
只見線がトンネルからでて、またトンネルにはいる地点に休憩所があり、セローをとめた。

田子倉休憩所だっただろうか。ここに只見線の列車が走ってきてくれればよいのだが、本数がすくないから出会えない。結局このツーリングでは走っている只見線の列車には会えなかった。

田子倉湖畔までくだってきた。湖は近くからからながめても神秘的な魅力がある。ここでカワサキW650の方と会った。同い年くらいのライダーで、氏は只見町でパンクしてしまったそうだ。運よく自転車店の近くだったので、そこで手早く修理もしてもらえたとのこと。しかしタイヤはカワサキのショップで交換したばかりで、リムに異物がはさまっていたそうだ。ショップの考えられないミスで、W氏はいきどおっていた。

湖畔からダムの上にゆくことができる。堰堤から只見町方向をみるが、雲が気になってしまう。雨にふられたくはないのだ。

JR只見駅にやってきた。

駅のホームには案山子がたくさんいる。

しかしここは風がなくてひどく暑い。空の色もわるくなってきたので、スーパーのブイチューンで買物をしてキャンプ場にゆくことにした。

14時すぎに奥会津ただみの森キャンプ場に到着した。バイクのソロ・キャンプは1000円である。おどろいたことにキャンパーは私のほかにバイクの2台だけだ。ファミリーもグループもいない。キャンプ・ブームはおわったと聞いていたが、ほんとうだったのだ。野営は異様なほど流行っていたから、ブームがさってくれてよかった。これで落ち着いてキャンプができるというものである。

いつもは西のDサイトに幕営するのだが、今回は管理棟の前のCサイトに場所をきめた。

テントを張ってしまえば雨がきても安心だ。テントの前には中央炊事塔があり、その奥が管理棟だ。ソロ・ライダーのふたりは、管理棟横のBサイトに距離をとってテントをたてている。キャンプの用意がおわったのは15時だった。まだ飲みだすのははやいし、他にすることもない。時間を無為にすごすのは得意ではないので、只見の町を見にゆくことにした。

空は不穏だがすぐに雨はこないようだ。只見の町にゆき、国道から1本はいった通りを探索する。寿司屋やスナック、居酒屋があった。国道沿いには本屋に洋服店、自動車修理工場に重機の整備会社、W650氏がお世話になったとおもわれる自転車店もある。広場に蒸気機関車が展示されていたので見にゆくと、案山子がカッパをきてたくさんたっていた。

しかし只見の町で見るものはなくて、30分ほどでキャンプ場にもどってきた。管理棟の下にあるシャワー室にゆく。

夕立が気になるので、温泉でのんびりする気にはなれなかった。シャワーは200円である。

シャワーで汗をながしたあとで、タコ刺しで飲みだす。

私のいるCサイトにはほかにだれもいない。空いていてとてもよい気分だ。キャンパーはいないが、バンガローにはファミリーや若者のグループがいる。テントよりもそのほうが快適だろう。

雨がぱらつくのでセローにはカッパをかけておいた。

気分よく飲んでいるとトナラーがやってきた。なんでこんなに空いているのにわざわざこっちに来るのだろう。しかもそこはイベント・スペースでサイトではない。よしんば今日はそこでもよいと言われたとしても、トナラーはないだろう。しかも通路にペグを打っている。わからずにやっているのかな。まぁ、夏休みの父子キャンプなのでギリギリゆるす。私も何度もやってよい思い出になっているから。

タコ刺しがおわったところで焼肉を開始する。

スーパーに厚切りの肉は売ってなくて、豚肉ロースの薄切りにした。それにモヤシにシメジだ。酒を焼酎の水割りにかえて肉をやく。

空がゴロゴロとなりだす。虫がいるので蚊取り線香を足下においた。

肉と野菜をジンギスカン鍋でやく。

味つけは焼肉のタレだ。

こんなものだが、やけにおいしくて酒がすすんだ。キャンプではなにをたべてもうまいという法則は、いまだいきている。

焼肉がおわったところで夕立がきた。土砂降りの雨なのでテントににげこむ。空がとどろき、雷のおちる音がひびく。雷雨をツマミにマットの上で焼酎をやる。テントの外が光ってから、音がとどくまでの秒数をはかって落雷との距離を計算する。雷鳴はいちばん近くて2キロほどはなれていた。こうなるとキャンプではテントにとじこめられてしまう。それもまたよしなのだが、狭いところにずっといるのは、心地よいとはおもえない人もおおいだろう。キャンプは不自由なもので、その非日常をたのしむものだ。たのしいばかりではないから、万人にうけるものではない。それでブームは去ったのだろう。