「ベルファスト」
北アイルランド・ベルファスト出身の俳優/監督等多岐に活動しているケネス・ブラナー氏の半自伝的ドラマ。自身で監督と脚本も書いています。
そして、先頃発表になった第94回アカデミー賞で脚本賞を受賞されました。おめでとうございます!
あらすじ
北アイルランド・ベルファストに暮らす9歳の少年バディ(ジュード・ヒル)は、仲の良い家族と友人たちに囲まれ、映画や音楽を楽しむ幸せな日々を過ごしていた。しかし1969年8月15日、プロテスタントの武装集団がカトリック住民を攻撃したことで、彼の穏やかな日常は一変。住民同士が顔なじみで一つの家族のようだったベルファストの街は、この暴動を境に分断されてしまう。住民の間の対立が激化し、暴力と隣り合わせの日々を送る中、バディの家族は故郷を離れるべきか否か苦悩する。(Yahoo!Movieから丸パク)
全編モノクロ…でもなく、映画冒頭と最後に映し出される現在のベルファストの俯瞰映像はカラーで、本作の舞台1969年のベルファストに切り替わるとモノクロになる。そして劇中ずーっとモノクロなんだけど唯一主人公のバディ少年が家族揃って観に行った映画館のスクリーン映像だけはカラーになっている。
コレに関しては監督さんがインタビューで【撮影監督のハリス・ザンバーラウコスに、「カラーは状況をきっちり見せて説明する上で効果的。だが、モノクロは、より感触を与える。見るべきものを取り除くことで、観客は、より登場人物に近づくことができる」と言われたから】と語っています。また、映画館のスクリーン映像をカラーにしたのは「モノクロ=現実→カラーは奇跡の象徴」なのだそうです。あの時のベルファストの閉塞的なリアルの中にあって、スクリーン内でいきいきと空を飛ぶ「チキ・チキ・バン・バン」はバディファミリーにとって正に「自由と平和」という奇跡の象徴だったという事でしょう。
さて、上記知ったかぶって色々引用したりして書いてますが、ぶっちゃけ自分この「北アイルランド紛争」について、ほぼなーんも知らん。バカですまん。
いやー当時ワールドニュースで「イギリス・ロンドンのハロッズ(百貨店)で爆破テロ事件発生」とか「サッチャー首相暗殺未遂事件」って物々しいタイトルのニュースで大騒ぎしてた記憶はあるんだけど、正直…何の事やら?って感じで自分の生活に関係ないニュースって耳が勝手にスルーしてたんすよね(滝汗)
まーでも北アイルランド紛争について何も知らなくても、少なくとも本作を観ていれば「カトリック×プロテスタントの宗派対立」なのだという事はアホでも分かります。
なんだまた小難しいネタかよ(日本人苦手分野ですよね宗教と人種差別ネタ)と思われそうですが、話のキモはそこじゃなくてそんな紛争の最中にあってもバディ少年のすくすくと真っ直ぐ生きていく姿、彼を取り巻く優しい家族の愛、淡い初恋、そして周辺住民との絆等々をノスタルジックに描いている部分だと思います。
古くは「ニューシネマ・パラダイス」、最近では「ジョジョ・ラビット」辺りと雰囲気被る感じですね。
この「北アイルランド紛争」を、基本的には9歳のバディ少年の視点から描いているので(コレはブラナー氏の当時の視点でもあるだろう)ビビりながら想像していたモノよりも随分のんびりした印象で、あの時代のあの場所に於いても人々は何とか今までの日常を取り戻して生きていこうという力強さと優しさを感じさせます。
主人公ファミリーはプロテスタントで、ご近所にカトリックのご家庭も勿論あってカトリックファミリーの家だけが襲撃されたりしているんですが、長年ご近所付き合いしているお宅がたまたまカトリックを信仰していただけなのにね…みたいな、何とも表現し辛い「のんびりした空気感」がありました。
劇中でバディがお爺ちゃんと「カトリックって後で懺悔さえすれば何しても(人殺しても)許されちゃうんだってさ!怖ぁ~!」みたいに語るシーンがあるんですが、実は自分も同じような事ずーっと思ってましたわ自分バディと同レベルかそーか(苦笑)
という訳で、本作が大成功だった大きな要因として…バディを演じた子役が天才的にハマっていたという事!何と言う無垢で愛らしい少年だった事か!!
そして出演している他の役者さんもベルファスト出身、アイルランド出身者だったり、音楽もベルファスト出身のヴァン・モリソンを起用。北アイルランドに徹底してます。
だが何と言っても特筆すべきはあの素晴らしい人生訓を垂れていた「爺ちゃん語録」ですわ!アレはブラナー氏の本当の爺ちゃんの言葉だったんだろうか…もしそうだとしたら、ブラナー氏は何と愛の溢れた家庭に育った人なのだろうかと思わざるを得ませんよ。爺ちゃん婆ちゃんのキャラクターが素敵過ぎた!
ブラナー氏は「コロナで外出禁止になって家に篭もっていて当時の事を思い出して…」と本作制作のきっかけを語っているようですが、奇しくも今現在のウクライナの惨状と本作を重ね合わせて観てしまう向きもあるようです。ロシアのウクライナ侵攻と本作の北アイルランド紛争では全く種類が違うんですが、ある勢力とその反勢力が暴力でもって対立する事で否が応でも巻き込まれて飲み込まれてしまう市井の人々、特に未だ何も世の中を分かっていない無垢な子供達がその戦禍に巻き込まれていく姿は時代を超えていつも私達に鋭い痛みと怒りと悲しみを降り注いで行きます。ウクライナの人々が少しでも早く日常を取り戻せますように。陳腐ですがこんな事しか今は言えなくて申し訳ない…
「アンビュランス」
マイケル・ベイ監督×ジェイク・ギレンホールのカーアクション。
タイトルの「アンビュランス」ってなんだろ?と思ったら…救急車の事英語でこー言うんですね。知らんかったわー1つお利口になったなぁー(ヲイ
あらすじ
妻の手術費を用意するため、元軍人のウィル(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世)が血のつながらない兄ダニー(ジェイク・ギレンホール)に相談すると、3,200万ドルを奪う銀行強盗を提案される。襲撃当日、犯行は当初のもくろみ通りにいかず、警察に追われる事態になってしまう。追い詰められた二人は逃走用に救急車をジャックするが、そこにはウィルに撃たれて瀕死(ひんし)の警察官と、救命士キャム(エイサ・ゴンサレス)が乗り合わせていた。(Yahoo!Movieから丸パク)
一昔前…二昔前だったらこの「白人×黒人のバディムービー系」ってさ、白人が真面目で正義感の強いイケメン役で、対する黒人はお調子者(又は破天荒系、はたまたならず者)という組み合わせが当たり前だったと思うんですよね。それがBLMだのLGBTQだのジェンダーフリーだの言う2020年代になると立場が逆転して、黒人がメイン主人公のいいもん役で白人はやっちまいな!系のチンピラ崩れみたいなキャラになる訳です。ま、ジェイク演じる「ダニー」は大学で犯罪心理学なんぞも学んだ「インテリヤクザ系」ではありますが^^;
なーんかさ、ハリウッド映画が次から次へと「BLMに配慮しましたー!」を全面に押し出して来ると段々「一周回ってコレは嫌味なのか?」とすら思えてくるわな(苦笑)
まあそんな事はさておき、
話は映画冒頭からかったるーい展開で銀行強盗騒ぎが起こって、いよいよ銃撃戦の後に救急車を強奪してからが話の本番。つーか話のメインはほぼこの「救急車追いかけっこ」
正直「え、いや有り得んだろ流石にw」みたいな展開の目白押しで笑うしかないんですが、コレが面白いからマイケル・ベイってスゴいんだよなぁー!
なんだろうな、全然説得力無いんだけど(ヲイ)絵ヅラの迫力とワクドキする緊迫感で全部無理矢理にねじ伏せていくって言うのか…コレもある意味「力業」ってヤツかw
ただただ逃げ回ってるだけの話なんだけど、その中に色んなイベントが盛り込まれていて、中でも大きいのが「瀕死の警察官の脾臓にぶち込まれた弾丸を取り除け」ミッション。救急車内には医師免許を持っていない救命士しか乗り合わせていないんだけど、実は彼女はかつて医学生で(だから元彼は現在医師)途中でドラッグにハマってドロップアウトしたという痛恨の過去を持っている…等と言うサイドストーリーも巧みに放り込んで来たりして、個々のキャラクターの色付けが上手いんだな。
途中でウィルの嫁から電話が掛かって来ると「家族を愛する心優しき夫」モード発動とかさ。それから逃走の手助けに頼ったソッチ系の大ボスのトコロで見せるウィルとダニーの阿吽の呼吸的バディ感出すアクションシーンなんぞも…一々演出がクサいんだけど見せ方上手いのよーw
そんなこんなでアクションシーンのド迫力も人情ドラマとしてもなかなかに満足度の高い作品なんじゃないかなーと思います。
まー流石に「心に残る名作」とはクチが裂けても言えませんが(ヲイ)、こういう作品こそ大きなスクリーン+音響のいい映画館で観るべき手合いだろうと思いますね!
北アイルランド・ベルファスト出身の俳優/監督等多岐に活動しているケネス・ブラナー氏の半自伝的ドラマ。自身で監督と脚本も書いています。
そして、先頃発表になった第94回アカデミー賞で脚本賞を受賞されました。おめでとうございます!
あらすじ
北アイルランド・ベルファストに暮らす9歳の少年バディ(ジュード・ヒル)は、仲の良い家族と友人たちに囲まれ、映画や音楽を楽しむ幸せな日々を過ごしていた。しかし1969年8月15日、プロテスタントの武装集団がカトリック住民を攻撃したことで、彼の穏やかな日常は一変。住民同士が顔なじみで一つの家族のようだったベルファストの街は、この暴動を境に分断されてしまう。住民の間の対立が激化し、暴力と隣り合わせの日々を送る中、バディの家族は故郷を離れるべきか否か苦悩する。(Yahoo!Movieから丸パク)
全編モノクロ…でもなく、映画冒頭と最後に映し出される現在のベルファストの俯瞰映像はカラーで、本作の舞台1969年のベルファストに切り替わるとモノクロになる。そして劇中ずーっとモノクロなんだけど唯一主人公のバディ少年が家族揃って観に行った映画館のスクリーン映像だけはカラーになっている。
コレに関しては監督さんがインタビューで【撮影監督のハリス・ザンバーラウコスに、「カラーは状況をきっちり見せて説明する上で効果的。だが、モノクロは、より感触を与える。見るべきものを取り除くことで、観客は、より登場人物に近づくことができる」と言われたから】と語っています。また、映画館のスクリーン映像をカラーにしたのは「モノクロ=現実→カラーは奇跡の象徴」なのだそうです。あの時のベルファストの閉塞的なリアルの中にあって、スクリーン内でいきいきと空を飛ぶ「チキ・チキ・バン・バン」はバディファミリーにとって正に「自由と平和」という奇跡の象徴だったという事でしょう。
さて、上記知ったかぶって色々引用したりして書いてますが、ぶっちゃけ自分この「北アイルランド紛争」について、ほぼなーんも知らん。バカですまん。
いやー当時ワールドニュースで「イギリス・ロンドンのハロッズ(百貨店)で爆破テロ事件発生」とか「サッチャー首相暗殺未遂事件」って物々しいタイトルのニュースで大騒ぎしてた記憶はあるんだけど、正直…何の事やら?って感じで自分の生活に関係ないニュースって耳が勝手にスルーしてたんすよね(滝汗)
まーでも北アイルランド紛争について何も知らなくても、少なくとも本作を観ていれば「カトリック×プロテスタントの宗派対立」なのだという事はアホでも分かります。
なんだまた小難しいネタかよ(日本人苦手分野ですよね宗教と人種差別ネタ)と思われそうですが、話のキモはそこじゃなくてそんな紛争の最中にあってもバディ少年のすくすくと真っ直ぐ生きていく姿、彼を取り巻く優しい家族の愛、淡い初恋、そして周辺住民との絆等々をノスタルジックに描いている部分だと思います。
古くは「ニューシネマ・パラダイス」、最近では「ジョジョ・ラビット」辺りと雰囲気被る感じですね。
この「北アイルランド紛争」を、基本的には9歳のバディ少年の視点から描いているので(コレはブラナー氏の当時の視点でもあるだろう)ビビりながら想像していたモノよりも随分のんびりした印象で、あの時代のあの場所に於いても人々は何とか今までの日常を取り戻して生きていこうという力強さと優しさを感じさせます。
主人公ファミリーはプロテスタントで、ご近所にカトリックのご家庭も勿論あってカトリックファミリーの家だけが襲撃されたりしているんですが、長年ご近所付き合いしているお宅がたまたまカトリックを信仰していただけなのにね…みたいな、何とも表現し辛い「のんびりした空気感」がありました。
劇中でバディがお爺ちゃんと「カトリックって後で懺悔さえすれば何しても(人殺しても)許されちゃうんだってさ!怖ぁ~!」みたいに語るシーンがあるんですが、実は自分も同じような事ずーっと思ってましたわ自分バディと同レベルかそーか(苦笑)
という訳で、本作が大成功だった大きな要因として…バディを演じた子役が天才的にハマっていたという事!何と言う無垢で愛らしい少年だった事か!!
そして出演している他の役者さんもベルファスト出身、アイルランド出身者だったり、音楽もベルファスト出身のヴァン・モリソンを起用。北アイルランドに徹底してます。
だが何と言っても特筆すべきはあの素晴らしい人生訓を垂れていた「爺ちゃん語録」ですわ!アレはブラナー氏の本当の爺ちゃんの言葉だったんだろうか…もしそうだとしたら、ブラナー氏は何と愛の溢れた家庭に育った人なのだろうかと思わざるを得ませんよ。爺ちゃん婆ちゃんのキャラクターが素敵過ぎた!
ブラナー氏は「コロナで外出禁止になって家に篭もっていて当時の事を思い出して…」と本作制作のきっかけを語っているようですが、奇しくも今現在のウクライナの惨状と本作を重ね合わせて観てしまう向きもあるようです。ロシアのウクライナ侵攻と本作の北アイルランド紛争では全く種類が違うんですが、ある勢力とその反勢力が暴力でもって対立する事で否が応でも巻き込まれて飲み込まれてしまう市井の人々、特に未だ何も世の中を分かっていない無垢な子供達がその戦禍に巻き込まれていく姿は時代を超えていつも私達に鋭い痛みと怒りと悲しみを降り注いで行きます。ウクライナの人々が少しでも早く日常を取り戻せますように。陳腐ですがこんな事しか今は言えなくて申し訳ない…
「アンビュランス」
マイケル・ベイ監督×ジェイク・ギレンホールのカーアクション。
タイトルの「アンビュランス」ってなんだろ?と思ったら…救急車の事英語でこー言うんですね。知らんかったわー1つお利口になったなぁー(ヲイ
あらすじ
妻の手術費を用意するため、元軍人のウィル(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世)が血のつながらない兄ダニー(ジェイク・ギレンホール)に相談すると、3,200万ドルを奪う銀行強盗を提案される。襲撃当日、犯行は当初のもくろみ通りにいかず、警察に追われる事態になってしまう。追い詰められた二人は逃走用に救急車をジャックするが、そこにはウィルに撃たれて瀕死(ひんし)の警察官と、救命士キャム(エイサ・ゴンサレス)が乗り合わせていた。(Yahoo!Movieから丸パク)
一昔前…二昔前だったらこの「白人×黒人のバディムービー系」ってさ、白人が真面目で正義感の強いイケメン役で、対する黒人はお調子者(又は破天荒系、はたまたならず者)という組み合わせが当たり前だったと思うんですよね。それがBLMだのLGBTQだのジェンダーフリーだの言う2020年代になると立場が逆転して、黒人がメイン主人公のいいもん役で白人はやっちまいな!系のチンピラ崩れみたいなキャラになる訳です。ま、ジェイク演じる「ダニー」は大学で犯罪心理学なんぞも学んだ「インテリヤクザ系」ではありますが^^;
なーんかさ、ハリウッド映画が次から次へと「BLMに配慮しましたー!」を全面に押し出して来ると段々「一周回ってコレは嫌味なのか?」とすら思えてくるわな(苦笑)
まあそんな事はさておき、
話は映画冒頭からかったるーい展開で銀行強盗騒ぎが起こって、いよいよ銃撃戦の後に救急車を強奪してからが話の本番。つーか話のメインはほぼこの「救急車追いかけっこ」
正直「え、いや有り得んだろ流石にw」みたいな展開の目白押しで笑うしかないんですが、コレが面白いからマイケル・ベイってスゴいんだよなぁー!
なんだろうな、全然説得力無いんだけど(ヲイ)絵ヅラの迫力とワクドキする緊迫感で全部無理矢理にねじ伏せていくって言うのか…コレもある意味「力業」ってヤツかw
ただただ逃げ回ってるだけの話なんだけど、その中に色んなイベントが盛り込まれていて、中でも大きいのが「瀕死の警察官の脾臓にぶち込まれた弾丸を取り除け」ミッション。救急車内には医師免許を持っていない救命士しか乗り合わせていないんだけど、実は彼女はかつて医学生で(だから元彼は現在医師)途中でドラッグにハマってドロップアウトしたという痛恨の過去を持っている…等と言うサイドストーリーも巧みに放り込んで来たりして、個々のキャラクターの色付けが上手いんだな。
途中でウィルの嫁から電話が掛かって来ると「家族を愛する心優しき夫」モード発動とかさ。それから逃走の手助けに頼ったソッチ系の大ボスのトコロで見せるウィルとダニーの阿吽の呼吸的バディ感出すアクションシーンなんぞも…一々演出がクサいんだけど見せ方上手いのよーw
そんなこんなでアクションシーンのド迫力も人情ドラマとしてもなかなかに満足度の高い作品なんじゃないかなーと思います。
まー流石に「心に残る名作」とはクチが裂けても言えませんが(ヲイ)、こういう作品こそ大きなスクリーン+音響のいい映画館で観るべき手合いだろうと思いますね!