月刊「祭御宅(祭オタク)」

一番後を行くマツオタ月刊誌

172.大阪で出世した海女(月刊「祭」2019.8月28号)

2019-08-30 15:57:54 | 民俗・信仰・文化-伝承・信仰-
●悲劇の名もなき海女
 三木や淡路島で好まれる海女の玉取り。
 この話の主人公は名もなき海女です。何度か触れましたが、かいつまんで話します。
くわしくは、こちらのサイトへ。

 藤原不比等は讃岐の国で、身分の低い海女と出会い恋に落ちます。龍に奪われた面向不背の玉を取り返すことができれば、海女のお腹の子を後継にするという約束を交わし、海女は龍宮に向かいます。
 玉を取られて怒った龍は海女を追いかけます。海女は自らの乳房を刃物で穴を開けそこに玉を隠し、不比等の元へ持ち帰って間も無く息絶えます。
 その子が藤原氏繁栄の礎となった藤原宇合です。

どの水引幕を見ても、華やかとは程遠い質素な衣装を着ています。
三木市大宮八幡宮明石町屋台の海女



香川県三豊市河内神社先代上河内太鼓台


↑管理人画

同様のデザインは大宮八幡宮の栄町屋台や、淡路島では提灯などの題材にもなっています。
 

●大阪天満宮お迎え人形の海女
 海女の玉取りの題材は、大阪天満宮の神輿を迎えるためのお迎え人形にも取り上げられていました。その様子が松川半山、暁鐘成「天満宮御神事 御迎船人形図会」弘化三年(1846)に描かれています。



編集発行 大阪大学21世紀懐徳会「天満宮御神事 御迎船人形図会」

 なんとも派手な衣装ですね。これが、「海女」です。とはいえ、この人形は海女が実は生きていたという別伝を表しているわけではありません。また、息子の宇合の供養によって極楽浄土へ行ってからの様子を表しているわけではありません。

そこで解説を見てみましょう。原文は斜体、読みづらいとおもわれるものには()内に読み仮名をふりました。?は管理人が読めなかったものです。また、太字は便宜上管理人がつけました。
 一番はじめに海士と書かれているのがみえますね。


妄説
面向不背の玉を取返し給ふといへる事を作て海士と題す。原来(もとより)跡形もなき妄説なればこの謡曲よりて海士乙女の木偶(にんぎょう)を作し者也。

妄説と言い捨てていますが(^_^: 、その謡曲より海士乙女の人形を作ったと書いています。

水中に。。
然るニ此人形故あって水中ニ落ちいり終(つゐ)に失せたり。故(?)ニ今は龍乙姫の像(かたち)を作て用ゆとぞ

ですが、海士乙女の人形は水にはまりついになくなってしまいました。そして、今は龍乙姫の像をつくったのだそうです。

海士と呼ばれる理由
海士乙女の人形を用ひしを年久しき故ニ世の人其所を海士の町と異名す。是ニよって人形ハ龍女ニして名を海士よべり

ずっと其の場所で飾られていた人形を海士とよんでいたから、龍女になっても海士とよんでいるそうです。

●管理人妄説
 ここからは管理人の「妄説」です。なぜ、水に失せた海士の人形を再造せずに龍女に作り変えられたのでしょうか。
 管理人はこう考えます。

海士の人形が水の中に落ちて帰ってこおへん。
 ↓
それって、海女は水中の龍宮に行ったんやって。
 ↓
ほな、次作る人形はお姫さんにせなあかんな。

というやり取りがあったのかも??



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