月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

207.獅子の四肢(月刊「祭」2019.10月7号)

2019-10-24 21:24:00 | 民俗・信仰・文化-伝承・信仰-
獅子舞
 獅子舞はまさしく獅子が舞う様子を人間が演ずる芸能です。獅子の顔は、もちろん面で表し、実は布には尾もついているのがほとんどです。自由自在に動く獅子の顔・面は時に舞手の手でもたれたり、時に被られたりします。このようにして、獅子の頭部や尾を表しますが、獅子の四肢、つまり前足、後ろ足はどのようにして表されるのでしょうか。
 姫路市英賀神社の英賀西の獅子舞で見ていきます。

●一般的? 2人で
 まずは、よく知られている2人で前後に並び一頭の獅子を表現する方法です。前の人が手で面を操ります。前の人の足が前足、後ろの人の足が後ろ足となります。面は前の人が手で持ち、口を開け閉めしたり、前後上下左右に獅子の頭を激しく動くしたりでき、アクロバティックな動きが可能になります。


●一人で
 下の画像を見ると舞台に2人いますが、後ろの人は獅子の補佐をしているだけで、獅子の体の一部ではありません。
 前の人は獅子の面を頭に被り、その足が後ろ足となり、両手は前足となります。後ろ足の二足歩行で右の前足で御幣を握っていることとなります。御祓の所作などゆったりとした動きや道具を用いた所作に適しています。




●二人(上下)
 下の画像のみ英賀西ではありません。同じく英賀神社の獅子ですが、高町の獅子です。背の高い獅子は下の人の肩に上の人が乗っているためです。下の人が大人、上の人が子供ということもあります。下の人の足が獅子の後ろ足となり、上の人の手が獅子の前足となります。面は上の人がかぶり、前足を表す両手に傘などを持って舞います。



●前足が移り変わる??
 下の二枚の写真は同じ演目の舞です。獅子が物を持っている様子ですが、上のAの写真では前の人の手が前足、後ろの人の足が後ろ足となっています。前足を表す両手で物を持ち、前の人の足は見えていますが、この時点では、前の人の足は「見えていない物」としてかんがえるといいでしょう。
A



 そして、Bの写真では物は前の人の両足で持たれ、前の人の両手は隠れました。この時には獅子の前足は、前の人の両手から両足にかわっています。

B



●見えるけど見えないもの
 獅子舞を見ると、はじめはお祓いなどの大人しいものからやがて、激しくなる序破急の構成になっていると思われるものがよくあります。能の影響とも言えるでしょう。
 そして、獅子も布の下の人の体や、上の画像Aのように見えている前の人の足は、見えないものとして扱われます。それは、歌舞伎の黒子、能楽や狂言の後見を見えないものとするところも似ているかもしれません。
 しかし、見えないものとしてたのしみながらも、実際は見えていて、それが、人間には難しいこと=曲芸(人の肩の上に人が乗るなど)をしているから、観客や神仏もたのしむことができるのでしょう。




 


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