月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

185.屋台、だんじりの修理.新調の注文留意点(月刊「祭」2019.9月12号)

2019-09-13 04:21:13 | 屋台・だんじり・神輿-装飾の工芸、新調、改修、修復-

屋台・だんじりも使えば傷みます。その際に必要なのが、修理や新調。現在の社会状況などから、どのようにしていけばいいのかを考えてみました。

 
●職人の現状
 かつては、人物の彫刻が石になったりということもありました。しかし、現在では腕の良い業者が増えてきています。
 理由として考えられるのは、①1980年代後半から粕谷氏らの活躍によって、啓発された人たちが屋台・だんじり衣裳についてしらべ、買う側が彫刻、刺繍、金物を見る目が厳しくなったこと ②上の活動を通して屋台、だんじり職人を目指す人が増えことが考えられます。た
 あるいは、③そもそも職人たちの腕が劣化したわけでなく、注文がないからしなかっただけだった?かもしれません。
 20年前は新調したものを見て、「よくない」と感じることが度々ありましたが、昨今は随分と減りました。現場で頑張っていらっしゃる職人さんには、本当に頭が下がる思いです。
 しかし、今の職人さんたちは本当に忙しそうです。新調式典などには絶対に間に合わさなくてはいけません。納期前日まで徹夜で作業したということもよく聞きます。
 作品の中心部はよく彫れているけど、端の部分がほれてなかったり、螺鈿の粒が大きかったり、間に合わせるために仕方がなかったんだろうなと思われる作品も目にしました。
 このような職人さんたちの現状下で、どのように注文すればいいのかを考えて見ました。
 
 
注文で気をつけること
①全体のバランスを考えて作りたい屋台・だんじりをイメージする
パソコンなどで作図してどのようなものを作ってもらうか具体的にイメージしましょう、一つ一つの作品がよくても、一部が大きすぎたりすると、あまりよくは見えません。
 
②①の屋台を作るために、適任の職人を選ぶ
 腕のいい職人さんでも向き不向きがあります。あくまで芸術館所用の職人さんに頼む時などは、注意が必要ですし、おすすめはしません。
 金具でいえば立体感のあるものを作るのが得意なのか、平打ちを仕上げるのが得意かで見極めるといいでしょう。
 
③これからの時代は集中型?
 先述しましたが、職人さんは忙しいです。しかし、管理人もですが、大手屋台の井筒彫刻のように、すみからすみまで彫って欲しくなってしまいます。
 しかし、それをすると職人さんの仕事が激増し、結果納期に間に合わないということが起きると思われます。
 
↑三木市岩壺神社大手屋台の井筒彫刻
 そこで、注文側が、本来なら欄間(狭間)と欄干と井筒をしてもらうための価格を提示しつつ、彫刻は欄間(狭間)のみと決めるなどして、そこは徹底的にこだわってもらうという注文の仕方をするほうがいいのかもしれません。
 
●問題点
①価格の上昇
 上の3のような注文が常態化すると価格は全体的に上昇するかもしれません。そのような中でも注文する側は、情報を共有し、いい作品が作れる業者に仕事を頼めるようにしたいものです。
 
②補助金は適切に
文科省からの補助金がでることもあります。例えば修理の補助金は必ず「修理」することにしたほうがよさそうです。
 
 「修理」ではなく「新調」と見なされ、返金することになった例もあります。管理人はその新調したものと、元のものを画像で見比べたことがあります。管理人は修理の名を借りて同じ題材のものをド派手にして「修理」という名のもとに「新調」したものだと思っていました。
 ですが、見ると画像を見た限りでは、古いものの傷みがなくなった版でした。「修理」でないならば、「新調」というより「復元」でしたが、それでも返金する必要があったとのことです。
 
 また、最近では「有識者」の見解が必要なそうで、管理人も立ち会わせていただくという光栄にあずかったことがあります。といっても、「有識者」でも、播州や各地の屋台やだんじりの本体の研究は「プロの研究者」の間では、ほとんど行われていません。管理人が「有識者」として参加させていただいたのも、もともとは別の方が頼まれたけど、どうにもならないので頼まれてのことです。
 そのような時は本ブログまでご連絡くだされば、無料で時間の限り対応いたします(^_^)
 
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184.奇跡の楠(月刊「祭」2019.9月11号)

2019-09-13 04:13:34 | 屋台・だんじり・神輿-組織、祭全体、社会との関わり-

 昨年は台風で泉州地域にも大きな被害が出ました。そのような中でも奇跡はあったようです。

 
●泉穴師神社(アクセス)
 ここで主に話題にするのは、泉大津市の泉穴師神社です。主な沿革は例によってうぃきべで●あで見てください。
 入り口です。主な祭神は、天忍穗耳尊(あめのおしほみみのみこと)と栲幡千千姫命(たくはたちぢひめのみこと)の夫婦神です。天神が地に降りてきて始めの神で天皇家の直属の祖先ということになります。
 
 



↓拝殿から撮ると、鳥居が二つあります。一つの拝殿に二つの門の神社は阪南市の波太神社にもありました


本殿をとると、これも波太神社と同じように中心部をあけて、その両横に神座へと通じる階段がみえます。この本殿が二つに分かれている形式は泉州によくあるのでしょうか。
 
↓こちらは以前にも掲載した波太神社の本殿です。


 
 
●なぜ楠が、、植えられているのか。
この記事の題名にある通り、この神社では楠の大木が何本かあり市の天然記念物にもなっています。ところで、なぜ大木まで育てる木に楠が選ばれたのでしょうか。
 下の写真は拝殿の中心から撮った写真です。本堂の中心全部に古い灯籠が安置されています。

↑上の灯籠は楠正成が河泉地域で挙兵するときに奉納されたものと伝わっています。   
 本殿中央という最も重要な位置を自身の寄進灯籠が配置される楠正成の苗字の木を大切に育てる文化が醸成されたのか、楠があったから楠公伝説ができたのかは分かりません。しかし、今の楠の重用は楠公伝説と関連していることは言えるでしょう。
 
 
●奇跡の楠
 そのような楠はあるものは樹齢数百年を超えると言います。その楠の一本も台風で倒されてしまいました。地元の方々は、台風の恐ろしさを忘れないための戒めとして自然災害遺産として保存することを決めました。そしてよく見ると、、、








 木は命を繋ぎとめ、再び枝葉をつけていました。自然の恐ろしさと共に、祭と共に生きる方々のたくましさを思い起こさせる遺産になったようです。




 
 
●祭のつながり
SNSなどでは、青年団員たちが近所の家を回って手伝いを申し出ていて頼もしさを感じたこと、自分たちの町を守るための活動をする祭関係者の存在がわかる書き込みが度々ありました。
 また、かの阪神淡路大震災でも、だんじり祭で培われた結束力が、避難所などでの生活や復興への活動でも大きな力を発揮したと言っていました。
 ベタな結論になりますが、祭の結束力の強さをかんじます。
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