天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

【映画】「フェアウェル」@24作目

2020年10月19日 | 映画感想
「フェアウェル」

第77回ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)受賞作。
このコロナ禍がなければもっと大々的に宣伝打って華々しく公開されたんだろうなーと思うとお気の毒過ぎてもうね(薄涙)

あらすじ
末期がんを患う祖母のため、祖国を離れて海外で暮らしていた親戚一同が、従兄弟の結婚式を理由に中国に戻ってくる。
ニューヨークで育ったビリー(オークワフィナ)は、祖母が残りの人生を悔いなく過ごせるように病状を本人に明かした方がいいと主張するが、両親を含めたほかの親族たちは、中国では助からない病気は本人に告げない伝統があると反対する。(Yahoo!Movieから丸パク)

タイトルの「フェアウェル(原題:The Farewell)」は「さようなら」的意味合いだそうです。
主人公のビリー一家はビリーが6歳の頃にアメリカに移住して25年近く経っていて既にアメリカ国籍。そして婆ちゃんのニックネームが「ナイナイ」ってのがなんか可愛い。
ナイナイには2人の息子が居てビリーのパパは次男。長男の方は中国に居るのかと思いきや長男一家は日本に移住しているという設定。
で、ナイナイは旦那さんに先立たれて独りぼっちになってしまったのだが、近所の謎のおっさんが何故かナイナイの家に住み着いて2人で共同生活をしているw
なんだこの謎設定。てかフツー赤の他人のしかもおっさんが家に勝手に住み着くって有り得るか?中国はこういうの結構あったりするん???
あ、ナイナイの妹もいるんだけど多分妹とは同居してなさそうな(映画冒頭ビリーと電話している時に『妹の家に行ってる』と話すくだりがあるので)

で、まあ妹がナイナイに付き添って病院に行って検査をするとステージ4の肺がんで余命が3ヶ月だと判明する訳です。
だけど中国のしきたりで治る見込みのない癌が判明した場合は本人に告知はしないのだそうだ。中国では「癌は病が人を殺すのではない。死の恐怖に殺されるのだ」という言葉があるそうで、基本的に本人に告知をする事はないのだそうだ。だから劇中でも妹が検査結果を聞いてナイナイには「何でもなかった」と告げている。
日本でも1900年代までは余命宣告付の癌が判明した場合は本人に告知はしなかった。余命宣告付告知が当たり前になったのはまだここ20年位の話ですよ。
実際自分の父親も肺がんで2001年1月に亡くなりましたが(癌発覚は2000年6月)、父親本人には癌である事は話したけど余命宣告が付いてる事までは言いませんでした。

アメリカで育ったビリーはこの「告知しない」という判断に激しく抵抗する訳です。
自分の身体の事なのにナイナイだけが真実を知らされないのは誠実ではない、もしも真実を知ったらきっと失望されると主張する訳です。
それに対して「治らない病気だと分かっているのに本人に知らせて一体何になる、本人が苦しむだけだ」と中国人メンタルの親族には反論されます。
「余命が3ヶ月しかないと分かれば皆にお別れの言葉を言いたいと思うかもしれない」と言うビリーに対しては「そんな言葉聞かされてもコッチも困る」と切り替えされる。
劇中でも言われるのですが、アメリカは徹底した個人主義。それに対して中国は全体主義、個ではなく社会単位・家族単位で考えるのだと言う。
本作ではアメリカと中国のモノの考え方の違いやしきたりの違い等が何度も対比で出てきます。その差が今のこの社会情勢でもあるのかと考えさせられますね。

で、中国「あるある」なしきたりや文化が本作沢山出てくるのがなかなか興味深い。
そもそも日本と中国は海を隔ててはいるもののお隣の国で、様々な文化は中国から伝来したモノが多い。宗教もそうだし文字(漢字)等も中国から伝わったモノだし。
それなのに例えば元は同じ仏教のハズなのにお葬式や法要やお墓参り等の行事のルールが中国とは随分違うなーとスクリーン観ながら興味津々でした。
「泣き女」を雇うという話は昔何かの本で読んだ事があって知っていましたが、今でもまだその風習残ってるんですね。そっちに驚いたワ
お墓の前で紙で作ったスマホや洋服等を燃やすというのも日本とは違う点ですよね。それにお供えのお花を「そのまま生けると誰かに盗まれるから」という理由で花びらだけむしってお供えするってのも凄いw
それから結婚式もやたら派手な割に皆結構ラフな格好で来てて凄い違和感だったし、やたら披露宴が長いのも日本とは随分違うなーと。

…と、映画はイトコの結婚式に出席する為という大義名分でナイナイに会いに来たビリー達親族の様子をただ淡々と見せていくだけなんですが、何だろうナイナイが常に凄くいい笑顔なんですよね。それ観てるとすごい癒やされるんですわ。
もしかしたらこの人は自分が末期の癌だと悟っているのではないかな?だけど自分だって旦那が病気になった時に本人に告知しなかったんだから自分もまた告知されなくて当然だし、みんな自分を心配して顔を見に来てくれたんだから精一杯明るく振る舞ってあげなくてはね!位の気持ちなのかな?とか色々深読みしてしまいましたが。
とにかくナイナイの柔らかい笑顔に癒やされます。

という訳でどういう着地するんだこの話は…と思ったら、最後の最後ですげーどんでん返しが来て笑ってしまった!
正に「病は気から」なんですね。ナイナイが毎朝太極拳みたいな事してて「こーやって息を吸って思いっきり吐き出すと身体の中の悪いモノが全部出るのよ」とビリーに語っていたけど、それがこんな伏線になってるとはいやはやなんとも…w
コメント
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