1.3 「絵に示す黒いキーを押してください---場所の示しかたかたがへた
●「絵に示す黒いキーを押してください」
マニュアルでは、しばしば、機械の特定の場所を指定して、何かをしてもらうことがある。もちろん、1.2でみたように、言葉だけで、場所を指定するのは非常に面倒なので、絵を使うことになる。もっとも、例*に示すような、言葉だけで場所を指定している「挑戦的な」試みをしているマニュアルも時々みかける。
例* キーボードの最上端にある左から4つ目の変換キーを押してください。
これでは、キーの場所探しに大変な苦労をさせられることになる。そこで絵を使うことになるが、その絵がまずいと、またまた、目の前にある機械のどの場所なの?ということになる。 たとえば、例のような絵を見せられて、さてその場所を実際の機械で探すとなると、どうであろうか。
例** 一部拡大図の絵 例*を一部のみの絵で示すと
●道案内をする
道案内をするとき、いきなり、目的の場所を教える人はいない。 まず、つくば市が日本のどのあたりあるかを示し、東京や水戸との位置関係を示し、荒川沖駅との関係を示し、----というように、全体的な関係に配慮しながら局所的な関係を示すのが普通である。
あるいは、相手がどの場所なら知っているかを確認して、そこまでの案内は省略し、そこから案内をするのが普通である。 そして、いずれも、地図という視覚に訴える表現を使う。
●絵による表現にも決まりがある
文章には文法があるように、絵にも、ビジュアル・リテラシーと呼ばれる、「文法」がある。
とはいっても、ゴッホの絵の「文法」の話ではない。ここでは、人に情報を伝えるための絵の「文法」の話である。 たとえば、例*や例**に関していうなら、「全体と部分の関係を同時に示す」という「文法」である。
マニュアルでは、絵による表現は必須なだけに、絵の「文法」を守ることが求められることになる。
ところが面倒なことに、文章の文法ほどには、絵の「文法」は明示的ではない。もっぱら描き手の直感にゆだねられるところが多い。かくして、誰もが守れるということにはならない。