わたくしのゴールデンウィークとは、つまりは孟宗汁でございますわよ。
九州産が四月初めから登場し、妻のご機嫌をうかがいながら
「いいんじゃないのそろそろ」
とリクエスト。次第に値段が下がっていくのにしたがって頻度が高まる。というかこの季節はずーっと食べているのである。孟宗汁さえ出ていれば亭主は満足だし。
そしてついに、今朝うちの竹林で発見!今年も元気で四本ほど登場してくれております。
例年、二十本ぐらいいただけてる。つまりは、自宅で孟宗が穫れるかぎり、妻もわたしも機嫌がいいということである。他の人たちに進呈など、考えられないことなのです。誰にもやるもんか。
その82「警視庁文書捜査官」はこちら。
これまた初めて読む作家。本業は英文学研究で東大の名誉教授ですって。
ほのぼのとした装丁に騙されてはいけない。行われているのはかなり邪悪な事件。しかし、人間として冷静であたたかい(新左翼だったある登場人物への彼のスタンスがいい。警察とは体制の最右翼であるにもかかわらず)松谷警部の人柄と、実質的に名探偵を演ずる部下の白石巡査部長とのからみがいいので、気持ちよく読み終えることができる。確かに、英文学っぽいです。
これだけの連続殺人だと、日本の警察ならもっと殺伐とするはず(笑)。おそらく松谷警部のモデルはP.D.ジェイムズのダルグリッシュあたりでしょう。あ、ついにあのおばあちゃんも亡くなってたんだね。もう新作読めないのかあ。合掌。
これがシリーズ3作目とか。こうなったら日本のアダム・ダルグリッシュ(勝手に断定)の前作も読まなきゃ。舞台が都会でも田舎でもないあたりが絶妙です。
その84「64(ロクヨン) 前編」につづく。
第十五回「秀吉」はこちら。
先週は地震の日々だった。こういうとき日本人はNHKについチャンネルを合わせるものなのである。これはもうしょうがない。残念なことにそのNHKの速報が拙劣だったことがニュースになっていたようだけれども、報道の視聴率トップテンはすべてNHK。
ドラマがそこに引きずられたわけでもないでしょうが、前回の視聴率はめずらしく予想が当たって18.3%と好成績。裏のイッテQが19%かせいだ上での数字なのでこれは立派でしょう。
今回は、脚本家として会心の出来だったのではないだろうか。
淀君(竹内結子)、秀吉(小日向文世)、信繁(堺雅人)、きり(長澤まさみ)、秀次(新納慎也)がからんだラブコメに見せながら、この恋愛ゲームに負けたら死が待っているという状況を描き(恋愛が成就した瞬間に加藤清正に殺されるのだ)、それ以上に信繁がその状況を利用しようとするあたりまで突っ走る。
シュガーコーティングされたラブコメにどうしたって見える。しかし淀君の暴力的な無邪気さが、実は過去の壮絶な体験にもとづくことをうっすらと匂わせ、その解説を柄の大きい大蔵卿局(峯村リエ、身長は170cm超)に語らせるあたり、うまい。
秀吉(と三成)はタイトルどおり社会人らしく表裏ある行動をとり、真田は翻弄される。またしても芸能面を騒がせている吉田羊が本多忠勝の娘として登場し、真田をぶっつぶすと気炎を上げる。次のシーンでは、のちに彼女の夫となる信幸(大泉洋)がうろたえているあたりの仕掛けもいい。
この人が長生きしたら様相は変わっていただろう羽柴秀長の述懐が泣かせる。
「わしらは、今はこんな立派な着物を着ているが、もとは中村の百姓。(現状に)心が追いついていないのじゃ」
は、秀吉の孤独もうかがわせて深い。
秀長役の千葉哲也、大蔵卿局の峯村リエ、三谷ドラマレギュラーの近藤芳正、小林隆など、小劇場出身者がのびのびと活躍していてすばらしい。今回も18%キープと読みました!
第十七回「再会」につづく。
「××せんせいノ好キナあーてぃすとハ誰デスカ?」
その昔、ALTと飲んでいるときに質問された。
「プリンス、かな」
「ホォ」
「で、二番目はプリンス&ザ・レボリューションズ(笑)。三番目はプリンス&ザ・ニュー・パワー・ジェネレーションで四番目はジ・アーティスト・フォーマリー・ノウン・アズ・プリンスだ!」
みんな、プリンスの名義である。それくらい好きだった。もちろん毛嫌いする人が多いのもわかる。いかがわしさ全開のルックスだし、声もどちらかといえばノイジーに聴かせようとしているかのよう。メロディよりも、リズムパターンで曲を前へ前へと進めようとしていたので、日本人には向かないのかもしれない。
ただ、単純なフレーズを華麗なアレンジで何度も何度も聴かされているうちに、わたしはすっかりはまってしまいました。最高傑作は「サイン・オブ・ザ・タイムス」だと思う。特に二枚目の高揚はすごかった。前衛的に見えて、しかしポップのエリアにちゃんといる。むしろ自分でポップの領域を広げているようだった。
だいたい、彼の音楽は誰にも似ていない。プリンス、というジャンルが孤高にある感じ。あ、でも忌野清志郎は渋谷陽一の番組で近ごろ気になるアーティストはいるかと訊かれて
「いまどきの音楽は聴いてないからなあ……。あ、あいつはいいな。ジミヘンみたいなやつ」
とプリンスを激賞していたっけ。確かに、ジミ・ヘンドリックスに有り様が少し似ているかもしれない。
たくさんのアーティストとコラボもしたわけだけど(シーナ・イーストンともデュエットしている!)、印象としてはウェンディ&リサやシーラ・Eをひきつれて調子こいてる姿が似合っていた。
ライブ映像の迫力は圧倒的で、あの小さな身体でどんだけはじけるんだとあきれてました。セックスもすごそう。だから、インフルエンザなんかで死ぬはずはないし、クスリのイメージも似合わないので(ですよね?)、オーバードーズも考えにくい。だいたい、そこまでジミヘンに似なくてもいいじゃないか。
同世代の天才がまた消えた。妻よ、喪服の準備はいいか。通夜はいつなんだ。香典はいくら包めばいいんだ。あ、あいつの宗派ってなんだっけ!?くそ、くやしい。
息子から前売り券をもらい、時間休をとって映画館へ。父親として、社会人としてどうなの。ほんとうは上映がまもなく終わってしまう「マネー・ショート」にしようと思ってたけど、3Dと負担ゼロの誘惑に負けてしまいました。だめだマジでおれは。
にしても、もちろんこの作品は観ようと思っていたの。クリストファー・ノーランのバットマン三部作には打ちのめされたし、このシリーズの前作、破壊・破壊・破壊の「マン・オブ・スティール」には言いたいこともあったけれども満足はした。
ただねえ、おそらくアベンジャーズでマーベルが稼ぎまくっている現状を見て、ライバルであるDCコミックスが、こっちだってスターキャラはたくさんいるんだからタッグを組ませるぜというやり方はちょっとなあ。月末に公開の「キャプテン・アメリカ」の新作には“あいつ”まで出てくるというのだからDCのあせりもわかるけどね。
まあそれはいい。問題は、バットマンとスーパーマンを闘わせる理屈にあるわけで、これはもう作り手はものすごく苦労したのが透けて見える。タイマン勝負したら異星人が勝つに決まっているしね。そのあたりが、やはりちょっと苦しい。前半はなにが行われているのだかさっぱり。だからなんとワンダーウーマン(ガル・ガドット。すんげー魅力的)まで登場して絶対悪にみんなで挑むあたりからようやく興奮。
ベン・アフレックがバットマンを演ずることに反発もあったようだけれど(なんでだろう。本気でわからん)、「ザ・タウン」や「アルゴ」を経過した彼だからこそ出せる味があった。
ただね、「コードネームU.N.C.L.E」を経過してもヘンリー・カヴィルはまだ堅い。ロイス・レーン役のエイミー・アダムスが今回も盛大に脱いでくれているのに、どうも作品全体にユーモアが足りないのはそのせいか。これもまた、お調子者がそろったマーベルのアベンジャーズへの対抗心なんでしょうか。
最高に笑えたのが、ラストの「キャリーかお前は!」ってのだけなのはねえ。すみませんわかりにくい例えで。怒涛のアクションなので金を払う価値はあったんですけど。あ、今回おれは3D料金の300円しか払ってなかった。
2016年3月号「最終号」はこちら。さあ新任校での1号目だ。さすがにおとなしめに(笑)
この高飛車なタイトルの黄色い紙は、いちおう事務部報。基本的に毎月の給料袋にしのばせておきます。というのも、さすがに給料を受け取るときはみんな機嫌がいいに違いなく、その瞬間をのがさず事務方の意見を通してしまおうと姑息なことを考えているわけ。自分の給与明細をじっくり見てもらい、プロとして報酬に意識的になってもらおうと昔は思っていたというのに……。
人事異動があったので、前任校のネタが使い回せるとこれまた姑息なことを思っていたら、予想以上に元同僚が多かったのでそうもいかなくなってしまいました。ち。
ということでまずは事務連絡を。
◎職員クラブ費
明細の「所属親睦会費」というパートを見てください。この5000円は職員クラブの会費。来月からは3500円になります。もっとも、給食費6000円が加わりますから、来月からは計9500円差し引かせていただきます。
◎リフレッシュ補助券
そのかわり、と言ってはなんですが、教職員互助会の会員には例の補助券を入れておきました。今年も3500円。年度末に泣く泣く捨てた人もいたとは思いますけれど、去年から鶴岡まちなかキネマ、イオンシネマ三川などでも使用できますからお忘れなく。気をつけなければならないのは、どこかの事務職員のように窓口で
「これ、使えるんですよね」
といきおいこんで補助券を出したら
「お客様、確かに使用できますが、使えるのは5月1日からになっております」
と大恥をかくようなことはないように(泣)。
◎配当予算
教育委員会から、今年度の配当予算の説明がありました。詳細は後日お知らせしますが、×中関係で大きな部分は
・FFストーブ改修
・ガラスブロック改修
・数学科に理振該当
……となっています。
◎扶養関係
4月は扶養がらみで多くの動きがあります。子どもが就職したとかで扶養をはずれる場合は手続きをしなければなりませんし、これも互助会員だけで恐縮ですが、小学校・中学校・高校に入学したときは祝い金がでます(財政が苦しいはずなのになかなかなくならないのは、きっとこれがないと互助会を身近に感じてもらえないからではないかと邪推しています)。事務室までお知らせください。
画像は「ヘイトフル・エイト」The Hateful Eight(2015 ワインスタインカンパニー)
×中最初の事務だよりで成人映画を紹介するのも気がひけますが、大好きなクェンティン・タランティーノ作品なのだから仕方がない。ようやく休めるぜ、と夫婦で映画館へ……といえば聞こえはいいですが、わたしはこの血みどろの殺人劇を、妻はレズビアン映画「キャロル」を同じ時間帯で別々に見ていました。どんな夫婦だ。
2016年5月号「服務事故その1」につづく。
わたしは京都がわからない。文句なく最も著名な古都であり、プライドの高さも日本一。その強固な中華意識(しかも洛中でなければならないのだそうだ)については、井上章一の「京都ぎらい」(朝日新書)に詳しいそうなので、これはぜひとも読んでみよう。
で、祇園。
特殊なルールが支配し、客に“粋”を求める祇園では、他の地域では衰退がつづくお座敷遊びが、現在もなお隆盛を誇っている。わからない。
そのお座敷遊び。あれ、面白いんですか?
わたしにはどうしても不毛そのものに思えるのだ。踊り、三味線、鼓、花……わからないなあ。
芸事にうるさい溝口健二は、この川口松太郎原作の映画で、女性を“所有”しようとする男の身勝手さと、ひと皮むけばスマートな売春にすぎない(すみません偏見ですか)祇園の非情さをクールに描いている。
旦那を持たず、芸妓として自立している美代春(木暮実千代)のもとに、家出同然で舞妓志願の栄子(若尾文子)が転がり込んでくる。身体をこわし、商売もたちゆかない父親(進藤英太郎)は栄子の後ろ盾にすらなってくれない。まるでスポ根ドラマのように修行を積む栄子は、ついに祇園デビューを飾るが、そのデビューの意味を彼女はよく理解していなかった……。
若尾文子とは不思議な女優で、十代の性典などのアイドル映画で出てきたかと思えば、60年代にはキネマ旬報主演女優賞を、実に三度も受賞しているのだ。作品によって、何色にでも染まってみせる気概が感じられるし、だからこそ増村保造などのファナティックな要求をかます監督にとって、最高の素材だったのだと思う。
この映画でも、祇園の泥水(それを象徴しているのは浪花千栄子が強力に演ずるお茶屋の女将だ)に抵抗する強さは、彼女でなければ納得できないところ。無粋ながら、京都ぎらいにとっては、なかなか敵(京都)は手ごわいなと思わせる傑作でした。
くそ、転勤もあって忙しくて映画館に行けてないぞ。だんだんいらついてくる。さあ休みだ映画だ何を見よう。
これはもう、最初から決めてました。ミステリとタランティーノが好きな人間にとって「ヘイトフル・エイト」は絶対に見逃せない。なにしろ
・雪の山荘における密室殺人
・「ジャンゴ」につづいてマカロニ・ウェスタン調バリバリの新作
・サミュエル・L・ジャクソン、ティム・ロスなど、おなじみタランティーノ組がそろってる
……とくればよ。
70ミリの横長画面に「クエンティン・タランティーノ第8作 ヘイトフル・エイト」と例によって下品なまでに真っ赤な字体でタイトルが。ううう、わくわくする。これまでの7本を全部見ているのもどうかと思うけど。
まあ、密室なのは確かでも(山荘のドアが壊れているので出入りするたびに板で打ちつけるのがおかしい。これ以上ないくらいのLocked Room)、ミステリとしては反則技の連続。あれ?ポスターに名前が載ってる“あいつ”はいつ出てくるんだ?と思ったらそうきたか(「死霊のはらわた」を見た人は笑えるはずです)。
ゆるゆるのセリフの応酬が魅力なのは相変わらずだけれど、どうしてこの映画がR-18なのかなあ、と思ったとたんにドンパチ開始。反吐は飛び散り、血はほとばしり……観客の予想を確実に裏切るタイミングでアクションが開始されるので息もつけない。このあたりのセンスはさすが。
キーになるのは、主演のサミュエル・ジャクソンが持っているリンカーンからの手紙。この憎たらしい8人(「荒野の七人」マグニフィセント・セブンをひねったタイトル)のお話をどう始末するのかと思ったら、その情愛あふれる文面で泣かせ、それが朗読される部屋ではある人物が首を吊られているという皮肉が効いている。手紙の真贋の判断は観客次第。うまい。
成人映画なのに女性の裸はまったく出てこず、ほとんど唯一の女優であるジェニファー・ジェイソン・リー(ヴィック・モローの娘ですってよ)は最初から最後まで殴られ蹴られてまともな顔をしていない。
まあ、女性のセクシー方面は、同じ時間帯で妻がレズビアン映画「キャロル」(PG-12)を見ていたのでトントン。どんな夫婦だ。
第十四回「大坂」はこちら。
前回の視聴率は17.1%と停滞。BSは最高を更新しているらしいので立派な数字ではあるのだけれど。
九州のみなさんだいじょうぶですか。
生命の危機が去ったとしても、ケータイの充電すらできず、ガソリンや灯油の補給に苦労した震災の記憶は東北人としてまだ新しいので、ニュースを見るのすらきついです。がんばってください。
築城の名人だった加藤清正(新井浩文)が建てた熊本城があんなことになるとは、と絶句。おととい読んだ小説に、むかし熊本城は地震によってあの石垣が崩れたことがあると書いてあって、シンクロニシティにこれまた絶句。
さて今回のタイトルは「秀吉」。なるほど二文字ではあります。しかも、この回の性格を驚くほど正しく示している。
いますよね、こういう上役って。破天荒なアイデアマンで、業績をぐんぐん伸ばし、みんなから愛される。でも彼の目は少しも笑っていない……。直属の上司だったらたまらないと思う。片桐且元(小林隆)じゃなくても胃が痛くなろうというものだ。
自分を思いのほか厚く遇してくれていると思えば、陰では真田を窮地に追いやろうと(平気で)している。確かにこんな人物を信繁は見たことがなかったかもしれない。真田の人間たちは、まだしも生き残ることに必死で、結果的にはわかりやすい経験則に頼っているのだし。
初登場のキャスト多数。大谷吉継に片岡愛之助、千利休に桂文枝。まるでゴシップ欄のために用意されていたみたい。うれしかったのは北政所に三谷幸喜ドラマのレギュラーである鈴木京香が(愛人顔なのに)秀吉の本妻として登場したこと。
そして、秀吉のお母さんが「中学生日記」でおなじみの山田昌さんだったことだ!そうかあ、やっぱり名古屋のおっかさんといえばあの人だよなあ(笑)。あと何年かしたら、竹下景子がミャーミャー言ってくれるのかしら。
個人的には、北海道まる出しの大泉洋のさみしげな芝居が見れてそれだけで満足。こういう回こそ視聴率は伸び、今度こそ18%台と読みました。あ、それからわたしも自分の子におっぱい吸わせてみたことあります(T_T)
第十六回「表裏」につづく。