極端にセリフが削られているので、あるいはセリフが錯綜しているので(つまりは現実に近い)、ストーリーはまことにわかりにくい。度重なるトンネルの描写の意味ぐらいは提示したほうがよかったのではないかと思う。
しかし演出のチカラは圧倒的だ。濃密な画面もあいまって、あっという間に時間が経っていく。説明の少なさのせいで、観客は描かれなかった部分でどんなことが行われたのかと考えこむことになる。
主演の國村隼が、まわりじゅうが素人なものだから、彼もアマチュアだと思われたというのが笑える。アマチュアといえば、河瀬直美監督が中学校の昇降口で見つけた少女が尾野真千子だった奇跡を思う。途中で監督も驚愕したのではないか、なんだこの娘はと。天才はこのようにして発掘された。