「研究者の表現力、我彼の違い」********
橋田浩一氏が認知科学会のニューズ・レター(一九八八年、第九号)に、「JAICA八七参加記」と題して、こんな話を載せている。締めくくりの事例として引用させていただく。
「Johan de Kleer が Computers & Thought Award という賞をもらって、記念講演をやりました。……非常に面白く聞ける話をしておりましたが、後によくよく考えてみると、実は学問的には得る所がなかった、……しかしこれは逆に、いかに彼の presentation が巧妙であったかを示すものであり、彼の業績に対する評価もひとつには(いや一重に)この能力の故である……これに対して日本人の発表はうまいとは言えません。……迫力に欠けると言うか、どうも見劣りがします。……語り口の巧妙さによる説得力は研究そのものの質の重要な部分を占めるわけで、この説得力がその研究に対する共鳴を呼び、そのさらなる進展につながるのです。
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