慣れが引き起こす不注意
人は慣れることによって,注意資源を節約できます。節約し
た分を,新たなことを学ぶのに使うわけです。生き残りのため
の戦略(適応戦略)としては,間違っていません。
しかしながら,慣れてしまった仕事がどうでもよいというこ
とではありません。その土台の上に、新たなものが築かれるの
ですから。ただ,注意にとっては,それが,あたかも使い過ぎ
て興味を失ってしまったオモチャのごとくみえてしまうようで
す。つまり,慣れてしまったものには,注意を注がなくなりま
す。それほど多量の注意を注がなくとも,仕事はスムーズにで
きますから,注意不足による問題が起こることは,ほとんどあ
りません。
問題は,余った注意――備蓄用の注意――で
す。これがあまりたくさんになると,当面の仕事に「飽きてしまって」
仕事とは別のことをやりたい気持ちにさせるのです。
「飽きる」という体験は,注意管理という観点から言うなら
,備蓄用の注意が多くなることです。人は飽きることを嫌いま
す。車の運転でも,飽きてくると危ないので,ラジオを聞いた
りします。ラジオを聞くことに注意を使うことで,備蓄用の注
意を少し減らすわけです。