古ーい本の草稿が見つかりましたので、
1章ずつ連載していきます。
なお、完全原稿ではありません。
図表もないし、コラムなどは本文なしということもあります。
あくまで草稿ということでざっと読みしてください。
05/8/11海保
培風館 認知と学習の心理学——知の風景
はじめに
認知の心理学、認知の科学の研究者のはしくれとして40年働いてきた。
最初は、文字認識の研究から入り、漢字情報処理の研究を経て、実験室の外に出て、取扱説明書をわかりやすくする研究、インタフェースの研究、さらにヒューマンエラー研究を行ってきた。
基礎研究からはじめて実践研究へという研究者としての一つの典型的な歩みであった。
大げさな言い方になるが、これは、知の生成の現場である。
また、24歳で徳島大学の助手として働かせてもらって以来、大学での教育にも携わってきた。それは、まさに知の消費と流通の現場であった。
こうした個人的な知的体験の中味を紹介しながら、そこから発展して自由自在に、知をめぐって論じたり、考えてみたりすることが、本書の主旨である。
テキストではない。個人的な思いを込めた「認知と学習の心理学」にしてみたつもりである。
●誰に読んでもらうか
読者対象として想定したのは、大学2年生くらい、あるいは、認知科学や認知心理学ってどんなものとの興味を抱いている隣の専門家の方々である。
そうした読者が、本書を読んで、みずからの知と、社会における知についての関心を深めていただき、本シリーズの2部で構想されているより専門的でオーソドックスな認知心理学および学習心理学の学びへと進んでいただければ、言うことなしである。
2005年8月11日
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知の包括的な科学である認知科学が登場してから半世紀あまりが過ぎた。この間、知的マシーンとも称せられるコンピュータの驚異的な進化に引きづられて、人の知について研究してきた認知心理学も、研究上のドグマ(立場)を幾度か変えながらも、膨大な知を蓄積してきた。
本書では、認知科学と認知心理学とをベースに、今社会で起こっている知をめぐる風景の変貌について自在に論じてみたい。
とやや大げさな言い方になったが、自分の知的な体験をベースに縦横に「知」について論じてみたい。
このことによって、本シリーズでの本書の位置づけにふさわしい「認知と学習の心理学」への招待にもなるし、また、そこで蓄積されてきた知の活用の例示にもなるのではないかと思う。