分と現在の自分とを比較する、あるいは、自分はこういうことで社会に役立ちたいとする自分と現在の自分とを比較するのです。
これなら、ちょっとやそっとの失敗や逆境でめげずに、どっしりと構えて、気持ちを前向きにできるはずです。真正な心の元気は、こういうところから出てくるのではないでしょうか。
③ 回りを元気にする比較もある
最後に、曽野綾子氏のびっくりするような1節を紹介して終わりにします。
「あなたの劣った特性は、周りを元気づけるものになっているのです。背の低さは、あなたの隣にいる背の高い人に優越感をもたらしています。」
そうでした。周りを元気にする比較の話をすっかり忘れていました。こうなると、ある種、宗教心に近いですね。