今回は、月刊「祭」史上最も短いタイトルにしました。
「白」という言葉は、祭においては非常に大きなキーワードになる!? はずです。
●訓読みの「しろ」
白を訓読みすると、「しろ」となります。「しろ」と訓読みする他の漢字を思いつく限りあげてみます。
「城、代、素」
他にもあるかもしれませんが、主だった3つ、白をいれると4つには、共通点があります。
それは、「何かが宿る」ための場所とか物ということです。
城は、殿様や王様がやどります。代は「依り代」と言うように神さまが宿るための人や物をさします。白と素は、純真で穢れのないやはり、神などのつくところの条件となります。
●漢字の「白」
漢字の白を考えるということで、まずは、中国の陰陽五行から考えていきます。陰陽五行で「白」があらわすのは、木火土金水の五元素のうち、「金気」となります。この「金」は、『五行正義』、『晋書』の『五行志』を見ると、「金気」は「従革」の性質を持つといいます。つまりは、金属は溶かすことで、武器にも器にもなるということです。また、金属は戦うときも、それ以外の用途で使うときもその能力を飛躍的にあげてくれる役割もあります。
スサノオ金星説と白
ところで、比較神話学者・大林太良氏の説に、日本の三貴神のアマテラス、ツクヨミ、スサノオをそれぞれ太陽、月、金星にあてはまるというものがあります。天照(アマテラス)、月読(ツクヨミ)は、分かるとして、なぜスサノオが金星になるのでしょうか。金星が地球から見える三番目に明るい天体ということの他に、大林氏が説の根拠としたものを乱暴にまとめると次の一連の動きになります。
1 スサノオが高天原にあがり、皮をはいだ馬をアマテラスおつきの機織り女(名前を忘れました)のところに投げ込むという悪戯に怒ったアマテラスが姿を隠して世界に夜が訪れた。 →スサノオが高「天」原に上り、太陽が隠れる=宵の明星の動き
2 天の岩戸が開きアマテラスがあらわれて、再び世に朝が訪れる。罰をうけたスサノオは高「天」原を追放される。
→夜明けの時に姿を隠す=暁の明星の動き
天の岩戸の変 隠れてしまったアマテラス(写真中央奥・ほとんど見えない)を、アメノウズメ(写真右)らが踊りで誘い出す。
加西市住吉神社 谷屋台の狭間彫刻
また、これは、私見ですが、スサノオの別名とも言われる武塔天王、牛頭天王の蘇民将来説話にも金星の性質が隠れていそうに思われます。
1 武塔天王(牛頭天王)とその八王子は、一夜の宿を富裕な巨旦将来に請うが断られる。その後、その兄?弟?の貧しい蘇民将来に請うと快くもてなしてもらう。
2 一年後、夜に武塔天王(牛頭天王)らは、再び蘇民を訪れ、蘇民に魔よけの茅の輪を渡す。そして、朝になると巨旦一族は死に絶え、蘇民は生きながらえ、その後繁栄する。 →宵に現れ、祟りと祝福の二面性を強める。
しかも、巨旦将来も一説によると金曜星とも考えられているそうです。ただ、自分で考えておきながら、牽強付会な感は拭えません^^; また、大林氏の説の根拠もこれだけでは、少し寂しいと感じてしまいます(あくまで私見です)。
牛頭天王像 八俣大蛇を退治するスサノオ。
京都府木津川市松尾神社所有 (三木市大宮八幡宮明石町屋台先代高覧掛)
(京都府立南山城郷土資料館にて撮影)
そこで、「白」という字からスサノオ金星説を考えてみます。実は、金星はかつては「太白」と呼ばれていました。天照が象徴するお日様は、「太陽」、月読のお月様は「太陰」となります。「太」は、究極のとかという意味で、アマテラス・お日様は「陽」の気の究極「太陽」、ツクヨミ・お月様は「陰」の気の究極「太陰」、そして、スサノオは場合によっては、陰にも陽にもなりその力を高める究極の「白」・「太白」となると言えそうです。だからこそ、スサノオの字に「素」盞鳴尊と「しろ」とも読める字が使われているのでしょう。
素盞鳴尊は、極めて強い祟りを為す神とそのような祟りを強い力で払ってくれる神という両面を持つのも、「太白」の性質ゆえなのかもしれません。
紅白、黒白
慶事は紅白、忌事は白黒という色使いも、紅という陽の気を高めるための白、黒という陰の気を高めるための白ということができるのかもしれません。
●編集後記
今回は文字が目立つ記事になりました。この記事は、学生のころから考えていた内容です。「天の岩戸」の場面の屋台やだんじりの彫刻か刺繍の写真を載せたかったのですが、載せたい時ほど、写真はとっていないものです++;
1/25追記:写真を何とか探し出しました。自分で撮った写真でもおぼえていないものです++;
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