●基礎研究から応用研究へ
およそ20年の基礎研究の期間が突然終わることになったのは、当時、日本IBM(株)の大和研究所の人間工学のセクションでマニュアル(取扱説明書)評価の仕事をしていた加藤隆氏(現在、関西大学教授/総合情報学部長)から、認知心理学の立場から、マニュアルをもっとわかりやすくする方策がないかと相談されたのがきっかけだった。
どんなことをしたかというと、認知心理学の知見をベースにして、「ユーザはマニュアルをこんな風に読んでいる」「マニュアルを読んでいるときにこんなことを頭の中でしている」だから「こんなふうにマニュアルを書いてくれるとわかりやすくなるはず」という提言をしてみた。
その時にはじめて、基礎研究も捨てたものではないということに気が付いた。基礎研究をきっちりとやってきてよかったとあらためて思った。
その成果は、「ユーザ読み手の心をつか むマニュアルの書き方」(共立出版)「一目でわかる表現の心理技法(共立出版)として出版し、今でもまだ版を重ねている。