3時30分に船内放送がはいった。船はまもなく小樽に到着する、天候は晴れ、気温は19℃、とのこと。
今回は目的地を三つに絞っていた。ひとつ目は美深にある函岳周辺の林道群と宗谷岬や利尻富士がみえる道道106号線。ふたつ目は新得町にあるペンケニコロベツ林道とシートカチ林道、鹿の湯やオソウシサラウンナイ林道に岩間温泉など。最後が屈斜路湖畔林道や虹別林道、川北温泉に花咲港でたべる花咲ガニである。泊まるところも決めていて、森林公園ひぶかアイランド、士幌高原ヌプカの里、別海ふれあいキャンプ場だ。旭川や札幌で飲みたいとも思っていた。
天候はよいが九州に台風13号がいて、今後悪天候も予想されるから、いちばん行きたい函岳にまずむかうことにした。
4時47分に小樽に上陸した。まわりの車は札樽道方向にゆくが、スマホのヤフーナビのおすすめルートは国道コースなので、国道5号線で銭函にゆき、国道337号線で札幌の北を迂回して、江別で国道275号線にのりかえて北上してゆく。先週までに北海道には三つの台風が上陸していて、各地で川の氾濫や橋の流失、がけ崩れや通行止めが発生している。新得町や芽室町の被害がつたえられていて、目的の林道もどれだけ走れるのかわからないが、通れないのならその場でプランを変更しようと考えていた。
国道を70キロで走行するが、北海道のドライバーのマナーがよくなっていることに驚く。以前なら信じられない速度で暴走する車が何台もいたのだが、皆無だった。
朝食をとりたいが飲食店がない。コンビニは3・4軒あったが牛丼屋の朝定食がたべたいのである。しかし店舗がなかった。それはここだけではなく、北海道全体で言えることだった。
トイレに行きたくなり月形皆楽公園にたちよった。
温泉とキャンプ場のある公園で持ち込みテントは無料。清掃協力金がひとり200円のようだ。低料金のせいか日曜日のためなのか、テントがぎっしりとならんでいた。
少し前から田園地帯になっていた。この辺りは稲作地帯で稲穂がみのっている。そんな中に北海道らしいダートの道があったので寄り道をした。
国道沿いだが貧しい家並みが散見される。この写真をとった後で国道にもどるのに農道をはしったが、民家からは経済格差がつたわってきた。
滝川にいたるとスマホは道央道に入るように誘導する。その前に食事がとりたいのだが、ローソンしかなくて、かき揚げそばとわかめごはんの朝食となった。
道央道を北上し、名寄美深道路とつないで9時20分に森林公園びふかアイランドのキャンプ場に到着した。早速チェック・インしようとするが、13時からでそれまではできないとある。そこでびふか温泉に車をとめて函岳にむかうことにした。
出発の準備をしているとGT550とCB550Fというマニアックすぎる2台がやってきた。しかもライダーは女性だ。ふたりは温泉に来たようだがまだ営業していないので去っていった。しかし2台とも40年はたっているはずだがピカピカだ。どれだけマニアなのかと思ってしまった。
ここで痛恨のミスをした。カメラを落として壊してしまったのだ。スマホで代用はできるが、気をつかわずに写真をたくさんとりたいから、コンパクト・カメラが必要なのだ。どこかで手に入れなければならなくなってしまった。
びふかアイランドから南下し、道道680号線に左折して函岳にむかうと、林道入口に看板がたっていた。歌登には通り抜けできません、函岳山頂までは通行できます、とある。美深歌登大規模林道を走破できないのは残念だ。ここから歌幟側までの34キロに、加須美峠から函岳までの往復の20キロをたした合計54キロの長距離林道が今日のご馳走なのだから。ここをぬけられないと、先にあるフーレップ林道17キロにもアクセスすることができない。しかし台風の直後だからしかたがない。函岳まではゆけるので、この往復の54キロをたのしむことにした。
林道の出だしは深ジャリではしりづらかった。3キロほどすすむとジャリは少なくなり走りやすくなる。上の画像はそのときのものだ。
10キロほどすすむと霧がでてきた。雨粒もおちてくる。これでは山頂からの展望はのぞめないがここまできたらゆくしかない。こんな天候だが、林道の入り口からここまでに2台の乗用車とすれちがっていた。いずれも函岳観光の車である。
函岳に分岐する加須美峠は真っ白だった。ただ雨は止んでくれて、深い霧の中を手探りですすんでゆく。
熊の気配はなく、キツネ一匹にあっただけで函岳の山頂駐車場に到着した。誰もいない、物音もない山頂だった。
駐車場の上にレーダーがたち、その奥に山頂の標柱がたっている。そこが展望ポイントなのであるいてゆく。熊がいてはいけないので、声をだして歩をすすめた。
山頂につくがやはり展望はきかない。視界は100メートルほどだろうか。
周囲はがくんと落ち込んでいて、下で高原状になっている。
森林限界をこえているので木はなく、ハイ松と熊笹が群生している。すごい光景だったが、写真ではそれがつたわらないだろうと感じられた。
駐車場にはヒュッテがたっている。以前来たときに、利用状況をたずねるノートがあったので見にゆくとまだあった。そこに名前、住所、滞在時間、目的はツーリングと記入した。
函岳から下ってゆくがこのときがいちばん霧が濃かった。視界は3メートルほどしかない。ゆっくりと慎重にすすんでゆく。しばらく山をおりると視界はひろがり30メートルほどになった。こうなると格段に走りやすくなり、ペースアップする。このときに250のオフロード・バイク2台とすれちがった。やはり函岳は人気のスポットである。
霧はうすれて走りやすくなり、加須美峠では晴れてくれた。こうなると飛ばせる。調子にのってギヤを3速、4速とあげてゆくと、カーブを曲りきれなくなりそうになった。
林道の入り口までもどってきた。ここでこれからの予定を考えることにする。他に走れる可能性のある林道は名寄のピヤシリ越林道だけだと思われるし、名寄にはカメラがあるかもしれないので、まずデジカメを手に入れにゆくことにした。コンパクト・カメラが名寄にないと、稚内か旭川でさがすことになる。それは面倒なので名寄で入手したいと思った。
名寄ではあちこちまわったが、ヤマダ電機でデジカメを入手することができた。時刻は14時前。昼時をすぎているがカメラをさがすのに夢中になって食事を後回しにしていた。どこかでたべたいが名寄にゆきたいところはない。国道沿いに利用したい店舗もなかった。どうしようかと考えていると、HPを相互リンクしていただいている『オートバイの壷』の管理人のFukishimanさんの北海道レポートのことを思い出した。たしか美深か名寄あたりの食堂を利用されていて、そこが気になったのでツーリング・マップル(以後TM)に書き込んでおいたはずだ。確認すると名寄駅前の三星食堂だ。なんたる偶然、いや幸運か。ここにゆくことにした。
名寄駅前の三星食堂は想像していたよりも大きくて新しい店舗だった。店内にはいりFukishimanさんと同じジンギスカン定食850円を注文する。14時をすぎているのに店内は盛況で、地元の人気店のようだった。
ジンギスカン定食はすぐにやってきた。タレに漬け込んだジンギスカンを野菜とともに炒めたトラディッショナルなスタイルの一品だ。
少し羊の香りがするが、私はそのくらいのほうが好みだ。肉も野菜もたっぷりとあり、ご飯が足りないほどだった。大満足した。Fukishimanさんに感謝である。三星食堂は14時半までの営業だったので時間的にもラッキーだった。
カメラは充電しなくとも付属の電池をいれると起動した。これは予想外のことで嬉しかった。
ピヤシリ越林道にむかう。ここはピヤシリ山の登山口になっている道だ。函岳のレーダーもそうだが、利用価値や利用者が多い林道は災害後でも早く復旧してもらえる。逆に存在価値の低いダートは後回しにされるのだろう。だからピヤシリ越林道は走行できるだろうと踏んだのだ。しかしやはりHPを相互リンクしていただいている『気楽にやりましょ』のじゃばさんの情報によれば、登山口の先にのびる奥幌内本流林道は通行止めとのことだ。
林道はピヤシリスキー場が入口になっている。スキー場のゲレンデの手前にはジャンプ台があって、ここに来ると写真をとらずにはいられない。ジャンプ台は滅多に見られるものではないからだ。
ピヤシリ越林道はゲレンデのすぐ下からはじまる。入ってすぐはここも深ジャリで走りづらい。やがてジャリは落ち着き森林の中をグネグネとカーブしてゆく道となる。
山を登ってゆくと林道は舗装してある路面がでてくる。
ダートと舗装がある林道である。途中に雄武にはぬけられないとの看板があった。やはりじゃばさんの情報のとおりである。
10キロの林道をはしりきりピヤシリ山への登山口についた。ここまで1台の車にもあわなかったが、ここにはライトバンが1台とまっていて男性がふたり乗っていた。そのうちのひとりの男性が、山頂までゆかれますか、と聞いてきた。ここで引き返すつもりで走ってきたので、いや、いきません、と答えたが、彼らは今巡視のために行ってきたと言う。管理の方たちだったが日曜なのに見回りとはたいへんだ。男性は、雄武方向は4キロ先でゲートで閉鎖されていると教えてくれた。
バイクの奥が雄武方向。右はピヤシリ山の山頂だ。
巡視の方たちは山を下っていった。ここにも看板がでている。この先4キロでゲートだ。
山頂につづく道。以前のTMには、山頂までの2キロのダートは走れると記されていたが、2016年版は徒歩で2キロと書いてある。
上ってきた方向を振り返る。左が山頂で奥がやってきた道だ。ここは登山者が車をとめるスペースになっていて、多いときには10台くらいの自動車がデポされていることがある。ゲートで封鎖されているところまで行ってみようかと考えたが、15時半をすぎているのでやめておくことにした。
上ってきた林道をくだってゆく。今来た道で様子がわかっているから飛ばす。途中で巡視をつづけていたライトバンをぬいてスキー場にもどってきた。左の芝生の山がゲレンデ。ここから林道ははじまる。奥には林道からもどってくる巡視のライトバンがうつっている。
バイクもブーツもかなり汚れた。
びふかアイランドにもどってゆく。牧草ロールがあったので写真をとった。
バイクでキャンプ場にチェックインし、車をまわしてきた。料金は300円と安い。車とバイクがあると管理人さんに申告しておいた。
となりのテントは老夫婦で長期滞在者のようだ。テントのまわりに雨水避けの溝がほってある。昔はよくこうしたが、もう何十年も見ていない手法だ。台風の雨がそれほどひどかったのだろうか。
場内のようす。トイレや炊事場からはなれると空いている。
ライダーもたくさんいた。
買ったばかりのカメラを車で充電する目的もあり、天塩川温泉に行くことにする。美深温泉にも入りたいが天塩川温泉も利用したいと思っていた。両方ともつかったことがあるが、どんな湯だったのか忘れてしまったので。
びふかアイランドから天塩川温泉まで15分ほどである。料金は400円。内風呂にジェット水流のでているマッサージ風呂、それに露天の岩風呂がある。湯はぬるめでじっくりとつかれる温泉だ。サウナはないが気に入った。
美深の町に夕食を買いにゆく。スーパーのフクハラには刺身も肉も総菜もろくなものがなかった。セイコマに転進するとこちらは総菜が充実している。豚串4本と山菜きんぴら炒めとサッポロ・クラシックをもとめてキャンプ場にもどった。車の中でささやかな夕食をはじめる。今日は早朝に小樽に上陸し、函岳にゆける日だと胸を高鳴らせて美深まで北上した。函岳にはゆけたが、走りたかった林道の半分も走行できなかった。カメラを壊すハプニングもあったが、台風の影響ののこる北海道の山の中で、今楽しめることはしたのではなかろうか。なんとなく納得感のある1日だった。
しかし北海道はいい。林道走行もたのしい。やめられないな。
車の走行距離308キロ。バイクの走行距離173,8キロ。